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「美味しんぼ」叩きに「疑問」の声 茂木健一郎「特別視する理由がわからない」松本人志「漫画家さんが神」

   週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の漫画「美味しんぼ」の一部描写が東京電力福島第一原発事故を巡る風評被害を助長するとして批判を集める中、地方自治体が小学館に抗議したり、閣僚も記者会見で不快感を示したりと、騒動は大きなものに発展している。

   だが、こうした状況に疑問を投げかける著名人も出てきている。

茂木氏「右往左往する社会の方が問題」

   その一人が脳科学者の茂木健一郎氏(51)だ。茂木氏は2014年5月13日にツイッターを更新。「美味しんぼ」は原作者(雁屋哲氏)が強い信念を持って描いている漫画だと認識していると言い、「その延長線上で言えば、今回の福島の原発事故被害について、あのような表現をしても、意外ではないし、むしろ、ああ、おやりになるだろうなという印象しか、私は持たなかった」と、問題となっている描写は特に驚くものではなかったとの感想を述べた。

   その上で、風評被害につながるという批判には「一つの漫画の中で、福島の原発事故についてある見解が述べられたからと言って、右往左往する社会の方が問題」だとして、受け手側が情報リテラシーを持って総合的に判断すべきだと主張した。また、同作以上に原発事故の被害を指摘する言説は数多くあることから、「さまざまな主張が並立するのが民主主義社会というもので、『美味しんぼ』を特別視する理由が、私にはわからない」と、同作ばかりがバッシングされていることに疑問を呈した。

   映画監督としても活動しているお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さん(50)は、「表現の自由」を主張する。11日放送のバラエティートーク番組「ワイドナショー」(フジテレビ系)に出演した松本さんは美味しんぼ騒動に言及する中で、作品はみんなで作るものではなく作者のものであるとして、「外部の人間がストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしな話なんですよ」とコメント。続けて「これに関しては漫画家さんが神、映画に関しては映画監督が神なんですよ」と指摘し、「周りがごちょごちょ言って変えろとか言うのは神への冒とく」とも語った。

環境大臣や官房長官が口をはさむ

   「美味しんぼ」の描写に対しては、9日に石原伸晃環境相が「理解できない」と不快感を示したり、菅義偉官房長官が12日の記者会見で「科学的な見地に基づいて正確な知識をしっかりと伝えていくことが大事だ」と強調したりと、「国レベル」で注目される問題になっている。

   こうした流れを受け、タレントの伊集院光さん(46)は美味しんぼ騒動が「コミック規制」につながってしまうことを危惧する。12日放送のラジオ番組「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)の中で、伊集院さんは「僕の被害妄想、誇大妄想かもしれないけど」と前置きした上で、「政治の人たちが色んな発言をしていく中で変な盛り上がり方をすると、漫画で言っていいことの(規制)話になりかねない」と話した。

   また、政治家に対しては「潜在的に皆が『不安なんだ』っていうことに関して、漫画に何か言うよりは、そっち(編注:不安)を取り除くにはどうしたらいいんだってことのほうをする(考える)仕事でしょって思うんだけど」「特に国の政治の人に関していうと『なんで皆があれを読んでざわめくのか』みたいなことの責任の一端みたいなのはちょっとある気がする」などと話した。

   美味しんぼは現在「福島の真実編」を連載しており、福島第一原発を訪れた主人公らが原因不明の鼻血を出すといった描写(4月28日発売号)や、本人役で登場する井戸川克隆・前福島県双葉町長が「私が思うに、福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」と語る描写(5月12日発売)などが物議を醸している。スピリッツ編集部は公式サイトに「鼻血や疲労感と放射線の影響を関連づける発言が出てまいりますが(略)その因果関係について断定するものではありません」との見解を掲載している。