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【J-CASTが見た2013年】第8回
若者はなぜ冷蔵庫に入りたがったのか 「バカッター」「バイトテロ」で大騒ぎ

   「バカッター」なる言葉が2013年のネット流行語大賞(未来検索ブラジル主催)で4位にランクインした。「ツイッター上でバカな行為を晒すこと」で、2ちゃんねる界隈ではツイッター自体を指す「バカ発見器」とともに、この2~3年よく使われてきた言葉だ。

   ツイッターではもともとカンニングや飲酒運転を自慢する大学生の狼藉が目立ち、J-CASTでもその炎上事件簿を電子書籍「嗚呼!おバカ大学生」にとりまとめた。13年夏に新しく登場したのが、バイト先での悪ふざけをネットで公開する「バイトテロ」だ。ツイッターの利用者の低年齢化とともに、「バカッター騒ぎ」は大学生に留まらない若い男女にまで広がった。

1日1件以上のペースで話題に

複数の企業が「バカッター」への反撃を検討(写真はブロンコビリーの発表文)
複数の企業が「バカッター」への反撃を検討(写真はブロンコビリーの発表文)

   今夏、ツイッターでヘマをやらかし「炎上」した人は計30人以上、最盛期には毎日のように話題になった。中には被害届が出て警察沙汰にまで発展したケースもある。 この1年間でJ-CASTニュースが取り上げた「バカッター」記事のアクセスランキングトップ3は以下の通りだ。

1位 バカッターで「人生詰んでしまった」若者たち 続々損害賠償請求に踏み切る企業が…(2013年8月30日)
2位 中学生男女8組が制服で集合キス 卒業記念?衝撃的なツイッター写真が出回る(2013年3月15日)
3位 この夏、30人近くがおバカ写真で炎上 国民総「バカッター」化で日本はどうなる(2013年8月26日)

   見出しからも分かるように、複数の事件をまとめた記事が1位と3位に。あまりにも連日かつ数が多すぎて、フォローが追いつかないほどだった。まずはこの2つの記事を中心に、この夏ツイッターでいったい何が起きていたのか振り返ってみよう。

店側も損害賠償など強硬手段で対抗

   食品を扱う店のアルバイト従業員が、店舗で常軌を逸した「悪ふざけ」をしてSNSで発信する――いわゆる「バイトテロ」が突然大流行した。店側に損害を負わせることから「テロ」と名付けられた。不衛生という悪評が立った店は、営業の継続が難しくなり、実際にバイトテロを受けた東京・多摩市のそば屋が閉店に追い込まれた。

   発端となったのは、高知市内のローソンで従業員が冷凍ケースの中で寝そべる写真をフェイスブックに投稿したこと。同店はフランチャイズ契約解除という厳しい対応を受けたが、これを皮切りに「模倣犯」が続々と現れた。

   本人たちにとっては内輪受けを狙った「悪ふざけ」のつもりでも代償は高く。店側は解雇だけに留まらず、被害届や損害賠償請求も視野に入れた対応を打ち出した。

   ピザーラでは店のキッチンの冷蔵庫やシンクに入った写真を投稿した全員を解雇。従業員がキッチンの大型冷蔵庫に体を突っ込んだ写真で「炎上」したブロンコビリーは翌日に該当店舗の休業、さらに1週間とたたないうちに閉店を決め、損害賠償請求の検討に入った。群馬県のスーパーでは、アイスケースに寝そべった男性について所轄の警察に被害届を提出の上、損害が確定次第、賠償請求を検討していると報道された。この男性は通っていた専門学校も退学になってしまった。

   バカッターは従業員だけではなかった。客側による「客テロ」も問題になった。

   お好み焼き店でソースとマヨネーズの容器を鼻に突っ込んだり、寿司の上にタバコを乗せて撮影したり、しょう油さしの注ぎ口からしょう油を吸ったりと不潔極まりない写真が次々アップされ、利用者を不安がらせた。

踊るアホウに見るアホウ

   飲食店にまつわるもの以外にも「バカッター」はある。とりわけネットを震撼させたのは、2位にランクインした「中学生男女8組が制服で集合キス」写真だ。本人たちにとっては中学校の卒業記念に撮ったかわいらしい青春の1ページだったのだろうが、未成年に似つかわしくなく破廉恥だとリツイートされまくった。

   やっかまれるだけで済めばよかったが、芋づる式に同中学校の生徒による喫煙・飲酒や屋外での性器露出といった犯罪行為まで「発掘」される羽目に。校長先生も「卒業生であっても、呼び出して指導しないといけないと思っています」と困り顔だ。

   この他にも、若い男がパトカーの車上に乗る、男子高校生が精米機に入る、高校生が線路内に立ち入るなど、未成年者を中心とした「ご乱行」が多数報告された。

   相次ぐバカ行為。それに対し、ときに義憤に駆られ、あるいは面白半分に拡散するネットユーザー。ITジャーナリスト井上トシユキ氏の見立てによれば、こうした「バカッター」騒ぎが起こるのにはタイミングという要素が大きく絡む。

「夏休みということでアルバイトを始めたような若者が、新しくできた仲間に『自分はこんなに面白いんだぜ』とアピールしようとして投稿する、というケースも多いのでは。写真を広める、あるいは過去の写真を発掘し『告発』するようなユーザーにしても結局は同類で、まさに『踊るアホウに見るアホウ』の世界です」

   以前から、成人式や卒業式という限定された会場で大暴れする若者はいた。それがいまや「ツイッター」という便利な公開ツールを獲得して、一瞬のうちに自分たちの「おバカ行為」を世間に広く知らせ、注目を集めることができるようになった。「ツイッター劇場」というわけだ。自然、「炎上」のケースが多くなり、一度火が付けば大火になりやすい。若者たちが長期の休みに入る年末年始、さらには成人式や卒業式も控え、バカッター問題が再燃しないといいが――。