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朝日新聞「徴兵制ならぬ徴介制」投書が波紋 「若者の介護労働」参加めぐり激論

   「徴兵制ならぬ、『徴介制』を設けてはどうだろう」――。50代の女性が朝日新聞に寄せた、「18歳になったら介護施設で介護に携わってもらう」制度をつくってはどうか、という投書が波紋を広げている。

   ネット上では、徴介制に関して「積極的にやってほしい」と賛同の声が上がる一方で、若年層とみられるユーザーからは「言い分が勝手すぎる」と批判的な意見も少なくなく、議論はヒートアップしている。

  • 「徴介制」めぐる投書にネットで賛否
    「徴介制」めぐる投書にネットで賛否
  • 「徴介制」めぐる投書にネットで賛否

介護施設で働くことは若者にとって「尊い体験になる」?

   「介護体験の『徴介制』を提案」と題された投書は、2016年3月7日付の朝日新聞朝刊に掲載された。投稿したのは、都内にある出版社で役員をつとめる50代の女性だ。難病の夫を介護した経験で「人生観が全く変わった」と書いている。

   投書ではまず、高齢者や介護に関するニュースを見ていて気になる点があると問題提起。介護経験の有無で「コメンテーターらの見方がまったく異なる」と述べ、「きれいごとはいくらでも言える」「現実は想像を絶するほど厳しい」などと批判的な意見を続けた。

   さらに、介護をめぐる問題はどの世代にとっても「他人事」ではないとして、若者が介護に携わる「徴介制」の導入を提案。若者が「介護者・被介護者の気持ちを理解できれば尊い体験になるはず」として、

「18歳になったら半年間、介護施設で介護に携わってもらう制度を設けてはどうだろう」

と具体的な制度案にも言及した。その上で、若者が介護の技術を学べる点や、人手の足りない介護現場の助けになる点をメリットとして挙げ、「(徴介制は)有効な方策となるのでは」と提言した。

   この投書は、あるネットユーザーが紙面を撮影した画像をツイッターに投稿したことをきっかけに拡散され、大きな注目を集めることになった。ネット上では「積極的にやってほしい」「悪くないと思う」と投書の内容に賛同する声が上がる一方で、反発の声も寄せられている。ツイッターには、

「若者が力になるって、ボランティアじゃないんだよ。言い分が勝手すぎる」
「強制的にやったら事件が増えるのが目に見えてるんだよなぁ...。強制されてまともに介護すると思う?自ら介護の道に入った人たちが事件起こしてるのに?」
「定年後の老人のほうが暇だろ?老人が無償で介護のボランティアするのが一番いいだろ」

と「徴介制」に反対する意見が数多く寄せられている。なかには、「どういう意図でこの投書を採用したんだ」「採用する方も採用する方」などと、投書を掲載した朝日新聞を批判するようなツイートも見られた。

「制度が実現したとしても、受け入れる介護施設はほとんどない」

   「徴介制」に対しては、実際に介護関連の職に就いているというユーザーからも「現場はそんなに甘くない」などとして、専門知識のない若者に介護業務を強制することは現実的でないと指摘する声が上がっている。

「現場のスタッフの負担になるだけ。イキナリやって来た素人に介護なんて出来る訳ない」
「介護職やってる身としては、イヤイヤ来る人なんていらない」
「現場はそんなに甘くない。人手不足だからこそ、正しい知識をゆっくり与えることも儘ならない。介護はしたくないと、植え付ける結果になりかねない」

   さらに、東京都の介護施設で働く30代の男性は2016年3月8日、J-CASTニュースの取材に対し、「もし本当に制度化されるとすれば、現場は混乱するでしょう」と率直な心境を明かした。理由については、

「全く経験や知識がない若者が、介護の現場で『戦力』になるとは考え辛いです。加えて、何か起きた場合に責任の所在をどこに置くかという点も問題になるでしょう。もちろん、介護の現場を若い人に体験して貰うことの社会的意義は大きいと思いますが、制度が実現したとしても積極的に受け入れようとする介護施設はほとんどないでしょう」

と説明した。

   また、J-CASTニュースは3月8日、この投書を寄せた本人に対しても、彼女が役員をつとめている出版社を通じて、メールで取材を申し入れたが、担当者から、今回の件について回答することはできない、と返信があった。