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批判浴びたすき家「ワンオペ」、まだ続いていた 高円寺南口店で起こった「昏倒」の舞台裏

   牛丼チェーン店の「すき家」で過酷な労働の温床とされた、従業員が1人で店内のすべての業務をこなすワンオペレーション(ワンオペ)がいまだに続いていたことがわかった。

   「ワンオペ」は、深夜時間帯には防犯上危険なこと、また従業員からは「トイレに行く時間がない」「自宅に帰れない」などの声が寄せられていた。2014年7月には、労働環境を調べる第三者委員会が「法令違反」を指摘するなど、親会社のゼンショーホールディングス(HD)が解消に向けて取り組んでいた。

  • 「ワンオペ」、まだ続いていた・・・
    「ワンオペ」、まだ続いていた・・・
  • 「ワンオペ」、まだ続いていた・・・

男性アルバイトが急な体調不良に陥った・・・

   店内のすべての席に食べ終わった食器が放置されたままで、「厨房から店員の『もう無理です...!うう』という悲鳴のような声が...」聞こえた――。2015年4月19日、お昼を摂ろうと「すき家 高円寺(南口)店」を訪れた人が、ツイッターでこんなことをつぶやいた。「何事かと厨房をのぞくと、店員がそのまま倒れていた」という。

   「すき家」といえば、2014年春に「ワンオペ」によるパート・アルバイト従業員の過酷な労働が大きな問題となり、いわゆる「ブラック企業」批判を浴びた。それによって、従業員がストライキを起こしたり相次いで辞めたりしたほか、イメージダウンによる顧客離れで、深夜営業の打ち切りや閉店を余儀なくされた店が少なくなかった。

   この出来事にゼンショーHDは、「高円寺南口店で男性アルバイトが急な体調不良を起こしたことは事実です」と話し、当時アルバイトの男性が一人で勤務する、「ワンオペ」の状態だったことを認めた。

   同社によると、すき家では各店に「トラブルホットライン」を設置しており、男性アルバイトから電話で「呼吸が苦しい」と訴える連絡があり、すぐに救急車を手配するなどを措置した。

   なぜこんなことが起こったのか――。当時、すき家本部ではこの店が「ワンオペ」状態にあったことを把握していなかった。通常は、繁忙時に「ワンオペ」にならないように、人員不足がある店にブロックマネージャーや本部が補充を手配することになっていた。

   高円寺南口店では「(ワンオペ状態を知っていたのは)エリアマネージャーだけで、ブロックマネージャーや本部が(人員を)手配できず、エリアマネージャーが店に向かっていたところでした」と説明。エリアマネージャーが店に駆けつけたときは、倒れた男性アルバイトが本部に連絡してから4分後だったという。

「ワンオペ」改善はまだ道半ば

   男性アルバイトについて、ゼンショーHDは「持病があったわけでもなく、休みもとっていて、勤務時間にも問題はありませんでした。(男性は)初めてそのような状態になったということで、まったくイレギュラーなことです」と、少々困惑ぎみ。

   とはいえ、「ワンオペ」は完全には解消されていなかったようだ。ゼンショーHDは「現在、深夜時間帯のワンオペはすべてなくしました」としながらも、昼の時間帯では「店によっては(ワンオペの店も)あります」と明かした。

   入客数は店によって、また営業時間によって繁忙時に偏りがある。たとえば、お昼時はお客が集中的に訪れるが、それが終わるとピタッと入らなくなったりする。「店舗によっては1時間に数人しか入らない店もあります」と話し、人員を効率よく配置することに腐心しているという。

   同社は「基本的には複数で対応したほうが客入りもいいことがわかっています」とも話すが、人手不足もあって「なかなかうまくいきません」と漏らす。

   パート・アルバイトの調整については現在、店長からエリアマネージャーやブロックマネージャー、本部のすべてが把握できる「店舗安定運営システム」を導入。パソコンで他店の人員を把握でき、応援人員などを手配しやすくする仕組みを整えているところ。

   順次導入を進めているが、「高円寺南口店は(導入が)まだでした」という。

   ゼンショーHDの小川賢太郎会長は2015年4月8日、職場環境改善促進委員会の報告がまとまったことを受けて開いた記者会見で、家族が近所の主婦に逃げられたエピソードを涙ながらに語り、「ワンオペ」や「ブラック企業」批判がさすがに堪えたようだった。

   その報告書でも、「労働環境が十分に改善しているとは言い難い、改善に時間がかかっているなどまだ道半ばである」と、指摘されていた。