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地銀、「殿様経営」の終焉? 金融庁がビジネスモデルに危機感示す

   金融庁が2013年度の金融検査の結果、「金融モニタリングレポート」を初めて公表した。この中で、地方銀行・第二地方銀行に対して「貸し出しの量的拡大といったビジネスモデルは、中長期的には成立しない可能性がある」と、辛辣に表現している。

   一方、日本銀行が2014年7月8日に発表した6月の貸出・預金動向(速報)によると、地銀・第二地銀の貸出残高は前年同期比3.6%増と高い伸び率を示した。地銀の貸出残高は増加基調にある。

2025年3月末には、どの地銀も「貸出残高は減少する」

金融庁は、金融検査の結果を初めて公表した(画像は金融庁のホームページ)
金融庁は、金融検査の結果を初めて公表した(画像は金融庁のホームページ)

   金融庁は「金融モニタリングレポート」で、「地域の企業向け貸出残高と地域の生産年齢人口との間には高い相関関係がみられる」とし、生産年齢人口の減少の予想をもとに、それぞれの地銀が経営基盤としている都道府県(本店所在地)の2025年3月末時点での貸し出しの市場規模を推計したところ、「いずれの地域も貸出残高は減少する」と指摘した。

   その一方で、地銀各行が策定している中期経営計画をみると、多くの地銀で計画期間中(3年間程度)に貸出金の増加を目標として掲げている。

   レポートでは、「全国的な人口減少に伴う貸出規模の縮小が予想される中で、こうした貸し出しの量的拡大といったビジネスモデルは、全体としては中長期的に成立しない可能性がある」と、危機感を示している。

   とはいえ、足もとでは地銀の貸し出しは順調に伸びている。金融庁は、こう説明する。

   地元の地域で人口や企業が減るのだから、地元の貸出先は減っていく。現在も、おそらく今後も、地銀が貸し出しを伸ばしていくのは、東京などの大企業向けや地方公共団体向けの貸し出しと、個人向け住宅ローンだ。しかし、こうした貸出先は「借り手側の信用力の懸念が相対的に小さいなど、融資審査にコストがかからない半面、利ザヤが薄い」。

   銀行間の貸出競争の激しい都市部では、貸出金利は市場金利以上に低下しており、預貸金利ザヤも2008 年3 月期以降低下を続け、「コア業務純益ROAも漸減。とくに地元県以外の貸出金利の水準がさらに低下する傾向が認められる」としている。

   地銀は「儲からない」体質で、このままの状況が続けば、体力の弱い、規模の小さな地銀は経営が行き詰まるとみているようだ。

新たな検査手法「水平的レビュー」が追いつめる?

   金融庁の「金融モニタリングレポート」が指摘するように、地銀の収益環境は厳しい。その原因が、市場規模に比べて銀行の数が多すぎる「オーバーバンキング」にあるともいわれる。地銀・第二地銀は、金融危機以前の1997年に131行あったが、現在もなお105行もあるのだ。

   これまで非公表だった金融検査を、レポートとして公表することで「個別行に対して、暗に再編への圧力をかけている」(地銀関係者)と、みる向きもある。

   その地銀関係者は、「そもそも、お金を貸さない銀行は銀行ではない。競争が激しくなって貸出金利が下がるのも当たり前。企業にとっても銀行が競争することで、低金利で資金調達できればメリットがある。地元企業の数が減るのは由々しきことだが、だからといって健全なのに(金融庁に)ダメ出しされる覚えはない」と、不満を漏らす。

   別の地銀の幹部は、「13年度(の金融検査)はいわば総論のようなもの。14年度は決算報告などに照らして評点をつけるのだろうから、最高点もつけば、最低点もつく。細かく見られれば、追いつめられる」と、頭を抱える。

   地銀が恐れているのが、2014年度の金融検査で導入される「水平的レビュー」といわれる手法だ。

   水平的レビューは、複数の銀行に共通する検証項目を選定してグルーピングし、それらの銀行に対して統一の目線で取組状況を横断的に検証する、新たな金融モニタリングの手法。取り組みが類似している銀行の平均的な取り組みやベスト・プラクティス(最良慣行)と、どの程度乖離しているかを明らかにすることで、銀行の収益力や投資効率などを総合的に判断する。

   4つのグループに分けられるが、グルーピングは規模別に分けられたうえ、複数の地銀がある都道府県ではシェア順位をみて分けられている。すでに選別も済んでいる。

   金融庁は水平的レビューの実施にあたって、「どのように進めていこうとか、はっきりとしたことはないも決まっていませんし、(検査についての)コメントは差し控えたい」という。そのうえで、「(検査は)いろいろな議論を深めていこうということであって、再編を促そうとか、そのような意図があるわけではありません」(検査局)と話している。