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編集長からの手紙
J-CASTニュース8周年 好奇心の翼をさらに広げたい

   J-CASTニュースは2014年7月26日で8周年を迎えた。事業として安定した成長を続けており、発行人として嬉しい。ファンも多いが、一方で、苦言を呈する読者がいるのも耳は痛いが、ありがたく思っている。編集部は年々新卒が加わって若返り、20代が大いに力を発揮するようになった。

   ネットのニュースといえば、一般紙、スポーツ紙の記事が主力で、記事数の面でも圧倒的である。速報の力、調査報道の奥行きは、まだまだ、新聞が強い。

   その中で、独立メディアであり、ネット専用のJ-CASTニュースは既成メディアの一角に食い込んでいる。日本ブランド戦略研究所はジャンルごとのサイトランキングを発表しているが、「ニュースサイトランキング」でJ-CASTニュースは10位に位置している。発表された30位までのニュースサイトのほとんどが、一般紙、スポーツ紙、テレビキー局である。みな、著名なブランドメディアのサイトである。

   記事はヤフーニュースなどの主要ポータルサイト、モバイルサイトにも配信され、配信先サイトで閲覧している読者も多く、読者に人気の高い記事供給先に位置している。これらのサイトからの流入読者、ヤフーやグーグルなどの検索から来る読者などが、バランスよい比率で安定している。

   J-CASTニュースは、ネット専用に編集された記事で構成している。新聞などの既成メディアの記事より好奇心の幅を広げ、ストーリー性を盛り込むことで賞味期限を長くしている。

   創刊のときから、この編集方針は変わっていない。そこには、多くの先人の教えから学んだ教訓が盛り込まれている。その先輩のうち、2人がこの7月に世を去った。

   ひとりは、週刊誌「AERA」の創刊編集長の富岡隆夫氏である。私はその下で副編集長、J-CASTニュース編集長の大森千明は中核の編集部員だった。

   富岡氏は経済記者だったが、堺市の三国丘高校文芸部員のころから「編集長になりたい」が夢だった。そして富岡編集長が最初に宣言したのは「利き腕を縛る」だった。

   記者はつい自分の得意分野に入り込み、大特集を書きたくなる。上から目線になって、読者を置いてきぼりにする。富岡編集長は、利き腕を縛るという言葉で、それを戒めた。

   もうひとりは、フリージャズ評論家の副島輝人氏だ。温厚だが芯が強い人で、生涯、前衛を追い続け、人気音楽に迎合しなかった。

   告別式でジャズピアニスト佐藤允彦氏は、副島さんが京都へ転居するという「噂」についてタネ明かしをした。見舞いに行くと、副島さんはベッドから起きてパソコンでプリントしてくれた原稿を、参列者の前で読んだ。副島さんがフェイスブックに書いた文章が噂の源泉だった。「近く京都へ転居する」という書き出し。そこで聞く音楽、名著などが書かれていた。部屋には布団が1枚だけ、いや、そのうちやってくる妻の布団も敷いておこうとある。それは、死後の世界を意味していたのだが、これを読んだ人はてっきり、副島さんが京都へ転居すると思ったのである。

   式の最後に司会者が「これから副島さんの挨拶です」といって録音が流れた。「みなさん、これからちょっと長い旅に出ます。・・・この放送は霊界通信を使用しています。やりたいことをやる、それが人生です。閻魔大王のことも、私は聞きません。では、みなさんさようなら」と1分半ぐらいの挨拶だった。元気な声だった。

   参列者から、大きな拍手が起きた。

   やりたいことを貫く、これが先人のもう一つの教えだった。

   好奇心を広く、惑わされることなく、やりたいことをやる、J-CASTニュース創刊の編集方針はこれからも続きます。

(ジェイ・キャスト会長 蜷川真夫)