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広島中3自殺、生徒はなぜ「万引き」否定できなかったのか ネットでは「事実上の殺人」と批判殺到

   「万引きの記録があるため、志望校への推薦は出せない」。広島県府中町の町立中学3年の男子生徒(15)が、誤った非行歴に基づく進路指導を受けた後に自殺した問題が、ネット上で波紋を広げている。別の生徒が行った万引きが、「教師の単純な記載ミス」によって自殺した生徒のものと記録されていたことが各紙報道で伝えられたためだ。

   ネット上では、「学校側クソすぎる」「事実上の殺人だろ!」と学校に対する批判が殺到。一部の掲示板では、自殺した生徒に進路指導を行った女性担任の「特定作業」が進んでおり、すでに本人とみられる人物の顔や氏名が拡散される事態となっている。

  • 生徒を自殺まで追い込んだ? 学校のずさん過ぎる対応に批判殺到
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進路指導は「廊下」で行われた、との報道

   学校の誤った進路指導が原因で、男子生徒が自殺した可能性がある――。府中町教育委員会は2016年3月8日夜に開いた記者会見で、生徒に対し誤った記載に基づく進路指導を行っていたことを認め謝罪、自殺との関係性にも言及した。

   各紙の報道によると、13年に生徒指導の会議資料の電子データを作成した際、別の生徒の万引き行為を自殺した生徒(当時1年生)が行ったと誤って記載。その後の会議で、出席者が誤記載に気付き、紙に書かれた氏名を訂正したが、元の電子データは修正されなかった。

   この誤った万引きの履歴に基づいた進路指導が、15年11月中旬から12月8日まで計5回行われた。その際、担任の女性教師は生徒に対し、校長推薦が必要な私立高校への専願受験は「万引きの記録があるため、志望校への推薦は出せない」と繰り返し説明。女性担任が保護者にその事実を伝えた12月8日の夜に、男子生徒は自宅で自殺したという。

   また、毎日新聞電子版が2016年3月9日に配信した記事によると、自殺した男子生徒に対する進路指導はいずれも廊下で行われ、時間も5~15分程度だった。女性担任は「男子生徒から明確な否定がなかったため、確認が取れたと判断した」などと釈明したという。学校側も、進路指導の方法は各教師の裁量に任せており、マニュアルの作成などは一切行っていなかったと同紙の取材に明かしている。

   ――学校のずさんな資料管理体制が招いた今回の事件について、ツイッターやネット掲示板では「学校側クソすぎる」「教師失格」などと批判が殺到。なかには、

「事実上の殺人だろ!ミスした学校側は命をもって償うべき」
「担任の行為はまさにイジメそのもので、これはもう犯罪だ」

などと過激な言葉を用いて学校や教師を批判する投稿も少なくない。また、一部の掲示板では、女性担任の「特定作業」が進んでおり、すでに本人とみられる人物の顔や氏名が拡散されている。

成績優秀で素行にも問題のない「いい子」

   自殺した生徒が万引きの事実を否定しなかった理由について、教育評論家の松本肇(はじめ)氏はJ-CASTニュースの取材に対し、

「今回亡くなってしまった男子生徒は、成績優秀で素行にも問題のない『いい子』な生徒だったと聞きます。一般的に、そのような生徒は教師の追及に対し、強く否定できない傾向が強いといえます」

と説明。続けて、「親にも相談できなかったため、一人で追い込まれてしまったのではないか」と話した。

   さらに松本氏は、今回の事件において「校長推薦という制度自体が正しく機能していたか疑問です」と問題提起。推薦という制度は本来「教師が生徒の人となりを保証するもの」だと述べた上で、今回のケースは「書類のデータだけで機械的に判断しているようにしか思えません」と疑問を投げかけた。

   また、今回の事件をきっかけに、ネット上では「内申制度」そのものを問題視する向きも強まっている。

   ツイッターでは、内申制度について「生徒の思想を縛っている」「すぐにでも廃止した方がいい」など批判的な投稿が数多く見つかる。なかには、今回の事件が教師の個人的裁量で評価が決まる内申制度の「欠陥」を象徴しているとの指摘もみられる。

   ただ、こうした意見について先述の松本氏は、

「生徒の素行といった評価は、多かれ少なかれ教師の主観的なものになることは事実です。ですが、受験時に用いる調査書へ評価を記入する際は、生徒を一概に批判するような書き方はしません」

と補足した。