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アイドルのヘリウム事故、痙攣して卒倒するほどの重症だった BS朝日番組、日本小児科学会が「BPOでの審査が必要」

   BS朝日のバラエティ番組で起きたヘリウムガス吸引事故について、テレ朝側は、アイドルグループの少女(12)が吸引後に意識を失ったと説明していた。しかし、実際は、痙攣して卒倒するほどの重症だったことが、日本小児科学会の経過報告で分かった。

   この番組「3B juniorの星くず商事」では、2015年1月28日の収録当時、市販のパーティーグッズを使ってゲームをしていた。

  • 何も釈明しないのか
    何も釈明しないのか
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後頭部を強打し、全身が硬直して激しい痙攣

   日本小児科学会ホームページや学会雑誌に載せられた報告書「ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害」によると、事故に至るまでの経緯は次のようだった。

   吸うと声が変わるというヘリウムガス缶をネタに、少女を含めた出演者5人がゲームを始めた。1本のみガス缶、残りの4本は空の缶という設定で、5人がそれぞれ缶を取って吸い始めた。しかし、1回目は、だれの声が変わったか分からず、やり直しになった。そして、2回目になって、少女は、ガス缶を右手で持って左手で鼻をつまみ、司会者の合図で吸引した。

   ところが、「4秒ほどして缶を口から離した直後から右手を震わせ始め,約 5 秒後に後方へ卒倒した」というのだ。少女は、受け身を取れなかったため後頭部を強打し、全身が硬直して激しい痙攣を起こした。

   すぐに救急車が呼ばれたが、病院で胸のCTを撮ったところ、肺や皮下組織内などにガスがたまった状態であることが分かった。入院翌日も意識障害が続いたほか、左半身の痙攣が残った。その後、症状は改善したが、入院6日目で再び痙攣を起こした。

   少女は、それを受けて転院し、脳の血管にガスが入って血流が妨げられる「脳空気塞栓(そくせん)症」と診断を受けた。その病院で、高圧酸素療法を受けた結果、左半身の麻痺が改善し、目も開けられるようになった。

「発表は承知していないので、お答えしかねる」

   日本小児科学会の報告では、2月5日時点で、少女は、追加の高圧酸素療法を受けたが、高次脳機能障害が残る恐れがあり、リハビリが検討されているとしていた。

   最後に、学会のこどもの生活環境改善委員会からコメントが出されており、そこでは、次のようにメディアに警告している。

「テレビやソーシャルメディアなどでコメディアンやタレント,一般人が面白おかしくヘリウムガス入りスプレー缶を使用することで,それを見ている子ども達がまねをして同様な事故が起こる可能性がある」

   テレ朝では、ガス缶に「大人用」と書かれていたのをスタッフが見落としたと釈明していたが、委員会コメントでは、12 歳の少女にガス缶が使用された点について、放送倫理・番組向上機構(BPO)で審査する必要があると厳しく指摘した。

   また、テレ朝に対しては、テレビ収録で事故の状況が秒単位で記録されているはずだとして、「その貴重な映像などを用いて科学的に検証して発生機序を明らかにし,その結果をもとに予防法を考え,それを公表,また報道する必要がある」と求めた。

   BPOの広報担当者は、取材に対し、どこからも審査の申し立てがなく、現時点では審査しておらず、またその予定もないと答えた。

   テレビ朝日の広報部では、「ご指摘の発表は承知しておりませんので、お答えしかねます」とコメントしている。

   なお、少女は、3月10日に退院し、翌日から学校に通い始めたとテレ朝はすでに発表している。少女とされるアイドルグループのメンバーは、退院後にグループのブログで元気な様子を報告し、5月に入ってからも、定期公演に出演したことを明らかにしている。