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米国の広告売上高、ネットがテレビ抜く 日本ではいつそんな時代が到来するのか

   米国の広告市場で、インターネット広告の年間売上高がテレビを初めて上回り、主要メディアの中でトップに立ったとの調査結果が発表された。

   日本では、テレビが他のメディアを圧倒する。だがネット広告も、スマートフォン(スマホ)の急速な普及を追い風に年々首位に迫りつつある。

ワシントンポスト「テレビ抜いたのは特筆すべきこと」

「広告費」でネットがテレビを抜くにはスマホの成長がかぎに
「広告費」でネットがテレビを抜くにはスマホの成長がかぎに

   2013年の米ネット広告に関する調査は、ネット広告の業界団体「インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー」(IAB)と、大手会計事務所「プライスウォーターハウスクーパース」(PwC)が共同で実施した。ネット広告の売上高は、前年比17%増となる427億8100万ドル(約4兆3450億円)に達し、テレビ放送広告の401億ドル(約4兆727億円)を抜いた。「テレビ放送」は、NBCやCBSなどネットワークを中心にしたもので、ケーブルテレビ(CATV)は含まれない。

   ネット広告の売上高は、同調査で結果が公開されている2005年以降ほぼ右肩上がりで成長してきた。最初は雑誌と並ぶ「5番手」だったが、2007年にはラジオを、2010年に新聞を、2011年にCATVを追い抜いて、昨年とうとうテレビも越えた。米ワシントンポスト電子版は2014年4月10日付の記事で、「テレビ放送とCATVを合算すれば、ネット広告はまだまだ及ばない……それでも、テレビ放送(単体)の広告費を抜いたのは特筆すべきことだ」と評した。

   日本国内はどうか。電通が2014年2月20日に発表した「2013年日本の広告費」を見てみよう。広告費は「媒体費」と「制作費」を合わせたもので、テレビが1兆7913億円だったのに対してネットは9381億円と、倍近くの差があった。ただし前年比の成長率では、テレビが0.9%増でネットは8.1%とこちらはネットが上回った。2008年時点の広告費は、ネットがテレビの3分の1程度にとどまっていたがその後順調に成長し、東日本大震災が起きた2011年もいわゆる「主要4媒体」が軒並み前年比減だったのとは対照的に増加した。

   テレビの牙城は揺るがないが、今後を占ううえで興味深い調査があった。デロイトトーマツコンサルティングが2013年5月29日に発表した「2013年メディアデモクラシーの現状調査」だ。日本を含む10か国、約2万人が調査対象となっている。まず「購買決定に影響力を与えるもの」として、10か国共通の1位は「友人、家族、知り合いのお勧め」だが、2位に「テレビ広告」を選んだのは6か国にとどまった。残る4か国は、ウェブ媒体の方がテレビより高い評価を与えた。ただし日本ではテレビが2位だった。

広告市場拡大のかぎとなるのが、スマホ

   調査では、自宅でテレビを見る際にいわゆる「ながら視聴」をしているのは対象国全体で約8割に上ると指摘された。日本も74%だ。これはテレビコマーシャルへの注意力が低下している可能性を示すものだという。

   ネット広告における日本独特の傾向として、広告が表示されないようにするためにオンラインのコンテンツの有料版を利用する割合が、わずか8%と10か国中最下位だった。米国は26%、平均でも22%という数字から見て、かなり低いと言えよう。日本人は、広告が付いていても無料コンテンツを選ぶというわけだ。これなら出稿側は、広告が消費者の目に触れる機会を維持できる。調査では、「日本におけるオンラインコンテンツ領域での収益モデルは、広告への依存度が高まることが想定される」と分析していた。

   今後のネット広告市場拡大のかぎとなるのが、スマホだろう。国内外問わず、モバイル広告は急成長中だ。ワイヤレス領域での広告・マーケティングを手掛けるD2C社長の宝珠山卓志氏は、2014年3月3日付の「ダイヤモンドオンライン」で、独自調査に基づいた2013年のモバイル広告市場について述べた。市場規模は2011年が1168億円、12年に1298億円、13年は2253億円となった。2013年は前年比73%増と大きく伸びており、総額の9割以上がスマホ広告だ。「ガラケー」と呼ばれる従来型携帯電話からスマホへの移行率は鈍化し始めているものの、「インターネット広告市場の牽引役は、スマートフォンであることは明らかだ」と断言している。

   前出のデロイトトーマツコンサルティングの調査では、国内のスマホやタブレット型端末の新規購買欲は低いが、若年層になればなるほど意欲が高まっているという。これを踏まえて若者向け広告の出稿が伸び続ければ、今後もモバイル広告が「倍々ゲーム」で増える可能性もある。米国のようにテレビ広告を脅かす日が、そう遠くない未来に訪れるかもしれない。