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小保方氏「実験用マウス」購入記録なし報道 毎日新聞「特ダネ」は根拠あるのか

   「STAP細胞」の論文で、理化学研究所の調査委員会に不正があったと認定された小保方晴子ユニットリーダーに、別の疑惑が持ち上がった。毎日新聞が、実験で使われたはずのマウスについて、正規の予算で購入された記録がないと報じたのだ。

   記事によると、別の予算を流用するのは許可されていないという。では小保方氏か別の人物が自費で購入したのか、それとも第三者からマウスを譲り受けたのか。

マウスを受け取ったのは「実験実施日」の3日後?

マウスはどこから?(写真は2014年4月1日の調査委員会会見)
マウスはどこから?(写真は2014年4月1日の調査委員会会見)

   2014年5月19日付の毎日新聞朝刊で疑問視されたのは、小保方氏側が実施したとするマウス実験だ。これはSTAP細胞を免疫不全マウスの皮下に移植し、テラトーマ(腫瘍)が形成されるかを見るものだった。小保方氏側は2012年1月24日にテラトーマの取り出しを行ったと主張し、実験ノートの記載を根拠とする。

   しかし、小保方氏の不服申し立てに対する2014年5月7日付の調査委員会の審査報告書を見ると、ノートの該当ページには日付の記載がないため確認が取れず、さらに「どのような細胞と方法を用いて作成されたかについては記載されていない」と書かれていた。ノートの記述は実験日だけでなく、具体的な内容を裏付ける証拠になり得ない、というわけだ。

   既に揺らいでいる「2012年1月24日の実験実施」だが、これが正しいとすると今度はマウスをどうやって入手したのかが問題になるのだ。毎日新聞が入手した資料によると、「正規の予算で必要なマウスを購入した記録がない」。同紙が理研の会計システムに残る物品購入記録を調べたところ、小保方氏が2011年3月に若山照彦氏(現・山梨大教授)の研究室に入って以降、この実験に使える運営費交付金で初めて免疫不全マウスの購入手続きをしたのが2012年1月24日で、マウスを受け取ったのが3日後の1月27日だったと指摘した。システムに記録を残さず物品を購入できないため、これでは小保方氏が主張する1月24日に実験は行えなかったことになる。

   また記事では、「STAP細胞研究の予算は国の運営費交付金だけ」という文部科学省の説明を載せ、科研費など他の予算は充てられないとする。「許可されていない」はずの別の予算を流用してマウスを購入したとなれば、それはそれで「理研の研究管理体制に穴があったことになり、小保方氏だけの問題に帰することはできない」とした。

理研「科研費の目的外使用でなければSTAP細胞研究にも使用可」

   購入せず実験を実施したとなれば、誰かから譲り受けるなどして調達したのだろうか。こうなると、実験に適したマウスを使用したかどうかも分からなくなり、結果の信頼性も揺らぐ。第一「マウスの貸し借り」のようなずさんなやり取りが、研究所間で行われたとすれば大いに問題のはずだ。

   小保方氏は2014年4月9日の会見後に「補充説明」という文書を発表したが、その中でマウスについて「2013年3月までは、私は、神戸理研の若山研究室に所属していました。ですから、マウスの受け渡しというのも、隔地者間でやりとりをしたのではなく、一つの研究室内の話です」と説明している。これを前提とすると、購入していないマウスが研究室で見つかれば「どこから調達してきたのか」と疑問に思う研究者が出てくるはずだ。自費で購入というシナリオも、経費で買えるのにわざわざそうする必要性が感じられない。

   ひょっとすると実験そのものが実施されていないのでは、との憶測まで出ている。インターネット上には「エア実験」といった中傷に近い言葉までささやかれているほどだ。一方で「2012年1月24日」が小保方氏側の記憶違いといった単純ミスというのも考えにくい。そもそも小保方氏が主張している日付であり、自らの研究者としての運命がかかった不服申し立てで、不備のある情報を強調するというのは常識的にありえないだろう。

   理研は5月20日夜、J-CASTニュースの取材に文書で回答を寄せた。マウスの購入については「事実確認中ですが、科研費で購入したマウス(2011年12月入手)を使用している可能性があります」と説明する。毎日新聞の記事中に「科研費など他予算は充てられない」との記述があるが、これに対して「科研費の目的外使用にあたらなければSTAP細胞の研究にも使用できるため、その点について現在確認中です」とし、論文中の「acknowledgements」(謝辞)の中に、科研費の研究課題番号を記載していると付け加えた。