J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

食物アレルギーは早期摂取で予防 怖いピーナッツ何歳から食べさせる

   子どもの食物アレルギーの中で最も起こりやすいピーナッツと卵アレルギー。早い段階で食べさせることを控えるよう医師からアドバイスされるママが多いが、最近、生後4か月から食べさせると予防できるという研究が相次いでいる。

   専門医にとってもこれまでの常識を覆す「驚きの結果」で、世界のアレルギー関連学会も2015年に指導方針を転換、「生後4か月から食べることを推奨する」という共同声明を発表した。だが、声明は医師向けで、まだ一般には浸透していない。ママたちはどう食べさせたらよいのだろうか。

  • 早くから食べた方がアレルギーになりにくい
    早くから食べた方がアレルギーになりにくい
  • 早くから食べた方がアレルギーになりにくい

ピーナッツを早くから食べるとアレルギーが70%減

   「ピーナッツと卵は生後4か月から食べさせるべきだ」という研究を発表したのは、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのチーム。米国医師会誌「JAMA」(電子版)の2016年9月20日号に発表した。英国食品基準庁の依頼で行なわれ、過去の食物アレルギーに関する論文146本を分析、延べ20万人を超える子どもを対象にした最大規模の研究だ。

   掲載された論文によると、次のことが明らかになった。

(1)卵は生後4~6か月から食べ始めると、食べない子どもに比べ卵アレルギーになるリスクが約44%減る。また、ピーナッツは生後4~11か月から食べ始めると、ピーナッツアレルギーになるリスクが約71%減る。

(2)ただし、早い段階での摂取による予防効果は、卵とピーナッツにみられたが、牛乳や魚介類、小麦、ナッツ類(注:ピーナッツは豆で、種子や実であるナッツ類とは異なる)については同様の効果はみられなかった。

   食物アレルギーは、体の免疫が食品の成分に過剰に反応することによって起こる。食品によって幼児の免疫対応の発達具合が異なるからとみられるが、論文ではなぜこうした結果になったのか、因果関係を説明していない。

   研究チームのロバート・ボイル博士は、同大学のニュースリリースの中でこうコメントしている。

「これまで私たちは、これらの食品は早い段階で幼児に与えることを親に勧めてきませんでした。しかし、卵とピーナッツを早く食べ始めると、小児期に最も起こりやすい卵とピーナッツのアレルギーを予防する可能性があります。ただし、すでに湿疹などのアレルギー反応が出ている場合は、医師と相談すべきです。また、ピーナッツは粒のまま与えると窒息の恐れがあるため、ピーナッツバターなど滑らかなもので食べさせてください」

日本では「これからの研究課題」と慎重姿勢

   実は、同様の研究が2015年2月26日付の米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(電子版)にも発表されている。研究をまとめたのは英国ロンドン大学。論文によると、研究チームは、幼児の時からピーナッツを食べる習慣があるイスラエルのユダヤ人の子どもが、そういう習慣がない英国のユダヤ人の子どもより、ピーナッツアレルギーになる確率が約10分の1であることに注目、次の方法でアレルギーについて調べた。

(1)すでに湿疹などを起こし、今後ピーナッツアレルギーになる可能性が高いが、まだ発症していない生後4~11か月の乳児640人を対象に、ピーナッツを食べさせるグループと、食べさせないグループの2つに分けた。

(2)そして、5歳になった時点でピーナッツアレルギーの有無を比較した。すると、早い時期に食べた子は食べなかった子に比べ、アレルギーの発症リスクが約80%低かった。早くからピーナッツに慣れさせておくといいわけだ。

   この論文は、世界の専門医に衝撃を与えた。2015年6月10日、日本アレルギー学会など世界のアレルギー関連学会10団体が緊急の共同声明を発表、「生後4~11か月の早い時期にピーナッツを食べ始めることを推奨する」という暫定的な手引書を紹介した。ただし、日本アレルギー学会はこの声明文の翻訳の注釈(2015年6月10日付)の中で、「アトピー性皮膚炎がある場合は......ピーナッツアレルギーの発症リスクが高まるとの報告もある」として、「我が国で離乳早期にピーナッツを積極的に摂取すべきかどうかは、これからの研究課題」と付記し、まだ慎重な姿勢だ。

心配なものを食べさせるなら、平日の午前中に

   これでは、ママさんたちはどうしたらよいか、迷ってしまう。2016年8月22日付朝日新聞デジタル「離乳食 遅らせるとアレルギーにならない?」の中で、ママさん小児科医の森戸やすみさんが、こうした最新研究の結果もふまえ、こうアドバイスしている(要約抜粋)。

「実は、離乳食の開始を遅らせても、特定の食物を除去しても、食物アレルギーの発症を防げないことはわかっています。『離乳食を始める前に、心配だからアレルギーの検査をしてください』という保護者の方が来ますが、その必要はありません。理論上、どんな食材でもアレルギーになる可能性があります」
「アレルギーが心配なものを食べさせるなら、平日の午前中にしましょう。何かあったら小児科にかかることができます。量はまず一口から。食物アレルギーは通常、1~2時間で症状が出ます。何もなければ徐々に増やしていきます。親御さんが食べているものなら何でもあげてみましょう。一緒に食べられたら楽しいし、成長発達のために子どもは幅広く、多彩なものを食べなくてはいけません」