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「なでしこ」信じられない待遇 代表入りでも年俸300~400万、アルバイトする選手も

   サッカー女子W杯で準優勝を果たした、なでしこジャパンの選手らに経済的な支援を求める声が上がっている。日本を代表する23人のメンバーの中に、アルバイトで生計を立てている選手がいるためだ。

   国内リーグ「なでしこリーグ」でプレーしていても、クラブとプロ契約を結ぶ選手はごくわずかだ。多くの選手が昼間に働いて、練習できるのは夜だけ、という環境にあるのが現実だ。

  • 澤選手のようにプレーに専念できるのはごく一握り(14年6月撮影)
    澤選手のようにプレーに専念できるのはごく一握り(14年6月撮影)
  • 澤選手のようにプレーに専念できるのはごく一握り(14年6月撮影)

プロ契約結ぶ選手はごくわずか

   サッカー解説者のセルジオ越後さんは2015年7月7日、日刊スポーツのコラムで強化のために「環境面でも考えなければならない」とし、

「4年前、選手たちがアルバイトをしながら戦っている姿にみんな感動した。でも4年たってもまだアルバイトだよ。どこのクラブとも(プロ)契約していない選手は協会が契約してあげるなど、方法はある」

とし、経済的な支援の必要性を訴えた。有吉弘行さんも5日、出演したラジオ番組「有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER」で「もっと(給料)あげて」「世界一なのに」などと訴えていた。

   そもそも「なでしこリーグ」はJリーグと異なり、プロリーグではない。日本代表に選ばれた選手でも所属クラブとプロ契約を結んでいない場合もある。

   大会MVP候補になった有吉佐織選手は日テレベレーザとアマチュア契約のため報酬は受け取っていない。横浜市内のフットサル場で受付の仕事をしながら、練習に励み、試合に出場している。

   ほかにもアルビレックス新潟レディースの北原佳奈選手が新潟市内の病院、ベガルタ仙台レディースの川村優理選手が仙台市内の酒屋で働いている。所属選手とプロ契約を結ぶなどして実質的なプロチームになっているのは、スポンサーが多いINAC神戸くらいだ。

   仮にプロ契約を結んでいたとしても年俸は300~400万円前後といわれ、代表で主将を務める宮間あや選手(岡山湯郷ベル)でようやく1000万円を超える(推定)程度だ。高額収入が見込まれるのは、澤穂希選手や川澄奈穂美選手(ともにINAC神戸)ら知名度が高く、CMやスポンサー契約できるごく一部だけだ。

選手のほとんどが働きながらプレーしている

   なでしこが今大会の準優勝で獲得した賞金は、前回大会の優勝時(100万ドル)より多い130万ドル(約1億6000万円)。選手への報奨金は日本サッカー協会(JFA)規定の150万円に特別ボーナス500万円を加えた前回よりも増額されるとみられている。

   ただ上記ボーナスのような一時的なものだけではなく、継続的な支援が必要だ。JFAは15年から1部リーグの各クラブに、サッカーに専念できる選手が3人以上になるよう義務付けるなど整備を進めている。

   元代表メンバーで、スペランツァFC大阪高槻で現役を続ける丸山桂里奈選手は7月7日のブログで、女子サッカー選手のほとんどが働きながらプレーしていることに触れ、なでしこの活躍を「同じサッカー選手の希望になったのではないかなと思います」という。その上でアメリカでのプレー経験を踏まえて、

「アメリカは純粋にサッカーに集中出来る環境の反面、日本はまだまだ環境が追いついていない部分があります」

と指摘。女子サッカーがブームに終わるのではなく、職業として定着していかなければならないと訴えた。