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NHK経営委員発言がまた波紋 右翼拳銃自殺を「神にその死をささげた」と称賛

   NHKの経営委員を務める埼玉大学名誉教授の長谷川三千子氏(67)が文集に寄せた文章が波紋を広げている。拳銃自殺を称賛している上、象徴天皇制を否定するともとれる内容だからだ。

   長谷川氏を経営委員に任命したのは安倍政権だが、発言については事実上「ダンマリ」を続けている。

「野村秋介は神にその死をささげたのである」

   文集は1993年10月20日に朝日新聞社東京本社の応接室で拳銃自殺した右翼団体幹部、野村秋介氏(当時58)の没20年を機に、13年10月に発行された。

   寄稿は旧仮名遣いで、

「野村秋介氏が二十年前、朝日新聞東京本社で自裁をとげたとき、彼は決して朝日新聞のために死んだりしたのではなかつた。彼らほど、人の死を受け取る資格に欠けた人々はゐない。人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどと露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」

と、朝日新聞を非難しながら拳銃自殺をたたえた。その上で、

「わが国の今上陛下は(「人間宣言」が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)再び現人神となられたのである」

と、憲法が定める象徴天皇制を否定した。

   野村氏をめぐっては、「週刊朝日」1992年7月24日号の風刺画コーナー「ブラックアングル」で、当時野村氏が率いていた政治団体「風の会」を念頭に「虱(しらみ)の党」という表現を用いたことが問題にされた。野村氏側は抗議し、週刊朝日は12月18日号で編集長名の「おわび」を掲載したが、翌93年に入ってからも話し合いが続いていた。

突然「朝日新聞と刺し違える」と何度も繰り返す

   当時の朝日新聞は、野村氏の様子を、

「中江利忠・朝日新聞社社長らと日本経済や俳句などを話題になごやかに懇談していたが、突然『朝日新聞と刺し違える』と何度も繰り返し、和服の中に忍ばせていた短銃二丁を取り出して発射し、前のめりに崩れるように倒れた」

と伝えている。

   野村氏の自殺を受け、警視庁公安部は野村氏の自宅と事務所を銃刀法違反の容疑で家宅捜索している。

   野村氏は刑事事件の当事者だということに加えて、「差し違える」という言動はメディアを武器で制圧しようとしたとも読める。長谷川氏の文章ではこれらの点に全く触れずに拳銃自殺を称賛した形だ。

菅官房長官「いちいち、経営委員の言動について政府がコメントすることは差し控えたい」

   政府は、これらの発言については事実上「ダンマリ」だ。菅義偉官房長官は2014年2月5日朝の会見で、

「その(長谷川氏について報道されている)部分については承知していなかったが、我が国を代表する哲学者、評論家として活躍している。文化にも精通している。そういう中で政府として国会に提出して一部野党の同意もいただいて決定した。それ以上でもそれ以下でもない」

と話し、辞任の必要はないとの見方を示した。

   長谷川氏の寄稿が載った文集が発行されたのは政府が人事案を提示する前だ。政府がこの発言を把握した上で人事案を提示していたとすれば、任命責任を問われかねないが、菅長官は、

「いちいち、経営委員の言動について政府がコメントすることは差し控えたい」

とコメントを拒否した。