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「とにかく寝たい」「ヘリの音で落ち着かない」 熊本大地震、避難生活で疲労する被災者たちの声

   熊本県を中心に発生した一連の地震で人的、物的被害が広がってきた。自宅を離れて避難所に身を寄せる人の数も増えてきている。

   電気や水道、ガスといったライフラインがストップし、交通への影響も大きい。被災者は不便な生活を強いられ、疲労が濃くなってきている。

  • 停電は宮崎県、大分県にも波及(画像は16年4月16日17時現在の九州地方における停電状況。九州電力の公式サイトより)
    停電は宮崎県、大分県にも波及(画像は16年4月16日17時現在の九州地方における停電状況。九州電力の公式サイトより)
  • 停電は宮崎県、大分県にも波及(画像は16年4月16日17時現在の九州地方における停電状況。九州電力の公式サイトより)

壊れたライフラインに追い打ちかける大荒れの天気

   気象庁が「本震」と位置付けた2016年4月16日未明のマグニチュード(M)7.3の地震以降、熊本県では震度6にも達する余震が頻繁に続いている。被災者は気の休まる暇がなく、エネルギーが奪われている。

   熊本市内の男性はJ-CASTニュースの取材に、「とにかく寝たいです。余震が続き、ヘリコプターやサイレンの音で落ち着かない人が多いと思います」と話した。「震災をみんなで乗り切っていきます」と前向きだが、相次ぐ余震に加えて4月16日夜以降は、熊本を含む九州全体で雨風ともに大荒れの天気が予想され、地盤の緩んだ地域での土砂崩れなどの恐れが高まるなど、ますます状況は厳しくなっている。

   時間の経過とともに、生活に直結する電気や水道、交通のダメージが明らかになってきた。16日正午時点で、熊本市内では全域で停電と断水に見舞われた。水道は復旧のめどが立たず給水所が設置された。ガスも、熊本県内で供給する西部ガス管内の10万5000戸でストップしている。熊本県阿蘇市は16日夕方、地盤のゆるみや雨による土砂災害の恐れから、973世帯2712人に避難勧告を出した。

   鉄道や道路の被害も深刻だ。九州新幹線やJR豊肥本線では、列車が脱線したままとなっており、当面運休が続くと見込まれる。九州全域のほとんどの路線で、運転見合わせや遅れが生じている。高速道路では、九州自動車道や東九州自動車道など6路線で通行止めとなり、大分自動車道では湯布院インターチェンジ―日出ジャンクション間で大規模な土砂崩れにより道路が完全にふさがれてしまった。熊本県南阿蘇村では阿蘇大橋が崩落、また国道57号線が寸断された。航空各社は16、17日の両日で、熊本空港を発着する全便の欠航を決めている。

   避難所では、食料や水の配布が行われている。だが交通網の寸断が長引くようだと物流に大きく影響し、外部からの物資輸送に支障をきたす恐れがある。既に熊本県内ではガソリンスタンドへの燃料到着が遅れて、営業を取りやめる販売店が出てきているとの報道もある。

東日本大震災経験者「見通しが描けないのが何よりも苦しかった」

   ライフラインの停止は、たとえ数日でも日常生活に大きな打撃となる。思い出されるのが、2011年3月11日の東日本大震災だ。岩手、宮城、福島の各県で、広範囲にわたって電気、水道、ガスの供給が止まった。

   宮城県気仙沼市で被災し、自宅を津波で失った男性は、当日の夜を避難所に当てられた市民会館で過ごした。だがそこは「急ごしらえ」で作られた場所だったため、食料や毛布は用意されておらず、男性が妻と到着した時間帯には館内が人であふれており、玄関で夜を明かすしかなかったという。

「夜は寒くて耐えられず、しかも人が出入りするたびに入口が開閉して外気が入って来る。暖房もなく、とにかく寒さがつらかったですね」

   避難所での暮らしはとても無理だと翌日、夫婦で妻の実家に身を寄せた。水はわき水を使えたが、電気は3日間ストップしていた。男性はJ-CASTニュースの取材に、「先の展望が見えないのが、精神的に厳しかった。いつ電気が復旧するのか、水や食料が店に入荷するのは何日後か、分からないまま過ごさねばならないのですから」

   宮城県仙台市に住む30代女性も、震災当日に「この先どうなるか、不安が募りました」と答えた。震災後は電気が2日間、水も1週間程度止まった。幼い2人の娘がおり、自宅が無事で沿岸部から離れた場所のため避難所へは行かなかった。それでも停電の影響で、近所のスーパーは軒並み営業休止。コンビニエンスストアが1軒だけ、スナック菓子やインスタント食品を販売していたという。

   電気や水道がいつになったら復旧するという情報は入ってこない。コンビニで長い列に並びながら「次はいつ、食料が入荷するんだろう。そもそも、次もこの店で買えるのだろうか」と心細くなったと振り返った。結果的には電気のない生活が数日で終わったとしても、その時点では見通しが描けないのが何よりも苦しかったそうだ。

   避難所はもちろん、自宅であっても電気や水が使えなければ、単に不便なだけでなく、時間がたつにつれ精神的にも厳しさが増していくのは、今回の熊本でも同じだ。

   熊本では、4月14日夜に最大震度7の地震が発生してから、16日に3日目の夜を迎えるが、大きな余震と天候の悪化で、避難所での生活がいつ終わるのか、めどが立っていない地域が目立っている。