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新薬や簡便な検査キット 結核対策で日本企業が活躍

   結核の新薬や簡便な検査キットなどで日本企業ががんばっていることが、2013年11月27日、東京で開かれた市民シンポジウムで明らかにされた。

   特定非営利活動法人日本リザルツが関係団体や企業に呼びかけた「麹町サミット・結核の研究開発と日本の貢献」と題するシンポジウムで、参加者は結核関連の研究成果の報告で盛り上がり、結核征圧運動の推進を誓いあった。

1時間で検査結果が分かる

   患者、市民団体、支援基金、行政も加わったパネルディスカッションで検査キット「LAMP(ランプ)法」を報告したのは、栄研化学の納富継宣・生物化学第二研究所長。たんを処理液に入れて加熱、余分なものを吸着して遺伝子溶液にする。これに検出試薬を加え、専用機器で摂氏67度40分加熱し、遺伝子を増幅させる。結核菌特有の遺伝子断片があると、緑の蛍光を発する。従来の遺伝子検査法が2.5時間以上かかるのに対し、前処理も含めて約1時間で判明し、感度も高い。

   日本では2011年に認可され、保険適用ずみ。従来の遺伝子検査法より簡便で、途上国でも調べられるのが利点だ。実際に支援基金や政府の支援で、アフリカ、アジアなど14か国で試験が行われている。

   独立行政法人・医薬基盤研究所の保富康宏・霊長類医科学センター長は鼻に噴霧する結核ワクチンを開発中であることを明らかにした。呼吸器粘膜に感染するヒトパラインフルエンザウイルスに結核ワクチン抗原を組み込んだもので、成人の肺結核を高率に防げる。実用化までに7、8年と見込まれている。日本政府と日本の大手製薬5社、ゲイツ財団が設立したグローバルヘルス技術振興基金が支援している。

   これまでの結核薬が効きにくい多剤耐性結核の薬として、大塚製薬が開発した「デラマニド」も話題に出たため、会場から吉武益広・専務執行役員が「欧州での販売承認がちかい」ことを報告した。従来薬との2か月間の併用で1.5 倍の結核菌消失が確認された臨床試験から、欧州の医薬品委員会が11月、販売承認の推奨を決め、来年早期に承認が見込まれる、という。同社は厚生労働省には今年3月に製造承認を申請している。

   シンポジウムでは、ストップ結核パートナーシップ推進議員連盟の会長でもある武見敬三・参議院議員が日本の医療・医薬技術を世界に広げる「国際保健外交」の重要性を強調した。

(医療ジャーナリスト・田辺功)