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健康麻雀 「飲まない」「吸わない」「賭けない」の「3ない」で認知症予防にリーチ

   麻雀と言えば、パチンコ、競馬と並んでサラリーマンが身を滅ぼす3大ギャンブルの1つといわれたものだが、いまや認知症予防の楽しい脳トレ・ゲームとしてすっかりイメージチェンジしている。

   「(酒を)飲まない」「(たばこを)吸わない」「(金を)賭けない」の「3ない」を条件にした「健康麻雀」が人気を集め、自治体が主催・後援する大麻雀大会が各地で行われているのだ。

  • マナーを守って楽しくプレー
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きちんとした服装、丁寧な挨拶、礼儀正しさで暗いイメージを一新

   麻雀経験者ならご存知だろうが、麻雀は自分の手を隠して相手の裏をかくゲームだから、プレイヤーの品位がすぐ表れる。勝つと驕って相手を嘲笑する。負けると腐って愚痴をこぼす。感情をむき出しに牌を叩きつける‥‥。特に人柄の悪い面の方が露骨に表れ、雰囲気が険悪になりやすい。

   そこで「健康麻雀」を推進している社団法人・日本健康麻雀協会では、まず基本的マナーを厳しく指導している。「ラフな格好ではなく、きちんとした服装で」「始める前に『よろしくお願いします』、終わったら『ありがとうございました』の挨拶を」「チー・ポン・カン・リーチ・ロン・ツモは、はっきり声を出して」「口三味線(ペラペラ喋って相手をかく乱すること)は慎む」「講釈(自分の手はこうだったから、こーした、あーした、と得意げに解説すること)も慎む」「捨て牌はみんなが見やすいように6個ずつ並べてそろえる」「点棒は卓に放り投げず、そっと置く」「牌は叩きつけない」‥‥と、まことに細かい。しかし、大会や交流の場では初対面の人と対戦するから、礼儀正しく気持ちよくゲームをすることが大切なのだ。

研ぎ澄ます五感、前頭葉がフル回転して脳年齢は3歳若返る

   「健康麻雀」では牌も字も、高齢者が見やすいよう通常より大きい物を使う。麻雀は頭脳がフル回転するゲームだ。1対1で手をオープンにしながら戦う将棋や囲碁と違い、どんな手を作っているかわからない3人を相手に戦うのだ。運の要素が強いので、初心者でも大勝ちする醍醐味もある。麻雀の役は40数種類。次々に牌をツモっては捨てながら、どんな役を作っていくか、一瞬一瞬の判断を迫られる。自分の手ばかり見ていては、黙テンを張っている相手に振り込んでしまう。ほかのメンバーの手の進捗状況を息づかいや表情、捨てた牌から推理する。緊張を強いられて五感を総動員する。

   「リーチ!」の声があがった。あと1枚牌がそろうと役が完成するという宣言だ。途端に悩む。相手の役は大きいのか、たいしたことがないのか。表情からうかがう。ここで果敢に勝負するか、安全牌を捨てて降りるか。自分の手と点棒(持ち点)を見ながら神経を集中させる。降りてばかりいては絶対に勝てない。麻雀は、四角い卓に人生が凝縮したゲームだ。負けても金をとられない「健康麻雀」は、勝っても負けても終わった後は、快い疲れと爽快感が残る。

   「頭を使う」「手先を使う」「人と会話する」――。この3つの機会が多い人は認知症になりにくいといわれるが、麻雀はその3要素を満たしている。日本健康麻雀協会の委託を受けて、脳科学者の篠原菊紀・諏訪東京理科大教授が、「健康麻雀」の脳への効果を調査した。麻雀中の高齢者の脳内血流の変化を調べると、特に記憶をつかさどり、知的活動の中核となる前頭葉での血流が増加した。また、他人の気持ちを推し量ることに関わる側頭頭頂接合部という箇所の活動も活発化した。麻雀をしている高齢者の脳年齢は実年齢より3歳若かったという。同時に、パソコンで麻雀ゲームをしている人の脳活動も調べたが、こちらは側頭頭頂接合部の活動に変化はなかった。やはり、生身の人間を相手に麻雀をしないと効果は出ないのである。

   最近は自治体主催の麻雀大会だけでなく、街場の雀荘も「健康麻雀」のサロンに衣替えしている所が増えた。若い頃、たばこの煙もうもうの雀荘で、金はたまらずストレスばかりためたお父さん、健康麻雀で再デビューしてはいかが。