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「違法」二次創作はどうなるのか? 作家の冲方丁が「自作の全面解禁」宣言

   小説やマンガなどの物語や、アニメに登場するキャラクターを使って第三者が作る独自の作品は「二次創作物」と呼ばれ、著作権者の許可を得ないで制作・販売するのは法律違反だが、お目こぼしを受けグレーゾーンとして扱われてきた。

   しかし、その市場規模が年間数百億円と拡大するに従い、本家の売れ行きにも悪影響が出てきた。著作権側が様々な規制をかけるようになる中で、小説家でアニメの脚本や構成も手掛ける冲方丁(うぶかた・とう)さん(37)が、自分の作品に関しては契約書の発行なしに「全面解禁する」と発表した。

二次創作者からは収益の分配も求めない

「二次創作」について思いを明かした(画像は冲方丁さんのブログ)
「二次創作」について思いを明かした(画像は冲方丁さんのブログ)

   二次創作物販売のメッカといえば東京ビッグサイトで年二回開催されるコミックマーケット(コミケ)だ。3日間の開催中に約56万人が入場し50億円以上の売買が行われるとされている。こうしたコミケのようなイベントは小さいものを含めると全国レベルで行われるようになっていて、書店での販売も含めれば全売り上げは数百億円規模になっているという。

   それら商品のほとんどは著作権者に許可を得ていない「二次創作物」のマンガ、アニメ、ゲーム、グッズなどだ。市場が大きくなるに従い、ファン活動の一環としてお目こぼしができない状況になっていて、「二次創作物」を制作、販売するためのガイドラインを提示する会社も出ている。

   そうした中で、冲方丁さんは2014年7月17日付けのブログで、自分の作品については「二次創作を全面解禁する」と発表した。契約を結ぶ必要はなく、二次創作者の全責任によって製作、販売を許可し、収益の分配も求めないというのだ。しかもその作品を小説やマンガなどの新人賞に応募することも可能だとしている。全面許可する作品については後日に発表するという。

   ただし条件があり、作品に冲方丁さんの二次創作であることを明記することや、仮に新人賞を受賞して連載が決まった場合などは、冲方丁さんとの契約や対価のやり取りが必要となるとしている。

「商品は200個、売り上げは10万円以下」にネットで反発

   なぜこのような方針を打ち出したかといえば、二次創作は人材育成に必要なものであり、それを堂々と表現する場を提供すること、そして二次創作は原作の宣伝にもなるからだという。

「しばしば語られるエクスキューズを、思い切り公的なものにすることで、さらに公的にいろいろとできるようにするのが目的です」

と冲方丁さんは説明している。

   こうした提案に対してネットでは、何の気兼ねもなく作品が使えるのは非常に魅力的だ、という声が挙がる一方で、「つまりは冲方の下請けみたいなもの?」といった声や、二次創作は原作のパロディーだったり、ちょっとした悪意を持ってコソコソするのが楽しいわけだから、「どうぞご自由に」とやられたものに創作意欲が湧くものだろうか、といった疑問の声も出ている。

   二次創作に関するガイドラインは、ゲームソフトメーカーでアニメの原作なども手掛けているニトロプラスが14年7月初旬に新たに設定した。二次創作には寛容なメーカーとして知られていたが、

「種類、内容、契約期間によらず、販売する数量は同一の商品について総累計200個までと制限させていただきます」 「売上予定額が10万円を超えるような場合には、小規模行為ではないと判断させていただきますが、別途ご申請および版権利用料のお支払いをいただければ、例外的かつ部分的に許諾可能です」

などと規定したため、

「二次創作者の締め付けはヤメロ!」
「10万以下、200部以下じゃ、ヘタクソサークルしか活動できないじゃん」

などといった批判の声が挙がっていた。