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KDDIに販売方法改善、野洲市が異例の要望 オプション「強制」は「本社からの指示」

   スマートフォン(スマホ)購入時にオプション契約を強制されると個人客から批判を浴びたKDDIだが、自治体からも販売方法の改善を要望された。

   米アップルの「アイフォーン(iPhone)5」を販売店で契約した際、店員から付属品やオプション契約をセットに提案され、実際には不要なタブレット型端末とその通信の契約も結ぶことになった事例があがっている。

スマホ購入のはずがタブレットまで契約

iPhone5購入時、不要なものまで契約していた
iPhone5購入時、不要なものまで契約していた

   KDDIに要望書を送付したのは、滋賀県野洲市だ。2013年10月24日付で、山仲善彰市長名で田中孝司社長宛に出されている。

   消費者安全法8条は、市町村が、消費者安全の確保に関して事業者に対する消費者からの苦情の相談に応じ、その処理のためのあっせんを行うよう定めている。野洲市には、同法2条5項3号「消費者事故等」に該当する可能性がある相談が寄せられ、処理にあたったという。

   いきさつはこうだ。30代女性が2013年8月にKDDIの販売店でiPhone5を購入した際、店員から提示された見積書にはスマホの本体価格に加えて、オプションである8085円のポータブル充電器と9765円のカードリーダーが含まれていた。電話機には別途充電器が同梱されているので事足りるのだが、その説明は省かれた。またカードリーダーは「旧端末からのデータ移動に必要」と言われたという。

   さらに「自宅のインターネット回線を使えば通信費無料」と勧誘されてタブレット型端末を勧められた。本体価格は3万9900円で、付属ケースやマイクロSDカード代も加算されていた。

   実は端末本体には通信機能が付いており、自宅のネット回線を使わず通信すれば料金が発生する。その説明は一切ないまま、本体の通信契約も結んだことになっていたという。さらに「外でネット接続する場合に」とモバイルデータ通信まで契約した。「使わなければ無料」との話だったが、2年後には基本料金が発生する内容となっていた。

   市の市民生活相談課は、相談者と販売店、KDDI滋賀支店を交えて「4者面談」を実施、事実関係を確認したうえで女性は、タブレット型端末やモバイルデータ通信は不要、ポータブル充電器も返品したいと求めた。KDDI側は、相談者が望まない物販、通信契約は取り消すと約束した。J-CASTニュースが11月6日、KDDIに電話取材したところ「該当のお客様には、既に対応を完了しています」と話した。

「会社からの指示」の事実はないとKDDI反論

   野洲市ではこの件で、「当初見積もりに、あらゆる付属品やオプション契約の内容と金額をセットにして提案する販売方法がとられている」「顧客の使用目的や、知識・経験を考慮することなく、一律的にタブレット等の関連商品を勧誘している」の2点を問題視した。さらに要望書にはこれらが「会社からの指示である」ことが、面談によって確認されたと明記された。

   野洲市市民生活相談課は取材に対し、「今回の相談内容に関連して販売方法について面談でKDDI側に問い合わせたところ、購入者への案内は会社からの指示で一律に出していますとのことでした」と説明した。オプション契約とのセットや、他商品との「抱き合わせ」とも見える販売方法は個々の販売店の判断ではなく、KDDI本体が認識したうえで実施していると受け止めている。

   だがKDDIに聞くと、「オプション契約にあたっては、お客様にお勧めするというもので加入を強制してはいません」と否定する。要望書の「会社からの指示」との文言にも「そういった事実はありません」と明言した。双方の言い分は食い違っている。

   要望書では「貴社の販売方法には、今後、多数の消費者との間にトラブルを生じさせるおそれがある」と強い調子で指摘している。田中社長宛に送付したのも、先述の「4者面談」の際に市側がKDDI滋賀支店に改善要望を伝え、後日KDDI本社担当者2人が報告書を持参して市役所を訪れたものの「報告書の回答では、今後も多数の消費者との間でトラブルを防止するには不十分」と断定したための言わば「最終措置」だ。消費者安全法に関連して、特定の企業に野洲市が要望書を送るのは、2009年に同法が施行されてから初めてだという。

   田中社長は10月28日の決算報告の際に、スマホコンテンツのオプション契約を強制的に加入させられるとの指摘について「店頭で改善を進めている。(購入時の)必須条件にするのは許されない」と話した。社長自ら言明したこの点を全国の販売店に徹底する必要がある。