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外国人労働者受け入れ、建設業で拡大へ 担い手不足、「仕方ない」のか…

   政府は、東日本大震災の復興事業や2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、建設業の労働者が不足するおそれがあるとして、2015年春をめどに時限的な措置として技能を持つ外国人労働者の受け入れを拡大する方針で、具体策の検討に入っている。

   小泉政権以降の公共事業の縮小で、建設業の就業人口は大幅に減少している。総務省の労働力調査によると、2012年は約503万人とピーク時の1997年に比べて約3割も減った。

外国人労働者は「即戦力になり得る」

   外国人労働者の受け入れ拡大は、政府が2014年1月20日に開いたアベノミクスの産業競争力会議で、6月に予定される成長戦略の改定に向けた検討方針の柱に、雇用分野の規制緩和策のひとつとして盛り込まれた。

   これを受けて、政府は24日、建設業界の人材不足の解消に向けた外国人労働者の受け入れ拡大を検討する閣僚会議を官邸で開いた。東日本大震災からの復興や施設の老朽化対策などの公共工事に加えて、2020年の東京五輪開催に伴う工事などの増加が見込まれるためで、3月末までに緊急対応策を決める。

   建設労働者の高齢化など、建設業界の構造的な問題を中長期的に解決するとともに、「即戦力になり得る外国人労働者の活用を広げる」(菅義偉官房長官)ことで、1日も早く震災からの復興を実現し、日本経済を持続的な成長軌道に乗せるのが狙いだ。

   緊急対応策は、発展途上国の人材育成を主な目的とした「外国人技能実習制度」を拡充し、実習生の受け入れ期間を現在の3年から5年に延長したり、再入国を認めたりして受け入れる案が柱となる見通し。ただ、この実習制度を建設業の人手不足を補うために活用するのは、本来の趣旨と異なるという指摘もあり、技能を持つ外国人労働者が建設業で働くことができるよう、法務大臣が出入国管理法に基づく「特定活動」に指定して在留資格を認める案も検討するという。

   一方、被災地をはじめとした建設労働者の人手不足は深刻さを増している。1月16日に発表された日本銀行の地域経済報告(さくらレポート)には、「復興関連工事は増加しているが、人員確保が容易でなく入札をあきらめたり、受注を選別したりしている」(仙台や福島)「人手不足のため、やむを得ず断るケースが増えている」(北陸)「人手不足で工期の遅延がみられる」(札幌、福岡)といった報告が寄せられている。

   原発事故のせいなのか、「賃金も大幅に上昇しているのに、人が集まらない」(福島)。また、「そもそも(若い人が)力仕事を嫌う傾向にあるのではないか」との見方もある。

外国人労働者が来てくれるとは限らない?

   とはいえ、外国人労働者の受け入れに反対の声も根強い。たとえば、外国人労働者が多い地方都市では、小・中学校で日本語の話せない外国人児童が増えたり、学校に通わない不就学児童がいたりする。地域社会と、生活習慣をめぐる摩擦などもある。

   なかでも、外国人労働者を雇用の需給調整に使うと、日本人労働者が働き場を失ったり、景気が悪化した場合には解雇された労働者がそのまま不法に滞在することで、行政コストが上昇したり、治安の悪化につながったりする懸念があるからだ。

   ただ、「仮に日本が外国人労働者を受け入れると決めたところで、実際に外国人労働者が来てくれるかどうか、保証はない」と、日本経済研究センター研究顧問の齋藤潤氏は指摘する。

   齋藤氏はネットのコラム「経済バーズアイ」(13年11月22日付)で、「韓国では2003年の外国人労働者雇用法の施行を契機に、外国人との共生や国際結婚で生まれた子供への支援などを目的に法制が整えられ、優秀な人材の受け入れに積極的になっている」という。

   日本の場合、主に中国やベトナム、フィリピンなどアジア諸国からの労働者が多いが、アジアの優秀な労働者は引き合いも多く、「国際競争」にさらされており、「外国人労働者に門戸を開けば、彼らは直ちに来てくれるはずだという発想は、現実とは大きく異なっている可能性がある」と指摘する。