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韓国開催のアジア大会でサッカー日本代表に「洗礼」 エレベーター故障の「ポンコツ宿舎」あてがわれる

   サッカーの国際試合では、敵地で戦う際にピッチ内外で理不尽な目にあう、いわゆる「アウェーの洗礼」をしばしば浴びせられる。韓国・仁川で開催されるアジア大会に出場したサッカーU-21(21歳以下)日本代表も、例外ではないようだ。

   練習場では野外での着替えを強いられた。宿舎に至ってはエアコンやエレベーターが故障して、選手たちは22階まで徒歩で上り下りしなければならない。

1万5000人収容、新築の選手村が不備だらけ?

練習場を巡りもめることもしばしば
練習場を巡りもめることもしばしば

   男子サッカーは、アジア大会の開幕に先立って2014年9月14日に1次リーグが始まった。日本代表は同日、クウェートを破って幸先の良いスタートを切った。

   だが舞台裏ではドタバタが続いていた。12日に現地入りしたチームだが、出発便遅延のため、韓国入国後に選手村に直行したという。複数の報道によると、そこから昼食抜きで練習場に移動するも、着替えは野外に設営された簡易テント、到着が大幅に遅れたにもかかわらず練習時間は30分程度しか延長が許されず、満足な練習とは程遠かったそうだ。終了後はシャワーすら浴びることができなかった。

   出発の遅れが尾を引いた結果とも言えるが、追い打ちをかけたのが宿舎だ。選手たちは、仁川市内に新たにつくられた選手村に入った。新築マンション22棟2220戸の宿舎に最大1万5000人を収容するが、これが不備だらけのようだ。「サッカーマガジンゾーンウェブ」は、9月13日と15日に相次いで悲惨な宿泊事情をリポートしている。まずエアコンがなく、扇風機でしのがねばならない。部屋によっては風呂場の排水に不具合が生じ、シャワーを使うのもひと苦労だという。さらにエレベーターが故障して、部屋がある22階まで歩いて移動しなければならない。修理は遅れており、快適さとは無縁の住環境に選手たちは耐えている状況だと報じられた。

   2014年のソチ冬季五輪でも、同様の問題はあった。各種施設の建設が遅れて、出来上がった後も設備が不完全との話だった。ただ、競技開始後に「エレベーター故障により22階まで徒歩で往復」となれば、選手の体調やプレーに影響しないとは言えず、「準備不足」で片づけるには度を超えていないだろうか。ソウル五輪やサッカーW杯日韓大会を経験し、2018年には平昌冬季五輪を予定している韓国は、インフラが未整備な途上国、あるいはスポーツの国際大会の経験が乏しい国というカテゴリーに当てはまらないはずなのだが......。

日本がホームで「洗礼」浴びせた例「聞いたことありません」

   「アウェーの洗礼」は通常、大会運営者の手によるものではないと話すのは、サッカージャーナリストで「フットボールレフェリージャーナル」を運営する石井紘人氏。練習グラウンドが荒れ放題で石ころだらけ、滞在先のホテルでは宿泊客が騒ぎ、テレビの音量を上げて選手の睡眠を妨害する、部屋には見知らぬ相手から頻繁に電話がかかってくる――。こうした行為はおおむね、自国を応援する熱狂的なサポーターらの仕業というのが多いという。

   「原則的に、スポーツと政治は切り離すのが前提」である以上、たとえ二国間関係が良好でなくても、ほかの参加国と比べて著しく不利な環境下に置くことは考えにくいそうだ。日韓関係は政治的には冷え込んでいるが、選手村に宿泊しているのは他国の選手も同じはず。日本だけが突出して「嫌がらせ」されてはいないのではないかと石井氏は話す。

   ただ国同士の関係がこじれていれば、相手国に対して好印象を持ちにくいのは事実だろう。そのため「積極的に厚遇しようとは一切思わないでしょうね」と指摘する。むしろ、修理を頼まれても後回し、サービスの質は低いまま、といった態度で臨む可能性の方がありそうだ。

   選手村の宿泊施設は、日本代表が割り当てられた部屋が「たまたま」ひどく、運が悪かっただけかもしれない。だが石井氏は、エレベーターが壊れて22階まで歩かされた例は過去に聞いたことがないと言う。仮に韓国側が意図的に「ポンコツ」をあてがったとしたら、悪意ありととられても仕方がない。

   「前例」もあった。2013年7月に韓国で行われた東アジア杯。韓国側から日本代表に提供された練習場は、周りから「丸見え」の環境下だった。対戦国は日本の練習風景を楽々と偵察、さらには韓国選手の宿舎からも見渡せる場所だったという。また、出場した豪州や中国と同じホテルに詰め込まれた。だが、男子では日本が決勝で韓国を破り優勝。悪条件をはね返してみせた。

   日本がホームで試合を開催する際、相手国チームに「アウェーの洗礼」を浴びせることはあるのだろうか。石井氏は「記憶にありません」。練習環境や宿泊施設が整備されていて「オンボロ」があまり見当たらないうえ、サポーターも礼儀と節度をもって相手選手の邪魔などしないからだ。「おもてなしの精神」で「正々堂々スポーツマンシップにのっとり」試合に臨む日本流を、昔も今も貫いているということだろうか。