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フィギュア羽生凱旋パレードで「日の丸旗配れ」 問い合わせが相次ぎ「前例ない」と市が困惑

   ソチ冬季五輪フィギュアスケート男子で日本初の金メダルを獲得した羽生結弦選手(19)の凱旋パレードが出身地の仙台で2014年4月26日に行われるが、主催する仙台市に対し「なぜ日の丸の旗を配布しないのか?」といった問い合わせが相次いでいる。

   きっかけとなったのは「仙台にパンダはいらない仙台市民と宮城県民の会」という組織のブログで、仙台市議が日の丸紙旗の用意を市などに求めたが「前例がない」「準備する時間がない」と回答し断ったため、市議はその回答を突き返した、というものだった。

「日の丸の一つも用意できねば仙台人の矜持に関わる」

   14年4月11日付けのブログによれば、優勝パレードの開催が決定した14年3月20日から仙台市議を通して日の丸紙旗の用意を打診したが、主催する仙台市、宮城県、宮城県スケート連盟が協議し、「前例がない」「警察に迷惑がかかるかもしれない」という理由で断ってきた。市議はその回答を突き返した。

   4月14日の再回答では「準備する時間が、もうなくなった」「日の丸紙旗は1本100円以上かかるため、高額になる」という内容だったと報告し、

「日本と仙台を代表して戦い、金メダルを受賞した羽生結弦選手を仙台で祝福するのに、日の丸のひとつも用意しないという道理が、通るでしょうか?」

と疑問を投げかけた。また、日の丸の一つも用意できなければ仙台人の矜持に関わるため、パレードを見に行く人は日の丸持参でお願いしますと呼びかけている。

   凱旋パレードで沿道に集まった人たちが選手に向かい小旗を振っているのはよくある光景だ。羽生選手は今回の五輪で「日本」「日の丸」を強く意識した発言を繰り返していた。その結果金メダルに輝いたわけだから、日の丸の旗で祝福しても何の違和感もない。仙台市はなぜ用意することを断ったのだろうか。

凱旋パレード「なにも配らない」例も

   仙台市と「『金メダルおめでとう』パレード実行委員会」に話を聞いてみると、旗など応援グッズを配る「習慣」の様なものはないのだという。荒川静香さんがフィギュアスケートで金メダルを獲得した06年トリノ五輪や、12年のロンドンオリンピック、13年のプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの優勝などでパレードを行ったが、いずれも旗などは配らなかった。

   配布しない理由は経費節減という意味合いもあるが、安心、安全にパレードが行われるように警備などを強化することに力を注いだためだと説明した。日の丸の小旗を配ってほしいとの要望があったのは確かだが、これまでそうしたことをしてこなかったことと、従来の方針を変えるには時間を要するため難しかったのだそうだ。市にはブログを読んだと思われる人たちから「なぜ日の丸の旗を配布しないのか?」といった問い合わせが相次いでいるそうで、

「配布は出来ませんでしたが、旗を持ってきて振るのは何の問題もありませんので、ぜひ羽生選手の祝福をお願いいたします」

ということだった。12年のロンドンオリンピック後のパレードは4万人が集まったが、羽生選手は8万人を超えるのではないか、と予測している。

   また、日の丸の小旗自体、実はそれほど配られてはいないようだ。ソチ五輪スノーボードハーフパイプの銀メダリスト平野歩夢選手(15)が14年3月15日に地元の新潟県村上市で凱旋パレードし、市民ら約1万2000人が詰め掛けた。その際市は1万本の小旗を用意し配布したが、日の丸は1本もなく青い小旗には「平野選手銀メダルおめでとう」の白い文字だった。

   銅メダルを獲得した平岡卓選手(18)の3月21日のパレードで奈良県御所市が用意した旗500本には平野選手の顔写真がプリントされていた。5月1日に北海道下川町で行われるジャンプの葛西紀明選手、伊東大貴選手、伊藤有希選手のパレードでは、3人が並んだ写真がプリントされた旗が配られる予定で、4月19日の白馬村で行われるモーグルの上村愛子さんや、ノルディックスキー複合個人ノーマルヒル銀メダリスト、渡部暁斗選手ら7選手凱旋パレードでは、旗などの声援グッズは配らないと白馬村では話している。