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不祥事繰り返す、みずほ銀行 合併「旧3行」の覇権争いが背景に?

   金融庁の業務改善命令によって暴力団員らへの融資が明るみとなった問題で、みずほ銀行の佐藤康博頭取自身も「報告を受けていた」という事実が明らかになった。

   銀行が組織ぐるみで隠ぺいしようとしたとさえ思えるお粗末さだ。

   過去、みずほ銀行は不祥事のたびに「旧3行」の覇権争いがその原因と指摘されてきたが、その体質は治っていなかったらしい。

「旧3行意識」強く、経営幹部は「見て見ぬふりしていた」

みずほ銀行の不祥事の背景には、いつも「旧3行」の覇権争いが…(画像は、みずほ銀行のホームページ)
みずほ銀行の不祥事の背景には、いつも「旧3行」の覇権争いが…(画像は、みずほ銀行のホームページ)

   2013年10月8日の記者会見で、暴力団員ら反社会的勢力に230件、2億円超を融資していたことを、西堀利元頭取(旧富士銀行出身)も現在の佐藤康博頭取(旧日本興業銀行出身)も知っていたことがわかったが、その融資を銀行で改めて審査するよう指示したのが西堀元頭取だったこともわかった。

   問題融資の情報を把握していながら、なぜ2年間も放置するようなことになったのか――。考えられるのが、自動車ローンの提携先であり、契約前の審査にあたったオリエントコーポレーションの存在だ。

   オリコは、みずほグループの一員ではあるが旧第一勧業銀行の出身者が社長に座る。そもそも、問題融資のきっかけはオリコにある。小口の提携ローンなので、銀行に当事者意識が欠如していたのは間違いなく、西堀元頭取ら、当時の経営陣は次回から契約を承諾しないようオリコに求めただけで、取引停止などの対応を取らずに先送りした。

   加えて、銀行内では「旧第一勧銀系が起こした問題なのだから、その関係者が解決しろ」といった、責任のなすり合いが起こったり、あるいは事態を把握した旧第一勧銀出身者が穏便に事態を収集しようと画策したりしたことも、旧3行の「覇権争い」が背後にあったと仮定すれば、容易に推察できる。

   そうこうしているうちに、西堀元頭取は2011年3月に引き起こした2度目の大規模なシステム障害で引責辞任。後任の頭取には塚本隆史氏(現会長、旧第一勧銀出身)が就いたが結果的に事態を先送りしていたようだ。

   経営統合したみずほ銀行は、不祥事が相次いだ。2002年4月、大規模なシステム障害が発生。08年7月には写真週刊誌が斎藤宏頭取(当時、みずほコーポレート銀行)の女性スキャンダルを報じた。また、11年3月には東日本大震災の義援金の振り込みが原因で、再び大規模システム障害を起こしてしまった。

   不祥事のたびに、旧3行の派閥争いが背景にあるといわれてきた。

   元銀行員で経営コンサルタントの大関暁夫氏は、今回の問題融資について、「経営幹部が臭いものにフタすらせず、見て見ぬふりをした」とみている。

組織とポジションを守るための「保身」?

   そのうえで、前出の大関暁夫氏は「経営幹部に、銀行の組織や出身銀行の立場を守るため、また自らのポジションを守るための『保身』が働いたのではないか」という。

   組織の中で声をあげれば、処理を任され、責任を負わされ、「面倒なことに巻き込まれる」といった意識が働く。役員というポジションゆえ、そんなリスクを率先して負いたくないのかもしれない。

   また、外資家金融機関での勤務経験のある国際経済アナリストの小田切尚登氏は、「問題の融資案件は、1件あたりは数百万円という小口のもの。元来、メガバンクは一流企業と取引する、エリート意識の高い行員ばかりです。小口の融資といって軽く見ていたところがあるのではないでしょうか」と指摘する。

   一般に融資案件は取引を停止するにしても、すぐに返済してもらえないなど対応が厄介だ。「このくらい(少額)なら、誰かが処理してくれる」「問題さえ起らなければ、いずれ取引(返済)が終わる」と思っていたフシもある。

   そもそも、2億円の小口融資を金融庁が検査することが稀だ。内部かどうかは不明だが、「通報者がいた」との見方は少なくなく、これも「旧3行」の内部抗争がもとになっているといった憶測も飛んでいる。