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「『読者へのおわび』あってしかるべき」 慰安婦報道、朝日大物OBからも苦言続々

   済州島で若い女性が強制連行されたとする、いわゆる「吉田証言」が「虚偽だった」と朝日新聞が認めて1か月以上が経つが、朝日新聞への批判はやむ気配を見せない。

   朝日新聞OBも例外ではなく、朝日新聞ウェブサイトや社外の媒体で、連日のように辛辣な「古巣批判」を展開している。

「ポリティカにっぽん」早野氏、原発「吉田調書」報道にも疑問符

朝日OBからも古巣への苦言が相次いでいる
朝日OBからも古巣への苦言が相次いでいる

   古巣批判を展開するOBは、現役時代から名の知られた人も多い。長年にわたって政治コラム「ポリティカにっぽん」を連載した元朝日新聞コラムニストで桜美林大教授の早野透氏も、そのひとりだ。

   早野氏は朝日新聞のウェブサイトで連載しているコラム「新ポリティカにっぽん」の中で、9月3日に「慰安婦・吉田調書報道に思う」と題して慰安婦問題に触れた。

   8月5日に掲載された検証記事については「その経過説明は行き届いていて、けっしてずさんなものではない」と一定の理解を示しながらも、「吉田証言」に関連した記事の取り消しが遅れた点については、

「私が見聞きしてきた朝日新聞記者の、例えばリクルート事件の疑惑追及の調査報道の際の『ファクト』の徹底的な把握への情熱と周到さと比べると、やはり甘さが感じられる」

と批判。「おわび」が必要だとの見方を示した。

「私たちが責任を負っているのは、何よりも読者に対してである。やはり、この甘さについては、『記事の取り消し』だけではなく『読者へのおわび』があってしかるべきかと思われる」

   東京電力福島第1原発の吉田昌郎元所長=13年7月死去=へのヒヤリング結果をまとめた「吉田調書」についても、

「他紙に出た吉田調書の詳報を読むと、公平に見て、これを朝日のように『命令違反、原発撤退』と断ずるのは、いささか無理があるように思われる」

と朝日の報道に疑問を呈した。

元主筆・若宮氏も「不十分な対処が禍根残した」

   朝日新聞からすれば「敵地」とも言える他社の媒体で朝日新聞批判を展開するOBもいる。例えば元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司氏は、産経新聞のオピニオン誌「正論」14年10月号に、

   「なぜ吉田清治の虚言を見抜けなかったのか」と題して寄稿。

   文芸春秋10月号にも朝日新聞元主筆の若宮啓文氏らOB3人が寄稿している。若宮氏は、

「それにしても、検証記事が出てからの一連の批判には、案の定おかしなものが多すぎる」

と批判に反論も試みているが、1997年に自らも政治部長として関わった慰安婦問題の検証記事で、吉田証言の信ぴょう性を明確に否定できなかったことについては、

「不十分な対処が批判を引きずることになり、禍根を残したことは間違いありません」

と反省の弁を述べた。

   朝日新聞元論説委員の長岡昇氏は、吉田証言を最初に取り上げた記事を書いた清田治史氏(現・帝塚山学院大学教授)を、ブログで厳しく批判している。清田氏は、外報部で長岡氏の直属の上司だった。

   ブログでは、清田氏が報じた「吉田証言」の信ぴょう性を検証することなく、清田氏の出世を許した朝日新聞の体質を「グロテスク」とまで表現している。

「東京本社編集局次長の後、彼は総合研究本部長、事業本部長と地歩を固め、ついには西部本社代表(取締役)にまで上り詰めました。慰安婦をめぐる虚報・誤報の一番の責任者が取締役会に名を連ねるグロテスクさ。歴代の朝日新聞社長、重役たちの責任もまた重いと言わなければなりません」