J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

民放の都知事選報道が急に変わった 候補者「全員」取り上げ始めた不思議

   東京都知事選挙(2016年7月31日投開票)で、いわゆる「主要3候補」以外の立候補者を取り上げるケースが27日以降、民放テレビ各局で目立ち始めた。

   民放では主要3候補を伝える時間が極端に長く偏向報道だとして、他の都知事選候補者有志が、放送倫理・番組向上機構(BPO)と在京キー局4社に対し、報道姿勢の是正を求める要望書を26日付で送付した。有志は具体的な番組名も挙げていたが、要望書送付の直後から、それらの番組内で主要以外の候補者らを取り上げる場面があった。ツイッターでは、要望書との関連を推測する声が上がっている。

  • BPOと民放4局への要望書提出についての会見に参加した(左から)内藤久遠氏、七海ひろこ氏、上杉隆氏、立花孝志氏、マック赤坂氏(2016年7月27日撮影)
    BPOと民放4局への要望書提出についての会見に参加した(左から)内藤久遠氏、七海ひろこ氏、上杉隆氏、立花孝志氏、マック赤坂氏(2016年7月27日撮影)
  • BPOと民放4局への要望書提出についての会見に参加した(左から)内藤久遠氏、七海ひろこ氏、上杉隆氏、立花孝志氏、マック赤坂氏(2016年7月27日撮影)

「主要3候補」以外の放送時間は、18人合わせて3%

   BPOと民放各局への要望書を提出した有志は、27日に開いた記者会見で、「『主要3候補』でない18人の放送時間は3%(NHKを除く)」という幸福実現党の調査を紹介した。調査は、7月18~22日の各局のニュース番組を対象にしたものだ。そのうえで、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)、「報道ステーション」(テレビ朝日系)、「NEWS 23」(TBS系)、「ユアタイム」(フジテレビ系)の4番組において主要3候補とそれ以外の18候補とでは、報道時間に30~40倍の開きがあるとして「異様・異常なこと」とした。さらに、その報道姿勢について「『政治的に公平であること』という放送法第4条第1項第2号の定めに違反する可能性すらある不当なもの」と主張し、是正を求めた。

   今回の都知事選の「主要3候補」と言われるのは、鳥越俊太郎氏(76)、増田寛也氏(64)、小池百合子氏(64)ら3人(届出順)。さらに高橋尚吾氏(32)、谷山雄二朗氏(43)、桜井誠氏(44)、マック赤坂氏(67)、山口敏夫氏(75)、山中雅明氏(52)、後藤輝樹氏(33)、岸本雅吉氏(63)、上杉隆氏(48)、七海ひろこ氏(32)、中川暢三氏(60)、関口安弘氏(64)、立花孝志氏(48)、宮崎正弘氏(61)、今尾貞夫氏(76)、望月義彦氏(51)、武井直子氏(51)、内藤久遠氏(59)ら18人(届出順)が立候補している。

   要望書送付の直後から、指摘を受けた各番組では報道の仕方に変化が現れた。

名指しされた4番組の報道内容が「激変」

   「報道ステーション」は7月27日、主要3人以外の「18人の主張をお伝えします」として、街頭演説や会見の模様を放送。7分ほどの間に18人全員の経歴や公約を紹介し、最後に「この他、都知事選にはご覧の3人の方が立候補しています」として主要3候補の氏名をテロップで映した。

   「NEWS 23」も29日、「JNN世論調査でリードしている3人だけでなく、今日は残る18人の訴えについてもお伝えします」とし、1分40秒ほどで主要3人について報じた後、1人あたり10~20秒、計約8分かけて18人全員の選挙活動を報じた。街頭演説に限らず、インターネット番組や候補者自身のウェブサイトで公開されている動画も紹介。さらに、18人のうち14人が集まり、日本外国特派員協会で各候補者が公約を説明した29日の会見も取り上げ、関口氏、内藤氏、岸本氏、今尾氏の4人が話す様子を、それぞれ10~20秒ずつ映した。

   この外国特派員協会での会見は、29日放送の「NEWS ZERO」も取り上げた。会見に参加した候補者のうち、山口氏、上杉氏、中川氏の3人の主張を約10秒ずつ伝えた。なお、その前に主要3候補の選挙戦の様子を約4分5秒に渡って報じていた。

   一方、「ユアタイム」は26日以降、投票日前最後の放送となる29日まで、18人の主張について報じなかった。29日の放送では、主要3候補が出演した「みんなのニュース」(フジテレビ系)での議論の模様を約8分5秒間伝えた後、他の18人の顔と氏名だけを2回に分けて9人ずつ、各約10秒間ずつテロップで映すにとどまった。

ツイッターでは「報道の偏りを訴えられた途端に...」

   テレビ朝日では、7月28日の「羽鳥慎一 モーニングショー」でも、「東京を魅力的な街にするための目玉政策は?」という質問状を18人に送ったとして、その回答を紹介。期限までに返答がなかったという山中氏、立花氏、望月氏、内藤氏以外の14人の主張を、20文字程度にまとめてテロップで映した。18人に要した報道時間は約1分50秒だった。

   これまで、都知事選候補者有志が会見で訴えたように、18人の主張を民放各局で伝える時間は限られていた。要望書がきっかけになったかは定かでないが、要望書送付翌日の27日以降、集中的に各局で18人について報じる時間が目立ったため、ツイッターでは同日から

「テレビに出るの初めて見たかも」
「急にTVで泡沫と言われていた候補者方の報道を始める」
「報道の偏りを訴えられた途端に泡沫候補が民放テレビに映り始めた。やっぱBPO案件にするのって効くんだな」
「泡沫候補もテレビが扱い始めた。写真、文字より映像、動くとその人がすごく分かりますね。意見、論点がほんとにさまざま。三人ばかりやるのはやはり、アンフェアな気がしますよ」

といった声が上がっている。