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朝日新聞VS百田氏の放送法抵触論争 根底には在日コリアン強制連行の有無が存在

   NHK経営委員で作家の百田尚樹氏がキャスターの発言に異議を唱えたのは、放送法に抵触する恐れがあると朝日新聞が報じ、ネット上で論議になっている。百田氏は、報道に対し、ツイッターで全面的に反論している。

   百田尚樹氏から異議が出たという2014年7月22日のNHK経営委員会については、まだネット上でも議事録が公表されていない。しかし、朝日新聞は、25日付朝刊社会面で、関係者への取材で分かったとして大きく報じた。

キャスターは、在日コリアンの強制連行に言及

ツイッターで猛反論
ツイッターで猛反論

   その記事によると、百田氏は、17日放送の「ニュースウオッチ9」で大越健介キャスターが次のように発言したことを委員会で取り上げた。

「在日コリアンの1世の方たちというのは、1910年の韓国併合後に強制的に連れて来られたり、職を求めて移り住んできた人たちで、大変な苦労を重ねて生活の基盤を築いてきたという経緯があります」

   百田氏は、日本が在日コリアンを強制連行したという事実はなかったとして、放送担当の理事らに「間違いではないか」「検証したのか」などとただした。これに対し、議事進行を務めた上村達男委員長代行は、経営委員が番組に干渉するのを放送法第32条が禁じているとして、意見や注文なら問題になると指摘した。そのうえで、番組の感想なのかと問うと、百田氏は発言をストップしたとしている。

   朝日の記事では、「発言が事実なら明白な放送法違反だ」とするメディア論の専門家のコメントを最後に付けている。

   ただ、百田氏が経営委員会でただしたのには、経緯があるようだ。

   大越キャスターの発言については、直後からネット上で「強制連行となぜ断定できるのか」などと物議を醸していた。慰安婦の強制などを否定している百田氏には、ツイッター上で経営委員としての対処を求められ、百田氏も「そんな事実に反することを、ニュースで言ったとなれば、大きな問題ですね」と返していた。

「質問や感想は、放送法にいささかも抵触しない」

   経営委員会でただしたのは、それを受けてのことのようで、この日のツイッターでは、「ここでは書けないが、あることで一部の理事と論争」とほのめかしていた。

   大越健介キャスターの発言については、週刊新潮も2014年7月24日発売号で取り上げ、専門家からも疑問が出ていると報じた。国民徴用令で連れて来られたコリアンのうち、日本に留まったのは245人だけで、それも自由意志だったとして、強制連行とは必ずしも言えないとしている。

   百田尚樹氏は、朝日の記事が出た25日、ツイッターで「悪意にあふれた記事!」だと反論を始めた。番組について質問したことを干渉だと書いたとし、「放送を終えた番組に対して、経営委員が質問や感想を言うことは放送法にはいささかも抵触しない」とする。

   上村達男委員長代行が意見や注文なら問題だなどと言ったと報じたことについては、それはウソだとして「『放送法には抵触しない』と言った」とした。また、感想なのかと聞かれて百田氏が発言をストップしたとの指摘についても、「私は発言をやめていない」と言っている。

   一方、朝日新聞社の広報部では、百田氏の反論に関しては、「引き続き取材しています」とコメントするに留まった。

   NHKの経営委員会事務局では、事実関係について、議事録は次回の委員会で確認した後に公表するとして、「個別に、議事の内容についてはお答えしておりません」との回答だった。

   ネット上では、百田氏の「異議」について、賛否様々な声が出ている。

   否定的なものとしては、「職責の自覚がない」「辞めさせないのか」といった意見が出た。一方で、「問いただしているだけ」「何も間違ったことを言ってない」と擁護する向きは多く、放送法がそもそもおかしいとの声もあった。