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ユニクロ「世界で難民100人雇用」の本気度 「ブラック企業」悪評の風向き変わるか

   カジュアル衣料の「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリングは100人を目標に難民雇用を拡大する方針を明らかにした。

   柳井正会長兼社長が難民支援活動を行う国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との協力関係を強化する合意書を締結し、2015年11月25日、グテーレス高等弁務官との合同の記者会見で発表した。

  • 難民支援に冷淡な日本のなかでも、ユニクロは息の長い支援を続けてきた(画像は、ユニクロ公式サイトのスクリーンショット)
    難民支援に冷淡な日本のなかでも、ユニクロは息の長い支援を続けてきた(画像は、ユニクロ公式サイトのスクリーンショット)
  • 難民支援に冷淡な日本のなかでも、ユニクロは息の長い支援を続けてきた(画像は、ユニクロ公式サイトのスクリーンショット)

既に首都圏で難民13人を雇用

   ファーストリテイリングは2011年に難民インターンシップを受け入れ、現在は難民認定を受けた人や家族ら13人を首都圏のユニクロ店舗で雇用している。これを、欧州を中心に国外の店舗にも拡大し、難民雇用100人を目指す考えだ。「インターンシップを経験し、適正を見極めた後、本人の希望を確認して雇用」するという。

   柳井会長兼社長は記者会見で「難民問題は世界で最も深刻な問題。民間企業や個人が取り組むべきだ」と支援の意義を強調した。

   この間、新規採用後の早期の離職率の高さなどから、「ブラック企業」との悪評も目立ったユニクロだけに、ネット上では「何か月で会社辞めるか」「使い捨てにしそうな気がしてかえって不安」「安い人件費で?」「ブラックのカモフラージュか?」など辛らつな意見も少なくないのは事実。

   ただ、ユニクロは2006年から不要な衣料品を回収して難民に寄贈する活動を始め、これまでに1000万着以上のリサイクル衣料品を届けるなど、国全体が難民に冷淡な日本にあって、難民支援で先陣を切っている。2011年にはUNHCRと協力関係を結んでおり、グテーレス高等弁務官来日時の会見に柳井氏がぴったり寄り添っていた。企業の社会貢献の関係者からは「企業イメージアップのためだとしても、継続しているのは評価できる」との声が出る。

シリア難民などにヒートテック15万着寄付も

   UNHCRによると、難民や避難民は2014年末で5950万人に上り、統計を取り始めてから最多となった。その最大の要因が2011年から始まったシリア紛争だ。一方、パリで発生した同時テロ事件の実行犯に、シリアの偽造パスポートを使ってギリシャで難民申請した男が含まれていたこともあり、欧米では難民受け入れにブレーキをかけようという声も強まっている。

   深刻化する一方の難民問題だが、ファーストリテイリングは100人雇用に加え、2015年中に寒さが厳しいギリシャやセルビアなどバルカン半島諸国やアフガニスタンに逃れている難民に向け、越冬支援として新品の機能性下着ヒートテック15万着も送る。さらに、2016年から3年間にわたり、食料や生活物資の購入、職業訓練や技術習得のための自立支援に総額1000万ドル(約12億円)を拠出する方針も示している。

   ネット上では、こうした取り組みに対し、「国家ばかりに責任を押し付けない姿勢を応援したい」「柳井社長を応援する」といったコメントも散見されるようになっている。