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自衛官自宅にあった「猛毒リシン」入り白濁焼酎 別居中の妻が「テロ毒物」を入手できた謎

   陸上自衛官の夫(34)の焼酎に猛毒のリシンを混入させたとして、宇都宮市在住の妻(33)が2015年11月30日に殺人未遂の疑いで逮捕された。

   ネット上では、国際的なテロで使われたこともある毒物をどうやって手に入れたのか、大きな話題になっている。

  • トリカブトに続き、今度は「テロ毒物」が(写真はイメージ)
    トリカブトに続き、今度は「テロ毒物」が(写真はイメージ)
  • トリカブトに続き、今度は「テロ毒物」が(写真はイメージ)

抽出できる植物「トウゴマ」が家にあった?

   報道によると、発覚したきっかけは、2015年9月に栃木県内の医薬品販売会社から、容疑者の妻が偽名を使ってネズミの駆除剤を購入しようとしたと県警に通報があったことだ。

   夫は、妻とトラブルになって3月から宇都宮市内で別居しており、県警が夫に聞くと、8月に焼酎を飲んだところ激しい腹痛を起こし、病院で点滴を受けたと話した。別の焼酎を鑑定したところ、リシンとは別の毒物が検出された。そこで、県警では妻の行動をマークし、妻が10月29日に合鍵を使って留守中の夫の家に入るのをつかんだ。

   夫から家の焼酎を提供してもらったところ、焼酎は白く濁っており、猛毒のリシンが混入していた。妻は、11月30日に逮捕され、当初は黙秘していたが、その後、混入した事実を認めた。しかし、「殺すつもりはなかった」と容疑を否認しているという。

   その後の報道では、リシンが抽出できる植物のトウゴマを県警が妻宅の家宅捜索で押収したとされた。トウゴマは、工業で使われるひまし油を取るために種子をすりつぶす原料だが、絞りかすにリシンが5%含まれている。観賞用植物としても市販されているが、一般人が家庭で猛毒のリシンを抽出することは果たしてできるものなのだろうか。

市販品もあるが、種子8粒で致死量、解毒剤もない

   昭和大学薬学部の沼澤聡教授(毒性学)は、一般人がリシンを作り出せる可能性はあると指摘する。

「リシンの生成方法は、ほかのタンパク質とそんなに大きく違うものではありません。ひまし油の絞りかすには、リシンが高濃度で存在しており、10倍の50%にまで濃縮するのは、それほど難しくない技術です。ですから、一般家庭で、特別な機械がなくても作りだせるかもしれません」

   ただ、テロに使われる恐れがあるため、公的機関のサイト上からは抽出方法が消されてしまっている。また、ネット上では偽情報がはんらんしているため、作るにはある程度の知識が必要だという。

   容疑者の妻も、元自衛官だったと報じられており、沼澤教授は、「もしバイオテロ対策などに関係したことがあれば、抽出方法を知っていてもおかしくないかもしれません」と言う。

   もっとも、トウゴマの種子は、8粒でも40ミリグラムほどの致死量のリシンが含まれており、絞りかすから水に溶かして作っただけで高純度の抽出とは言えないラフなものだった可能性もあるそうだ。

   リシンそのものは、化学兵器の条約で国際的に規制されており、テロに使われるぐらいなので、ネット上でも一般人が買うことはできないはずだと話す。

   もし致死量のリシンを飲んだとすると、数時間して消化器官が強い炎症を起こし、嘔吐や下痢を繰り返して、3、4日後に命を落とすことになるという。解毒剤は存在しておらず、誤って体内に入れたら、水を飲んだりして対症療法で回復を待つしかないとしている。