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JASRACに吹き荒れる春一番 「退会」巡る裏ワザ知れ渡る

   カラオケで思いっきり歌いたいのに、入ってなくて歌えない――。そんな楽曲は少なからずある。多くの楽曲を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)に加入していない作詞家や作曲家、音楽出版社が手がけている楽曲がそれだ。

   ちょうど今の季節に歌いたい、1970年代に活躍したキャンディーズの代表曲「春一番」もその一つだった。

  • 3年待ちました! キャンディーズの「春一番」がカラオケで歌える(画像はイメージ)
    3年待ちました! キャンディーズの「春一番」がカラオケで歌える(画像はイメージ)
  • 3年待ちました! キャンディーズの「春一番」がカラオケで歌える(画像はイメージ)

カラオケの楽曲「原則、JASRACと契約している」

   キャンディーズの「春一番」は、作詞・作曲を手がけた穂口雄右氏(67)が、2012年3月31日付で日本音楽著作権協会(JASRAC)を退会したことがきっかけで、カラオケで歌えなくなっていた。それだけではない。「夏が来た!」もカラオケから消えていた。

   穂口氏といえば、「年下の男の子」や「わな」「微笑がえし」など、キャンディーズの楽曲を数々手がけているほか、RCサクセションの「ぼくの好きな先生」や郷ひろみ&樹木希林の「林檎殺人事件」、小泉今日子の「素敵なラブリー・ボーイ」など、1970年代以降のヒット曲はズラリとある。

   JASRACによると、「穂口氏が手がけた楽曲の中には、穂口氏自身のほかに音楽出版社が契約を結んでいる楽曲もあり、それらの作品は(穂口氏の退会以降でも)継続して管理していました」と話す。つまり、穂口氏が管理していた楽曲以外はカラオケでも歌えたし、テレビCMなどにも使える状態にあったわけだ。

   本来、JASRACを退会することは、つくった楽曲を作詞家や作曲家自らが管理することになる。また、JASRAC以外にも著作権管理団体はいくつかある。しかし、自身の楽曲がどこでどのように利用されているかを把握し、著作権料を徴収することはかなり難しいし、「売れっ子」になるほどそうだろう。結果的に、楽曲を無断で使われてしまう可能性が高まり、著作権料なども得られないわけだ。

   その一方で、楽曲を使用したい場合には、著作者に許諾を得なければならない。ただ、利用した楽曲がJASRACと契約していれば、たとえばテレビ局はJASRACと契約を結ぶだけでその楽曲を利用できるので、いちいち著作者を探したり、許諾を得たりする必要がなくなる。

   あるカラオケ業者も、「原則としてJASRACと契約している楽曲しか使用していません」と話し、JASRACとの契約が切れた楽曲については「カラオケには使えない」という。

   ちなみに、JASRACが管理している楽曲は現在、公開されているものだけで国内約133万作品、外国約172万作品ある。

増えている? 海外で契約、国内はJASRACが管理

   とはいえ、「春一番」や「夏が来た!」は、これまでにテレビCMにも何度も使われた、キャンディーズの大ヒット曲。カラオケで熱唱していたファンも少なくなかったはず。そんな楽曲が3年間も歌えなかったのだ。

   「春一番」の使用が可能になったのは、作詞・作曲の穂口雄右氏が在住している米国の著作権管理団体と契約を結んだためだ。こうした経緯は、日刊ゲンダイ(ネット版)が2015年3月25日朝に報じ、注目を集めた。

   JASRACは海外93か国・4地域の122団体と「相互管理」契約を結んでいるので、その契約に基づいて、「(「春一番」の)日本国内での著作権管理はこちらで行っていきます」としている。これを受けて、通信カラオケ大手の第一興商やXINGが配信を開始している。

   作詞家や作曲家らが、どの著作権管理団体を選ぶかは基本的に自由だ。JASRACは「個人の管理会社もありますし、(他社の管理は)めずらしいことではありません。また管理といっても、たとえば同じ楽曲でも演奏権はA社、録音権はB社といったように利用形態ごとに分けて管理しているものもあります」と、さまざまなケースがあるようだ。

   穂口氏のように、最近は主たる活動拠点を海外に置いている作詞家や作曲家、アーチストは増えている。そのため、「現地の著作権管理団体と契約して、国内ではJASRACが管理する楽曲も少なからずあります」という。

   ただ、「(「春一番」のように)影響力、実績のある楽曲(で3年間も使えなかったようなケース)は、それほどありません」と、穂口氏の「春一番」は異例だったようだ。