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昭和シェル石油が新ハイオクガソリン発売へ フェラーリと共同開発、燃費や加速性能が向上

   昭和シェル石油が2014年7月から高性能の新ハイオクガソリンを発売すると発表した。「シェルがフェラーリとF1マシン向けのレース燃料開発で培った技術を応用した」というから、マニアの間で話題を呼びそうだ。

   具体的には「エンジン内部に付着する汚れを洗浄し、錆から保護する新たな清浄剤を採用、クルマ本来の性能を引き出す」という。

12年ぶりにモデルチェンジ

ハイオクが変わる(画像は英「シェル石油」商品紹介サイト)
ハイオクが変わる(画像は英「シェル石油」商品紹介サイト)

   「ガソリンなんて、どれも同じ」と思うなかれ。ユーザーにはあまり知られていないが、国内のガソリンスタンドで販売されるガソリンは、レギュラーが石油元売り各社共通の規格品で、基本性能が同じであるのに対して、「ハイオクは元売り各社によって添加剤や調整が創意工夫され、燃費や加速性能が異なっている」(大手石油元売り関係者)というから驚きだ。

   ハイオクガソリンにはいろんなブランドがある。「ENEOSヴィーゴ」(JX日鉱日石エネルギー)、「Shell Pura(シェル・ピューラ)」(昭和シェル石油)、「出光スーパーゼアス」(出光興産)、「スーパーマグナム」(コスモ石油)、「シナジーF-1」(エッソ、モービル、ゼネラル=東燃ゼネラルグループ)などだ。

   いずれも各社の独自開発で、「レギュラーガソリンより最大2.7%燃費が向上」(出光スーパーゼアス)、「レギュラーガソリンに比べて最大約5倍の清浄性能」(スーパーマグナム)などとうたっているが、この分野の最大のライバルはENEOSヴィーゴとシェルピューラだろう。

   2005年1月に「ENEOS NEWヴィーゴ」を発売した新日本石油(当時、現JX日鉱日石エネルギー)は「国内で唯一、摩擦調整剤を配合し、同剤未添加のハイオクに比べ、(1)燃費が最大3%向上(2)加速性が最大5%向上(3)出力が最大15%向上する」などとアピール。エンジン内部の汚れも86%削減するなど「国内最先端の清浄性能」を誇る。2002年3月に発売開始のシェルピューラは「ヴィーゴと性能はほぼ互角」(石油元売り関係者)と見られるが、今回12年ぶりにモデルチェンジすることになる。

ENEOSなどライバル各社も新ハイオクを開発か

   昭和シェル石油が7月に発売する新ハイオクは「Shell V-Power」で、「現行のピューラの洗浄性能を満たしながら、直噴エンジンなど最新の自動車技術にも適応する新たな清浄剤を採用した」という。同ブランドのハイオクは現在、海外66か国で販売されている。昭和シェル石油は新ハイオクの具体的な性能を明らかにしていないが、現行ピューラやヴィーゴを上回るとみられる。こうなると、ENEOSはじめライバル各社も新ハイオクを開発してくる可能性は十分にある。

   高性能ハイオクガソリンには面白いエピソードがある。かつて三菱自動車が2000年代初頭、パジェロでダカールラリー(かつてのパリ・ダカールラリー、通称パリ・ダカ)に参戦していた時、三菱チームが発売直後のヴィーゴを使用しようとしたところ、世界自動車連盟(FIA)にストップをかけられたという。理由は「ヴィーゴの燃費が他チームのハイオクに比べ優れていたから。パリ・ダカで3%燃費が違うと、トータルではものすごい差が出るため、競技では使用が認められなかった」(石油元売り関係者)という。この裏話はENEOSにとっては名誉なことで、ガソリンによってクルマの性能が異なる現実を物語っている。

   実際にハイオクを市販車に使用した場合はどうか。各社とも「高性能清浄剤がエンジン内部の汚れを減らすため、エンジン本来の性能を引き出し、燃費や加速の向上が期待できる」と、口をそろえる。

   たかがガソリン、されどガソリン。基本性能が同じレギュラーなら迷う必要ないが、ハイオクとなると話は別だ。気持ちよい加速を楽しみたいクルマ好きはもちろん、少しでも燃費を抑えたいハイオク仕様車のユーザーなら、ハイオクガソリンの違いを試してみるのも一興だろう。