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発達障害の子は秒速でほめよう 栗原類も絶賛「得意な部分見て」

【あさイチ】(NHK)2016年6月22日放送
「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」

   今、子どもの発達に悩む親が増えているという。発達障害には様々な症状があり、今のところ治療法は確立されていない。

   しかし、米国で生まれたトレーニング方法が簡単かつ効果的で、日本でも徐々に取り入れられてきている。

  • 子どもとの接し方がポイントになる
    子どもとの接し方がポイントになる
  • 子どもとの接し方がポイントになる

0.5秒~1秒以内に「上手!」「最高!」

   発達障害は、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ADD(注意欠陥障害)、LD(学習障害)といったものの総称だ。

   症状には、「視線が合わない」「人に興味を持たない」「言葉の発達が遅い」「こだわりが強い」がある。

   新たなトレーニング方法は、これら全般の症状の改善に効果があるのではないかと言われている。その方法とは、「ABA」(応用行動分析)。ずばり、シンプルに「ほめる」だ。

   米国で学んだセラピストの松井絵理子さんは、2年前に発達障害の診断を受けた4歳のこうくんにABAを実践している。

   1つ目のポイントは「すぐほめる」。

   ひらがなが書かれたカードを1文字ずつ見せ、読めたら「正解!」「上手!」「ステキ!」「最高!」と、ほめ言葉を間髪入れずに言う。時間にして0.5秒~1秒以内だ。これにより、子どもに何をほめられたか理解させる。

   好きなおもちゃを与えたり触れ合ったりといった「ごほうび」でもOK。学習は楽しく、正解するといいことがあると感じてもらう。

   2つ目は「できるように手助け」。

   松井さんはこうくんの前にキリン、ぞう、しまうま、ライオンの順にフィギュアを並べ、「ぞうさんの前は?」とたずねた。こうくんがしまうまと答えると、もう一度「ぞうさんの前は?」と、キリンを指しながらたずねた。すると、こうくんは「キリン」と答えられた。

   手助けをして正解に導きながら、手助けなしで正解できるまでこれを繰り返し、子どもの成功体験を積み重ねていく。

   そして3つ目は「子どもに主導権を渡さない」。

   こうくんに片付けを指示すると、絵本を棚に戻すまでは素直だったが、その後嫌そうにダラダラし、元の席につこうとしなかった。松井さんは再度片付けからやり直すよう指示した。子どもが嫌がることを教える時は、特に主導権を握ることが大切だ。

松井さん「これができなかったらチャイムが鳴って席につくことができない。保育園や幼稚園でも『みんな集まって』と言われた時に集まれない。集団で動くためにも大人が言ったことに素直に耳を傾けるのが大事」

子どもに主導権渡さないのも重要

   すぐさまほめる、を繰り返していると、わざとらしくなってしまうのではないかと心配だが...。

小児科医・平岩幹男先生「子どもたちができないことをできるようにする、それを増やすことが目的なので、ほめることは積極的に使うべき。大人はおだてられているんじゃないかと疑ってしまうかもしれないが、幼児の場合は、明らかに下心があればもちろんわかるが、そうでなく、早くほめたら次の行動に移ることもできる。失敗させないこともすごく重要。できたらほめる。できなかったら手助けしてほめる。これに尽きると思います」

   15年5月25日放送の「あさイチ」で、自身もADDだと告白した栗原類も、このトレーニング方法に賛同する。

栗原「子どもに主導権を渡さないのは重要だと思う。僕も不得意なことを親に頼まれた時は『はーい』と言っていたけど、中学校で反抗期に入った時は『はーい』とは言いつつも全くやらないということがすごく多かった。早い段階で親がちゃんと主導権を握っているのはすごく重要になると思います」

   栗原は母子家庭で育ったが、祖母の家に預けられ、その間に母親が自分のやりたいことをやって仕事、家事、育児のモチベーションを保っていた。

栗原「母親がよく言っていたのは、『人生は徒競走じゃなくて長いマラソンなんだから、スタートダッシュでいきなり息切れしてリタイアするよりは、長く続けることが重要』と」
平岩先生「最大のポイントは、療育をしなければいけないという先入観にかられて辛くなることではなくて、とにかく日々楽しくやる。楽しくなくても楽しそうにしなければ子どもはついてこないと意識してください。子どもの笑顔を引き出せれば、1日5分でも30分でも続けていける」

「お手伝いはほめるための最高の材料」

   発達障害の子を持つ視聴者からも多くの質問が寄せられた。

   小学4年生でADHDの娘をなかなかほめられないという視聴者。「10回憎まれ口を叩かれて11回目にやっと子どもがいやいや勉強にとりかかってもほめる余裕がありません。子どもの自己肯定感を高めるといいますが、私の自己肯定感がすでにボロボロです」と深刻だ。

平岩先生「お手伝いをしてもらって『ありがとう』と言う。この場合私は1日に30回くらい言ってくださいとお願いする。単純にそれだけのことで子どもとの距離は確実に近くなる。お手伝いでいっぱいほめてください。そこから何かが変わってくると思います。お手伝いはほめるための最高の材料の一つ」

   小さい時にほめすぎて、いまだに何をしてもほめてくれるのを期待し、ほめてもらえないとほめることを要求するようになってしまったという子どもの親も。

平岩先生「ほめなさい、ほめなさいと言われていると形式的になり、ほめ言葉さえ言えばいいとなると、子どもが動きにくくなってしまう。物的なごほうびを与えると余計それが起こる。心からほめてください。ほめるだけではなく、急がないのもとても大切。数年かけて煮詰まった関係が1か月で元に戻ることはありえない。少しずつできることが増えていって、1日に1回でも2回でも笑顔が見られたら最高、そこからやるのが一番いいかなと」

   発達障害を持つ子どもが生きやすくなるにはどうしたらよいか、栗原が熱弁した。

栗原「発達障害の人はすごく得意な部分と不得意な部分があるので、なるべく得意な部分を見てほしい。できないことを大目に見てくれと言うと甘えに聞こえるけれど、元々発達障害の人は自己肯定感がすごく低いし、成功談もそんなにない。ほめられなかったら伸びるところも伸びないと思っているので、できることも認めてほしいと僕は思います」