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「世界販売首位」の座をトヨタが明け渡す日は近い 中国などが好調な独VWが猛烈追い上げ

   自動車の世界販売で首位を独走するトヨタ自動車に世界のライバルが迫っている。先頃出そろった2014年上半期(1~6月)の世界販売台数の統計によると、トヨタは過去最高の509万7000台を記録し、3年連続で首位に立った。

   しかし、新興国が好調な独フォルクスワーゲン(VW)が2位につけ、首位もうかがう。トヨタはリーマン・ショック以降、「いたずらに販売台数増を狙わない」(幹部)ことを是としてきただけに平静を装うが、VWに勢いがついているのは間違いない。

VWは米GMを抜き去り、首位トヨタに迫る

振り返れば、すぐそこにVW(画像はトヨタ自動車の企業ホームページ)
振り返れば、すぐそこにVW(画像はトヨタ自動車の企業ホームページ)

   振り向いてみれば、VWはすぐそこに迫っている。というかほぼトヨタと並走していると言っていい。VWは14年上半期、トラック子会社などを含めた総販売台数が前年同期比5.4%増の506万台となった。VWの統計にトラックを含めない考え方もあるが、トヨタだってトラック子会社の日野自動車を含めているのだから、含めた方が比較しやすいだろう。VWは米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜き去り、首位トヨタにあと3万台というところまで迫っている。

   上半期はトヨタが何とか首位を守ったが、その内訳をみると4~6月期はVWが262万台でトヨタの251万台を上回っている。そればかりか、トヨタは3位のGM(250万台)とも差がほとんどない状態だ。中国などの新興国で販売台数を重ねるVWが、2014年の年間首位を奪取する可能性は十分にある。

トヨタ単体の海外販売計画を従来より18万台減

   VWに首位の可能性があるのは、追われるトヨタの方に勢いがないためでもある。トヨタは8月6日、グループの世界販売台数の年間計画を1月時点の1033万台から1022万台に下方修正した。国内は消費増税の影響が想定より小さいとしてむしろ従来計画(トヨタ単体)に5万台上積みし155万台に上方修正したが、タイやインドなどの新興国の販売低迷が影響するとして、海外販売計画(トヨタ単体)を従来より18万台減の760万としたためだ。海外の中でも景気が回復する北米は「非常に堅調な販売を見込む」(佐々木卓夫常務役員)だけに、新興国の苦戦がこれまで以上に目立つ形だ。中国やインドのようにもともと不得意な国で伸び悩むだけでなく、「上得意」にしてきたタイやインドネシアにも影が差しているのだ。タイ、インドネシアはトヨタがそれぞれ3割超のシェアを握るが、タイでは政情不安などに伴う市場縮小、インドネシアではホンダや日産自動車など日本勢との競争激化に直面しているのだ。

上半期の中国販売はVW181万台に対しトヨタ47万台

   ただ、トヨタは2015年3月期を「意志ある踊り場」(豊田章男社長)と位置付け、「持続的成長」(豊田社長)に向けて人材や設備に投資する仕込みの年にすると宣言している。販売台数だけでなく利益についても「目的ではなく結果だ」(豊田社長)とトップ自ら利益を追い求めない姿勢を内外に繰り返し示している。このためか、社内でも「販売台数で抜かれるとか順位とかの話はあまり聞かない」(幹部)という。

   ただ、VWは得意の中国でさらに生産能力を拡大する方針だ。今年上半期の中国販売はVW181万台に対しトヨタ47万台と既に大きく水をあけられている。そうこうするうちに世界販売台数で首位どころか、トップグループから脱落する可能性も否定できないと見る向きもある。