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軽自動車税増税に業界落胆 再来年から1.5倍に引き上げ

   2014年度の税制改正大綱の焦点の一つだった軽自動車税が、2015年4月以降に購入する新車に限り、現行の1.5倍にあたる年1万800円に引き上げられることになった。自民、公明両党が2013年12月12日に決めた。

   販売減少を懸念し、増税に反対していた自動車業界からは、落胆の声が上がった。

国内販売は200万台を突破

「軽自動車ユーザー、二輪車ユーザーの負担が著しく増えることとなり、誠に残念」(全国軽自動車協会連合会の松村一会長)
「対象が限定されたとはいえ、軽自動車の増税については、残念と言わざるを得ない」(日本自動車工業会の豊田章男会長)

   自動車の業界団体は大綱決定後、相次いで不満タラタラのコメントを発表した。

   軽自動車はエコカーと並び、国内の自動車販売を支えている。今年の軽自動車販売台数は年間200万台を突破し、7年ぶりに過去最高を更新することが確実視されており、自動車全体に占めるシェアは約4割を占める。11月の社名別販売台数はホンダ「N BOX」3位▽ダイハツ「タント」4位▽同「ムーヴ」7位▽同「ミラ」8位▽スズキ「スペーシア」9位▽同「ワゴンR」10位――と、ベスト10のうち6車種を軽が占めた。

   小回りがきく、運転しやすい、燃費が良い――など軽の優位性はいくつもあるが、なんといっても税金が安く済むというが大きい。排気量660cc以下の軽自動車税は現行で年7200円で、1000cc以下の普通小型車の年2万9500円の4分の1に過ぎない。メーカーが、燃費や社内空間の快適さを競った結果、性能は小型車とほとんど変わらないレベルにまで到達している。

   特に、公共交通機関が発達していない地方では「生活の足」として使われており、「一家に1台」どころか「一人1台」というケースも珍しくない。軽を「狙い撃ち」にした増税議論に対し、「弱いものいじめだ」(スズキの鈴木修会長兼社長)と強く反発してきたのも、軽が地方の生活必需品となっているからだ。

取得税の引き下げ、廃止などの軽減策も

   軽と普通車との税金の格差については、業界も認識している。軽の方が国際水準に近いため、軽を引き上げるのではなく、普通車を引き下げることによって格差を是正してほしいというのが業界の主張だった。

   とはいえ、国・地方の財政事情厳しき折、負担軽減が難しいことは「業界でも常識」(関係者)。あれもこれも税負担を減らすというわけにはいかなかったのも確かだ。軽自動車税増税を「弱者いじめ」と強烈に反対してきたスズキの鈴木修会長兼社長も「ルールに従ってやることだから決まった以上は納得するしかない」と冷静に語っている。

   実際、購入時にかかる自動車取得税は、来年4月に消費税が8%に挙げられるのと同時に引き下げられ、消費税10%時には廃止されるし、軽自動車税の増税後も、中古車の税率は現行のまま変わらない。軽トラックの引き上げ幅は、中小企業や農家などに配慮し、自家用車よりも低く抑えられた。議論開始の当初は、軽自動車税を現行の2倍の1万4400円とする、あるいは引き上げ時期を来年4月とする案もあったのに比べれば、上げ幅は圧縮され、実施も1年先になり、ユーザーの負担はかなり軽減された。増税されても普通車よりはまだまだ割安だ。

   もちろん、販売への影響は避けられず、「実際にどのくらい落ち込むかは想像もつかない」(関係者)。それでも、これまでも環境規制など幾多の困難を乗り越えてきた自動車業界のこと。表向きの反発、落胆も一時のことで、増税後を見据えた次世代車の開発や販売戦略に、どんな手を打ってくるか、注目だ。