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原発再稼動はいつなのか 最短なら14年春ごろといわれるが…

   2014年、エネルギー政策の最大の焦点は原発の再稼動問題だ。

   国内に50基ある原発(福島第1原発5、6号機を含む)のすべてが運転を停止する中、2013年末までに東京電力など7電力会社が9原発16基の再稼動を原子力規制委員会に申請した。原発事故を機に厳しくなった新規制基準に基づく初めての審査で、果たしてこれらの原発がいつ再稼動するのか否か、注目される。

年末27日に東北電力が女川原発2号機を申請

東京電力柏崎刈羽原発でも再稼働の準備を進めている
東京電力柏崎刈羽原発でも再稼働の準備を進めている

   2013年年末にも、あわただしい動きがあり、12月25日に中国電力が島根原発2号機、27日には東北電力が女川原発2号機の再稼働に向けた安全審査を申請した。この2基は東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型(BWR)で、女川原発は東日本大震災で被災した原発としては初めての申請となるだけに、注目される。

   原子力規制委員会の田中俊一委員長は12月25日の記者会見で「(2013年を振り返り)一番大きかったのは7月に新規制基準を施行し、適合性審査が始まったことではないか。全面的に公開するという我が国でも非常に貴重な試みをして、規制サイドと事業者が議論する会合を連日連夜に近いほど重ねている」と胸を張った。

   しかし、再稼動をめぐる審査のスケジュールについては「半年前に(申請が)出たところもはっはり言えない状況で、まだ何とも言えない」と述べるにとどまり、慎重姿勢をにじませた。

   原発の再稼動をめぐり、震災直後の政府や電力会社は「電力不足」を理由にしたが、2012年夏・冬に続き、猛暑だった2013年夏も火力発電所をフル稼働させ、なんとか乗り切った。火力の事故がなければ、この先も乗り切れる見通しだ。このため、原発再稼働は、電力会社の経営を改善させるのが目的になった格好だ。

四国電力伊方3号機の場合、ヒアリングは135回以上に

   2013年末に駆け込み的に申請した中国電力、東北電力の2基以外で再稼動の申請があったのは、北海道電力の泊原発1、2、3号機▽関西電力の大飯原発3、4号機、高浜原発3、4号機▽四国電力の伊方原発3号機▽九州電力の川内原発1、2号機、玄海原発3、4号機▽東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機だ。これらの7原発14基は既に原子力規制委員会の審査が進んでおり、とりわけ2013年7月8日に申請した北電、関電、四電、九電の原発は、東電と異なる加圧水型(PWR)で太平洋に面していないことなどから、再稼動を目指す先行グループとみられている。

   原子力規制委員会によると、2013年7月8日以降、同12月17日までに週3回程度、計57回の審査会合が開かれ、現地調査や電力会社のヒアリングも実施された。最も審査が進むとみられる四国電力伊方原発3号機の場合、ヒアリングは135回以上に及んだ。しかし、原子力規制委員会が求める重大事故対策や保安規定、敷地内の破砕帯、地震などをめぐっては、電力会社の資料提出が遅れており、審査の行方は見通せていない。原子力規制委員会は「資料提出済みの審査項目であっても、審査の過程で追加の資料等の提出を求める場合がある」としており、今後の行方は予断を許さない。

原発の長期停止で電気料金は上がる

   このまま審査が順調に進んだ場合、最短で2014年春ごろの再稼動を電力業界は期待している。しかし、審査が先行する7原発14基がすべて再稼動したとしても、発電能力(設備容量)は約1400万キロワット。全電源の発電電力量に占める割合は8%程度に過ぎず、原発事故前の3~4割には及ばない。それでも赤字決算が続く電力会社は、収支改善を求め、原発の早期再稼動を目指している。

   原発の長期停止で電気料金が上がったのは事実だ。東京電力の場合、企業など大口需要家向けで2012年4月に平均16.4%、一般家庭向けは同9月、平均8.46%値上げした。しかし、猛暑だった2013年夏でも節電が定着し、政府の節電要請などなくても10年比で20%以上のピークカットを実現した。節電すれば電気料金の値上げ分を相殺することが可能で、「料金体系の見直しやスマートメーターの設置が進めば、さらに節電効果が高まる」(エネルギー業界関係者)との見方もある。

   原子力規制委員会の新規制基準をクリアした原発が出たとしても、最終的な再稼動の判断には県知事らの同意も必要で、政府、自治体、電力会社、市民を巻き込んで議論は最後までもつれそうだ。