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都知事記者会見にシナリオあった?! 「書き下ろし 舛添BOOK」の交渉術

   舛添要一東京都知事の政治資金問題が大きく報じられる中、一部で注目を集めているのが、1992年に発売されたテレビゲーム「舛添要一 朝までファミコン」だ。当時タレント学者として活動していた舛添氏を「監修者」兼ゲーム中の登場人物に据え、島耕作ばりにビジネスの難局に挑むという、大人向けアドベンチャーゲームである。

   今回の騒動の影響もあってか、ソフトはプレミア化しており、秋葉原のゲーム店では2016年5月19日時点で、4838円(税込)という高値がついていた。購入したところ、付録となっていたのが「書き下ろし 舛添BOOK」という小冊子だ。舛添氏のコメントを交えながら、ビジネスの心得を説く内容であるが、中には「トラブルが発生したときの交渉テクニック」など、今の都知事のお役に立ちそうな内容も......。

  • 92年発売のゲームソフト「舛添要一 朝まで ファミコン」(編集部撮影)
    92年発売のゲームソフト「舛添要一 朝まで ファミコン」(編集部撮影)
  • 92年発売のゲームソフト「舛添要一 朝まで ファミコン」(編集部撮影)
  • 冊子にはビジネスの手引きが記されている

特に目を引く「交渉テクニック」のページ

   こちらの舛添BOOKだが、舛添氏の持つビジネスのコツを伝授するというのが主な趣旨だ。また、随所に4コマ漫画が挿入され、「マスゾエくん」という舛添知事を模したキャラクターが登場する。

   ゲームは子供がやるもの、と言われた時代に、完全に大人向けの作品を企画するというのは非常に思い切った行動だ。ただ、フォーマットの選択といい、その対象といい、かなりずれている気がしないでもない。

   全体でいくつかのテーマ――接待、出張、会議や交渉のコツや、情報や人間関係、派閥――に分かれており、それぞれの重要性と実践にあたってのコツを説いている。基本的には一般的なビジネス書と変わらない内容だが、「講義」として、舛添氏ならではのコメントが添えられている。

   どこまでが舛添氏本人の意見なのかは判別しがたいが、少なくとも舛添氏の肉声を反映していると思われる「講義」の部分でも、

「(接待について)少しぐらい予算をオーバーしても、必要な接待は行うべきである。わずか数万円のことで多くの人のメンツをつぶすべきではない」
「(出張について)空き時間にできることを考える。美術館や博物館などを訪ねることができないか、また観光スポットまで足をのばせないか。また地元の商店街でショッピングをするのもよい」

などなど、今となっては皮肉に取れる内容が多く含まれている。

「こちらの非は非として、認められる部分はまず率直に認める」

   中でも特に目を引くのが「トラブルが発生した際の交渉テクニック」だ。

「譲歩+妥協=有利な展開
1 こちらの非は非として、認められる部分はまず率直に認める。
2 相手が熱くなって発言してきたら、それには答えず、気のすむまで話をさせる。言いたいことを言い尽くすと人間は突如素直になるものだ。
3 一番傷の浅い部分で、妥協できるところは妥協する。それが、最終的に強い態度に出るための一番のコツ。」

   これらの交渉テクニックに着目すると、舛添氏の会見での言葉の選び方の意図が推測できる。

   疑惑表出以降、記者会見が繰り返されているが、舛添知事は、謝り所に関して非常に気を配った言葉選びをしている。

   海外出張での豪遊疑惑、公費による週に1度の湯河原通い、政治資金収支報告書への虚偽記載疑惑に関する一連の会見内で「非」として認めているのは、騒動になったことで「都民に迷惑をかけている」という点だ。調査の結果判明した私的な支出についても謝罪をしているが、これも「都民に迷惑をかけた」ということが主な原因だ。全体としては、法的に問題が無いというスタンスを貫いている。

   会見中繰り返される「批判は謙虚に受け止める」、「現在精査中」という言葉と対応は、不確かな返答を避けるためという意図に加え、テクニックその2「気のすむまで話をさせる」の実践のように見える。

   5月13日の会見中にも、「まずは週刊文春の記事内容について」と言い、それ以外に関する質問への返答を避けていたのは、その表れと言える。批判が出尽くすのを待っているのだろう。

   そして、今後下される決断は、最後のテクニックである「一番傷の浅い部分で、妥協できるところは妥協する」にあたる可能性が高い。どこが「一番浅い傷」になるのか、妥協できるのか、会見を繰り返しながら見極めているのかもしれない。