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ファウルで失明、4200万円賠償は適当か 日ハム訴訟判決巡って賛否両論

   プロ野球観戦中にファウルで失明した女性の訴えを認め、日本ハムなどに4190万円の賠償支払いを命じた札幌地裁の判決が、ネット上で賛否が分かれる議論になっている。

「子供だったら、確実に命を落としていたような事故」「二度とこういう事故が起こらないようにしてほしい」

   2015年3月26日の判決後、原告の札幌市在住の30代女性は、会見でこう求めた。

  • 避け切れる?(写真はイメージ)
    避け切れる?(写真はイメージ)
  • 避け切れる?(写真はイメージ)

日ハム「防球ネットを張ると臨場感が失われてしまう」

   報道によると、事故は、10年8月21日の日本ハム対西武戦で起きた。女性は、札幌ドームの一塁側内野席で前から10列目に座って、夫や子供3人と一緒に観戦していた。家族の様子をうかがうために試合から目を離した直後、ライナー性のファウルボールがスタンドに飛び込んできて右目を直撃した。

   この事故で、女性は、右眼球が破裂し、右顔面の骨も折る重傷を負った。

   裁判では、女性側は、球団が臨場感を出そうと、内野席のフェンスの上にあった防球ネットを06年に取り外し、ファウルによる事故が年約100件も発生していたと指摘した。そして、「防球ネットなどを備えるべきだった」などと主張し、4650万円の損害賠償を求めた。

   これに対し、球団側は、観戦チケットの裏には、ファウルなどによる事故に責任を負わないと記されており、安全対策でも「大型ビジョンや場内アナウンスで注意喚起していた」などとした。そのうえで、女性が気を付けていれば直撃を回避できたと述べて、請求の棄却を求めていた。

   26日の判決では、札幌地裁は、「観客に常に試合から目を離さないよう求めるのは現実的ではない」と述べ、打球が女性の座席に達するまで約2秒しかなかったとも指摘した。注意喚起をしていたとはいえ、ドームの設備は安全性を欠いていたと述べ、原告の訴えをほぼ認めた。

   日本ハムは判決後、防球ネットなどを張ると臨場感が失われてしまうと懸念を示し、控訴を視野に検討する考えを明らかにした。

「テーマパーク化し、自己責任問うのは酷」との声も

   ファウルボールによる失明を球団側の責任とした札幌地裁の判決について、野球に詳しい識者らからは、様々な反応が出ている。

   共同通信の報道によると、自民党の萩生田光一総裁特別補佐(51)は、日本ハムについて「気の毒」と同情を示し、「免責条項とかを作れないのか」との考えを示した。3月26日にあったスポーツ議員連盟の勉強会での発言だ。米大リーグでは、防球ネットはバックネット裏だけしかない球場が主流だとされており、萩生田氏は、「ファウルボールに当たると、その観客がブーイングされて出ていけ、といわれる。そのくらい『ボールを見ていろ』という文化が根付いている」と述べた。

   一方、米ニューヨーク拠点のスポーツマーケティング会社代表の鈴木友也氏は、ヤフー・ニュースに投稿した個人記事で、米大リーグでは、ファウルなどによる事故は、観客も危険を承知で来ているとして免責とされる場合が多かったものの、最近は変わってきていると指摘した。客が観戦に集中できないピクニックエリアなどにいるときは、球団側が敗訴するケースも出てきているというのだ。日本でも、スタジアムで酒類を提供したりイベントで女性客を取り込んだりするなどテーマパーク化しており、鈴木氏は、客の不注意を一概に責められない環境にもなってきたとしている。

   ネット上でも、札幌地裁の判決については、賛否両論になっている。

   支持する声としては、「ライナー性のファールを素人がよけるなんて無理」「酒売っといて注意してれば大丈夫とか通る訳ねえだろw」「全面ネットにすりゃいいじゃん」といった書き込みがあった。

   否定的な声も根強くあり、「内野席のファールだしな ちゃんと見てりゃ避けれる」「自己責任だろこんなん」「危険性の全くないところで観戦したいなら、テレビを観るべき」などの意見が出ている。