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JR東日本、東京駅「記念Suica」で思わぬボロ儲け 170万枚で利益十数億円はいく?

   東日本旅客鉄道(JR東日本)が売り出す「東京駅開業100周年記念Suica」に、約170万枚もの申し込みがあった。

   「記念Suica」は、2014年12月20日に1万5000枚を限定発売しようとしたが、約1万人もの購入希望者が殺到して東京駅が大混乱に陥った、「曰くつき」のSuicaだ。締め切りは2015年2月9日なので、まだ増える可能性がある。

受付開始からわずか3日で170万枚、当初予定の100倍

大人気の「東京駅開業100周年記念Suica」
大人気の「東京駅開業100周年記念Suica」

   JR東日本は「東京駅開業100周年記念Suica」の申込状況について、2015年2月2日8時時点で当初予定していた発行枚数の100倍を超える、約170万枚の申し込みがあったと発表した。1月30日に受け付けを開始して、わずか3日間でのことだ。

   同社によると、申込み件数は75万6916件で、内訳はインターネットからの申し込みが72万9108件、郵送が2万7808件だった。申し込み枚数で、169万5343枚。1件あたり約2.24枚の申し込みがあったことになる。

   記念Suicaのデザインは、赤れんがの丸の内駅舎。JR東日本の女性車掌がデザインしたもので、特製の台紙とセットになっている。1枚2000円で、うち500円がデポジット(保証金)、1500円がチャージ分になる。1人3枚まで購入できる。

   当初は発売枚数を限定1万5000枚とし、2014年12月20日朝から東京駅丸の内南口ドーム内の特設ブースで販売。翌日以降は駅窓口で販売する予定だった。

   ところが、記念Suicaは予想以上の人気で、東京駅には一時1万超の人が長蛇の列をつくった。行列は駅周辺を取り囲み、車道にはみ出したり駅舎内で身動きがとれなくなったりするなど危険な状態となり、結局、販売予定枚数の約半数の8000枚を売ったところで販売を中止。販売中止に納得できない一部の購入希望者が駅員に詰め寄ったり、怒号が飛び交ったりと騒然となり、100人の警察官が出動する騒ぎに発展した。

   この騒動を受けて、JR東日本は購入希望者のすべてが購入できるよう販売方法を見直し、発売枚数に上限を設けないことにした。通信販売に改めて、現在インターネットと郵送で申し込みを受け付けている。

   ただ、申し込み枚数はすでに14年度内の増刷可能数(10万枚)の17倍に達しており、14年度内の発送分は抽選で決めることにした。JR東日本は2月下旬に専用の払込票を発送し、3月9日の支払期限終了後、入金を確認してから1週間~10日前後をめどに順次を発送するという。

当初の1万5000枚では採算ギリギリ

   「東京駅開業100周年記念Suica」の人気は、その希少価値にあるとみられる。それが「プレミアム感」につながり、さらにはオークションサイトでの転売行為につながったとされる。

   2014年12月20日の東京駅での発売時には、アルバイトを雇って前日から並ばせ、入手した記念Suicaを高値で売りさばく「ブローカー」もいたとされ、オークションサイトでは多くの記念Suicaが出品され、なかには数十万円という価格で落札されたものもあったという。

   こうした一連の騒動を多くのメディアが取り上げたため、JR東日本にとって思わぬ宣伝になったことはあるかもしれない。

   鉄道会社でICカードや記念きっぷの企画などに携わった経験のある鉄道評論家の至道薫氏は、「あの騒動が宣伝になったことはあったでしょうね。今回の申し込みが予想を上回っているのもその効果だと思います」と話す。

   ただ、たしかに当初の1万5000枚は多くないが、至道氏は「SuicaなどのICカードはさほど利幅がありませんし、手間と時間がかかるので、鉄道会社はそれで儲けようとは考えていません。記念Suicaの場合は台紙もありますから、当初の1万5000枚では採算ギリギリだったと思いますよ」と推察する。

   かつてのテレホンカードのように、カードの表面にプリントするというわけにはいかないようだが、それでも170万枚も売れば、儲けも出てくる。

   記念Suicaの場合、1枚につき200円ほどが儲け。170万枚売れば、3億4000万円にのぼる。加えて、購入した人がチャージ分(1500円)を使わなければ、資金が歩留る。購入を申し込んだ人は、1人2枚以上買っている。1枚を使わずに手元に置いておいたとしても、十数億円にのぼる。

   発行枚数が増えて、JR東日本の儲けは大きくなったようだ。