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逮捕のツイート主だけが悪いのか 「ライオン逃げた」拡散騒動の「真犯人」

   熊本地震の発生直後に「熊本で動物園のライオンが逃げた」などとツイッターでデマを流した神奈川県に住む20歳の会社員の男が、業務妨害の容疑で逮捕された。

   「災害時にデマを流し業務妨害で逮捕されるのは全国で初めて」というニュースが流れると、「当然だ!」「バカはどんどん逮捕し根絶しろ!」などといった気勢があがる一方で、「これで逮捕?」といった戸惑いと、男に対する同情が同時に出ることになった。というのも、デマには違いないものの、当時は出来の悪い「ネタ」だとしてバカにされていたツイートで、それが拡散された結果、大問題になった。「ネタ」だと分かっているのに面白半分に拡散した人たちは罪に問われないのか、という問題意識がその背景にある。

  • 「ツイッターのネタで逮捕は行き過ぎ」と言う声も(写真はイメージ)
    「ツイッターのネタで逮捕は行き過ぎ」と言う声も(写真はイメージ)
  • 「ツイッターのネタで逮捕は行き過ぎ」と言う声も(写真はイメージ)

「勘違いさせて申し訳ないです!」と謝罪していたが・・・

 

   逮捕された男は2016年4月14日に、

「おいふざけんな、地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだ。熊本」

というつぶやきと共に、ライオンが街を徘徊している写真をアップした。俄かには信じられないが、もし本当ならば・・・と一時は騒然となった。しかし、写真を見ると日本の様子とはかなり違う。後にこの写真は、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで道路を閉鎖し撮影された映画のワンシーンで、ライオンの名前は「コロンブス」だということがわかる。

   ネットではこのツイートに対し、「中学生レベルのネタだな」「ネタでもこんなバカは逮捕しろ!」という冷ややかな声が上がる一方で、騒ぎに便乗し「狩りに行こうぜ」「くまモン助けてー!」「少しだけワロタ」などと盛り上がることになった。

   さらに、騒ぎを大きくしようと思ったのかは分からないが、リツイートで「ええ、間違えなく紛れもなく、本物です」「ライオン歩いていてやばい」「拡散希望 逃げ出したライオンが徘徊している模様ですよ」などと、煽る人も大量に現れた。

   今回逮捕された男は当時、自分の「ネタ」が大反響を呼んでいることに気分を良くし、

「やっべぇぇぇ、リツイート楽しいwww」
「2まんあざーっす!w」

と大喜びで、リツイートが2万を超えたことを報告した。批判に対しては、

「誰がここが熊本だと言った」

などと応戦し、最後には、

「もう少ししたら消しますね!熊本の現状と勘違いされた方々 勘違いさせて申し訳ないです!」

と謝罪し、ツイートを削除した。ある意味、ちょっとしたツイッター上の「お祭り」のような状態だが、真剣に信じた人が少なからず出る事になった。報道によるとこの時、熊本市動植物園には100件を超える問い合わせの電話が鳴り、警察にも「ライオンが逃げているので避難できない」という相談が相次いだ。動物園は、ホームページで動物はすべて無事で脱走はありませんと説明することになり、被災者はこうした騒ぎに怒り心頭だった。

あれが「ネタ」だと分からない事の方がおかしい

   この騒ぎから約3か月後の7月20日、男の逮捕はネット民に大きな衝撃を与えた。まず、ネットでデマを流したことが業務妨害の罪に問われ、初の逮捕者が出た事。これを機に次々と逮捕者があらわれるのではないか、ということだ。もちろん、これはかなりの朗報であり逮捕するのは当然のことだとし、「デマは絶対に許さん!」「こういうのは厳罰にしないと」などという気勢が上がった。一方で、今回の騒ぎをリアルタイムで見ていたり、参加したりしていた人たちは微妙な状態だ。こんなことで逮捕されるのはおかしい、といった意見もあり、

「ツイッターにウケ狙いの嘘書いただけで、逮捕されてNHKに個人情報流されるとかかわいそうすぎるだろ」
「明らかに日本じゃないのに、信じた人居たのか・・」
「ちょっとしたジョークじゃないか、こんなので逮捕するなよ。言論弾圧国家だな」

などといった意見が掲示板に書き込まれている。

   そもそも、実際に男のツイッターを見た人たちは、あれが「ネタ」だと分からない事の方がおかしいし、事実を確かめないままにリツイートしている人もいる。「ネタ」だと分かった上で、本当の事だと情報を拡散した人もいる。そもそもはツイッターという限られた枠で騒ぐだけならこんな大問題にはならなかった。

「デマを流した男だけでなく、デマだと分かった上で大変なことが起こったと煽った人たちだって、罪があるのではないか」

   そういった感想も出ている。