J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

任天堂株はバブル? 意外と小さい「ポケモンGO」の貢献度

   「ポケモンGO」が2016年7月22日、ついに日本でリリースされた。

   米国やオーストラリアなどを皮切りに、すでに30か国で配信されていて、日本でも多くの人が今や遅しと待っていた。配信を受けて、22日は朝から日本中が沸き、我を忘れて「ポケモン探し」に夢中になっている。

  • 「ポケモンGO」銘柄、止まらない株価上昇!(画像は、ポケモンGOのプレイ画面)
    「ポケモンGO」銘柄、止まらない株価上昇!(画像は、ポケモンGOのプレイ画面)
  • 「ポケモンGO」銘柄、止まらない株価上昇!(画像は、ポケモンGOのプレイ画面)

スマホ向けゲームとして初めてのヒット

   2016年7月6日に米国で「ポケモンGO」がリリースされて以降、任天堂株の「大商い」が続いている。22日も任天堂株は続伸。始値こそ、材料出尽くしとの見方から利益確定売りに押されて前日比700円安の2万7300円と安かったが、世界中で大人気のスマートフォン用ゲーム「ポケモンGO」の配信開始が伝わると、株価は一転。日本でも大ヒットするとの期待感から「買い」が殺到し、前日の終値と比べて1920円高の2万9920円まで上昇した。

   その後は14時すぎに195円安の2万7805円まで下落する場面があったものの、個人投資家らの期待は根強く再び上げに転じ、220円高の2万8220円で取引を終えた。売り買いが交錯したことで、この日も売買代金ランキングはトップを独走。7260億円を超えた。

   ゲーム大手の任天堂は、1983年に発売した「ファミリーコンピュータ」が一世を風靡。その後も次々と家庭用ゲーム機を世に送り出し、世界的なブランドに成長した。ところが、スマートフォン向けゲームの登場で業績は低迷。2011年度から3年連続で営業赤字に陥っていた。15年3月、IT企業のディー・エヌ・エー(DeNA)との資本・業務提携を機に方針を転換、スマホ向けゲームへの「参入」を打ち出した。

   16年3月に、その第1弾「Miitomo(ミートモ)」を配信。秋には「どうぶつの森」と「ファイアーエムブレム」の2タイトルも投入する予定。そうした中で発売された「ポケモンGO」は、任天堂にとってスマホ向けゲームとして、初めてのヒットとなったわけだ。

「足元の任天堂の株価は収益面からは説明しにくい」

   そうしたなか、任天堂株が「過熱しすぎ」と見る向きも出てきた。野村証券のアナリスト、山村淳子氏は7月11日付のレポートで「ポケモンGO」の月商が50~100億円とした場合、任天堂の経常利益の押し上げ効果は年間約10~20億円になると試算。「市場が同タイトル(=ポケモンGO、編集部注)の利益貢献のみを考慮しているならば反応は過度な印象だ」と指摘している。

   「ポケモンGO」は、任天堂の持ち分法適用会社の「ポケモン」が開発に関与。任天堂が直接手がけていないので、利益は株式の持ち分などに応じた計上となるため、同社の収益に与える影響は限定的になるとされる。

   また、SMBC日興証券のシニアアナリスト、前田栄二氏は7月22日付の日本経済新聞で、「足元の任天堂の株価は収益面からは説明しにくい」と指摘。人気の「ポケモンGO」は、同社が7月末に発売を予定しているウェアラブルデバイス「ポケモンGOプラス」を含めても「任天堂の収益への貢献は限られる」とみている。

   最近の株価急騰を、「任天堂がもつ知的財産(IP)への期待はゲーム配信前の時点で、株価にある程度織り込み済み」としている。

   米国などで配信がはじまった7月6日から、任天堂株は22日時点で1万3920円(97.3%)も値上がりしたが、それが人気先行の、ムードだけの「バブル」かもしれないということらしい。

日経平均が反落のなか、「ポケモンGO」銘柄は上昇

   しかし、「ポケモンGO」の配信開始で、関連銘柄も軒並み上昇。その勢いは止まらない。

   2016年7月22日、「ポケモンGO」の配信とともに全国の2900か店で「ポケモンGO」のユーザー向けサービスを開始した日本マクドナルドホールディングスの株価は、一時315円高の3970円まで上昇。終値は145円高の3620円だった。

   子会社が関連アニメを制作するイマジカ・ロボットホールディングスは一時295円高の1374円まで上昇。終値は241円高の1320円を付けた。

   DeNAは6円安の2793円で取引を終えたが、一時は2849円まで上昇し、年初来高値を更新した。東証マザーズに上場するモバイルファクトリーは245円高の4055円。任天堂向け取引がある、カスタムLSIなどのメガチップも23円高の1263円を付けた。

   子会社がポケモン関連の施設を運営するサノヤスホールディングスはストップ高(前日比100円高)の787円で取引を終えた。任天堂と取引のある、プリント配線板のシライ電子工業もストップ高(80円高)の475円まで買われた。

   さらに、「ポケモンGO」で歩き回るので、靴の売れ行きが上がると運動靴大手のアキレスも4円高の142円。また、バッテリーの消費量が多くなると、モバイルバッテリーのエレコム株も2960円と、前日から266円も値上がりした。

   ゲーム配信のプラットフォームである米アップルに注目が集まるなか、フィーチャーフォンからスマートフォンへの切り替えがますます進むとの予測から、ソフトバンクグループやNTTドコモ、KDDIの株価も値上がりした。

   7月22日の日経平均株価は、前日の米株式相場の下落や円相場の上昇を受け、利益確定売りが進み、反落。終値は前日比182円97銭安の1万6627円25銭で引けた。証券や銀行などが安く、自動車など輸出関連も総じて軟調だっただけに、「ポケモンGO」関連銘柄の勢いばかりが目立った。