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みずほ新体制、カギ握る川村隆・元日立製作所会長 社外取締役は「お飾り」じゃない

   暴力団関係者への融資問題に揺れたみずほフィナンシャルグループ(FG)の新たな内部統治(ガバナンス)体制がようやく決まった。

   2014年6月の委員会設置会社への移行に伴い、元経済財政担当相の大田弘子氏(60)を取締役会議長に迎える。信頼回復に向けた最後の一手だが、金融業界では早くも実効性に疑問の声が出ている。

人事権を完全に外部に委ねる

効果はあるのか
効果はあるのか

   「マクロ経済の知識に加え、政府の要職や大臣経験があり、高い見地からみずほの課題を取り上げてもらえる。調整能力も非常に高い。女性の視点も大きな意味を持つ」。みずほFGの佐藤康博社長は4月22日、新体制を発表した記者会見で、大田氏を議長に選んだ理由についてこう説明した。

   新体制の最大のポイントは、社外取締役の権限を大幅に強めたことだ。みずほFGの取締役は現在の9人から13人に増え、うち社外取締役は大田氏ら6人と現在の3人から倍増する。佐藤社長が表明していた通り、取締役会の中に置かれる指名委員会(役員の人事案を決定)、報酬委員会(役員の報酬を決定)はメンバー全員が社外取締役となった。

   狙いは、みずほに長年巣くってきた旧3行(日本興業、富士、第一勧業)の縦割り意識の一掃だ。佐藤社長は記者会見で「(みずほの)スタート時の3頭体制を1トップのグループCEOにしたが、それが十分でなかった。より強い外部の目線を入れたガバナンスが必要だ」と述べ、旧3行の縦割りが今回の問題の根源にあるとの認識を示した。ある大手金融機関の幹部は「みずほは旧3行で人事ポストを分け合い、意思決定も遅かった。人事権を完全に外部に委ねるなら、その体質にようやくメスが入るのではないか」と評価する。

取締役会室を新設

   ただ、懸念もある。大田氏はパナソニックなどの社外取締役を務めてきた一方、企業経営や銀行実務に携わった経験はない。佐藤社長は「取締役会で決定するのは重要項目に絞り、監督権限に特化する。実務的な話は執行役に委譲するので、銀行のノウハウは必ずしも必要ではない。大田議長で十分務まる」と説明。大田氏らをサポートするため、取締役会室を新設したことや、みずほFGで財務担当の副社長を務めた高橋秀行氏が副議長に就くことも表明した。

   それでも、社外取締役が「お飾り」になる懸念は残る。そもそも、みずほの暴力団融資は、取締役会に問題が報告されていたにもかかわらず、佐藤社長らが重要性を認識できず、放置していたことが最大の問題点だった。記者会見でも誤った説明が繰り返され、傷を深くした。「社内の人間でも情報を正しく把握していなかったのに、社内事情に疎い社外取締役が問題を見抜けるのか」(メガバンク幹部)との声は多い。

   カギを握りそうなのが、大田氏とともに社外取締役に就く川村隆・元日立製作所会長の存在だ。佐藤社長は記者会見で、川村氏が日立のトップ時代、GE(ゼネラル・エレクトリック)に勝つという明確な目標を掲げ、委員会設置会社移行などのガバナンス改革や業績のV字回復を成し遂げたことを評価。「川村さんしかいないと思ってお願いし、最後に思いが届いた」と振り返った。

   就任を要請する佐藤社長と川村氏のやり取りは、さながら面接試験のようだったといい、佐藤社長が改革への熱意を訴えることで、最前線から身を引くつもりだった川村氏をやっと口説き落としたという。佐藤社長は当初、新体制を3月末までに公表する方針だったが、1カ月近くずれ込んだのは、川村氏の説得に時間を要したことが一因だったようだ。

   一時は経団連会長就任も取りざたされた川村氏の手腕に期待する声は多い。一方で、日立製作所はみずほの前身の旧富士銀行からの親密取引先でもある。「身内意識が勝り、経営監督が甘くなるのでは」(他のメガバンク幹部)との指摘もくすぶる。委員会設置会社が佐藤社長ら続投する経営陣の「隠れみの」になりかねないという声は根強い。