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米国で大人気の口コミサイト「Yelp」日本登場 実名登録、質の高い投稿者は「エリート」になる

   レストランや喫茶店、エステから不動産、学校、医療機関まで街の口コミ情報をインターネット上で提供する米国のサービス「イェルプ(Yelp)」が日本に上陸し、2014年4月9日に日本語サイトをオープンした。

   「やらせ」の書き込みを防ぎ、情報の信頼性を高めるために怪しい投稿をはじき出す独自の仕組みを採用している。

口コミ情報を解析する独自のソフトを開発

日本語サイトがスタートした「イェルプ」
日本語サイトがスタートした「イェルプ」

   2004年設立のイェルプは、欧米を中心に日本を含めて26か国でサービスを提供している。2013年末の時点で、月間のサイト訪問者は平均1億2000万人に上る。

   掲載情報は飲食店にとどまらない。例えば「千代田区」で検索すると、レストラン以外にも書店やホテル、美術館、開催中の祭りまで表示された。日本ではサービス開始間もないためコンテンツの拡充はこれからだが、米国版は情報量が充実している。通りや地区の名称を入力すると、小規模な店舗まで表示されるほどだ。地名でなく店名、あるいは「ショッピングモール」「眼科」「ステーキハウス」などサービス内容からも探し出せる。

   検索結果として表示された店やサービスには、イェルプ利用者のレビューが付く。これは「食べログ」のような国内の口コミサイトと変わらない。違いは、投稿者が基本的に実名で、顔写真を公開している割合も多い点だ。「オススメのレビュー」として掲載するうえで、運営側は「事実と詳細」を書き込むよう促している。実は「オススメ」に選ばれるのは投稿全体の4分の3で、残りははじかれる。口コミ情報を解析する独自のソフトを開発し、投稿内容の質や信頼性、投稿者が活発に書き込んでいるかなど数項目を勘案して掲載の可否を判断するそうだ。「荒らし」行為が目的だったり、意図的に偏ったレビューだと認識されたりすれば、自動的に掲載対象から外される。

   米国在住者に利用度を聞いてみた。ハワイに住む女性は、周りも含めて使っている人が多いと話す。「レストラン探しに重宝します。レビューや(評価を表す)『星』が多いと信頼します。そういう店はたいていおいしいですね」。

代行業者による不正な「やらせ投稿」は過去にない

   ワシントン州在住の女性に取材すると、イェルプに頻繁にレビューを書き込むという。実は質の高い投稿を繰り返していると認定されたユーザーは、「エリート・スクワッド」に認定される。サイト上で「エリート」と表示され他のユーザーから評価される。またエリート同士のパーティーに招待されるそうだ。「信用できるユーザーは、称賛や批判いずれのレビューも書いており、自分の言葉として表現していると思います」と女性は話す。

   一方で、店探しでレビューを参考にする機会もしばしばあるそうだ。「オススメ」に書かれた通りのサービス内容に満足したこともあれば、期待を裏切られてがっかりするケースもあったと明かす。また、レビューを読みながらあまりにも詳しすぎると「もしかしてスポンサーがついているのでは」と疑ってしまうとも話した。

   レビューを書くうえでイェルプは、「あなたの行きつけの場所の5つ星レビューを無料のドリンク等と引き換えに書かないで下さい」と要望している。公平な口コミ情報でなく、バイアスがかかる恐れがあるからだ。ただ実際は「店から『レビュー書いたらおまけする』と言われたことがあります」と前出のハワイに住む女性は明かす。

   これが度を越すと危険だ。国内では「食べログ」で2012年に「ステマ騒動」が起こっている。飲食店が雇った業者が、「口コミ情報」と称したやらせの書き込みを繰り返してランキングに影響を与えた。閲覧側に気づかせない悪質な方法で、口コミサイトの信用が根本から揺らぐ。消費者庁はこれを受けて、代行業者の「やらせ投稿」によりランキングを変動させるのは景品表示法上の問題があるとの指針を発表した。

   イェルプの最高経営責任者(CEO)、ジェレミー・ストッペルマン氏は「日経ビジネスオンライン」2014年4月9日のインタビュー記事で、食べログのような事例は過去にないと明言した。先述の独自開発のソフトにより、不正投稿とみなされたものははじかれる。加えて「おとり捜査のような不正行為摘発の仕組み」まで取り入れているそうだ。イェルプ側が代行業者に成りすまして、店側に、「有料で高評価のレビューを書き込む」とささやくのだという。万一「わな」に引っかかれば、罰として90日間「警告」が店のページに表示されてしまう。サービスの信頼性を担保するうえで、ここまで徹底しているのだ。

   米国から日本に上陸したネットサービスの「黒船」はこれまでも、交流サイトのフェイスブックをはじめ成功例は数多い。グローバル級のイェルプに対して、食べログをはじめとする国内勢はどう立ち向かうだろうか。