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「家系ラーメンは究極の風邪薬」 珍説か真実か、体張って「証明」

   「家系ラーメンは究極の風邪薬だ」とテレビ番組で紹介された。医師も根拠を示しながら同意していたので、単なる都市伝説ではないのかもしれない。

   「こんな特効薬があったとは」。風邪がイマイチ治り切らずにいた記者は、喜々としてこの説に飛びついた。

  • 豚骨と鶏油ベースのスープに、ホウレンソウとノリがトッピングされた家系ラーメン
    豚骨と鶏油ベースのスープに、ホウレンソウとノリがトッピングされた家系ラーメン
  • 豚骨と鶏油ベースのスープに、ホウレンソウとノリがトッピングされた家系ラーメン

内科医「ひき始めには特に良いのではないか」

   家系ラーメンの効用を放送したのは2016年11月8日の「雨上がりの『Aさんの話』」(ABCテレビ)だ。年間500杯のラーメンを食べる男性は、「風邪を治すラーメン」として家系を猛プッシュする。それだけではない。大阪府内科医会副会長の内科医・泉岡利於(としお)氏も「ひき始めには特に良いのではないかと思う。風邪の時に取り入れたい栄養素がたっぷり入っている」と話した。

   家系ラーメンの元祖は1970年代に横浜市でオープンし、今なお人気の「吉村家」とされる。そこで修行し、味を受け継いだ職人たちが出したラーメン店に「○○家」という名前が多いため、「家系」と総称される。豚骨と鶏油(チーユ)ベースのスープに、ホウレンソウとノリのトッピング、お好みで薬味のショウガやニンニクを載せられるのが特徴だ。番組での泉岡医師の話によると、煮込んだ豚骨と鶏油には炎症を抑えるアミノ酸のグリシンやプロピンが含まれ、トッピングのホウレンソウには白血球のはたらきを活発にするビタミンCとベータカロテン、ノリには粘膜を強くするビタミンA、さらに薬味のショウガは体を芯から温め、ニンニクは殺菌効果がある。

   だが、風邪で弱っている体では脂っこいラーメンを消化できないのではないか。この点、家系ラーメンは「麺の硬さ」「味の濃さ」「脂の量」をそれぞれ3段階で調整できるので、麺は柔らかく、薄味で、脂少なめにすれば、風邪で弱った胃腸にも優しいだろうと番組は勧めた。

   鼻づまりと喉の若干の痛みがすっきりせず、治りかけの状態がぐずぐずと続いていた筆者は11日、東京都内の家系ラーメン店を訪れた。麺柔らかめ、味薄め、脂少なめで注文する。無料と言うので大盛りにした。

   待っている間、家系ラーメン一筋という店長にカウンター越しに尋ねた。「風邪に効くという話を耳にしたことはありますか」。「え?」と一瞬戸惑ってから、苦笑いしつつ答えてくれた。

「う~ん、無いですねえ。自分としてはそうは思いません」

鼻づまりが解消された...のか?

   注文したラーメンが来た。白濁のスープはほんのり甘味を感じる。とろみがあって舌に絡まるが、「薄味」「脂少なめ」だからか後味はすっきりだ。脂がねっとりと口の中に残る感覚はない。そんなに喉も乾かない。3割ほど頂いてから、テーブル上のショウガとニンニクをやや多めに載せた。

   スープもほぼ飲み干して店を後にした。この日の最高気温は11度と手がかじかむ寒さだったが、体が温まって思わずコートのボタンを外した。ラーメンが体温を上げたのだろうか。しかし5分と経たずに寒くなった。暖房が効いていただけかもしれない。

   鼻づまりが解消された印象もあるが、栄養素はそんなに短時間で体内に吸収されないはず。入浴すると鼻の通りが良くなることがあるが、同じように湯気が鼻に入ってきただけだった気もする。

   大盛りにしたせいか若干胃が苦しくなったが、1時間後には落ち着いた。激しい胃もたれもなく、スムーズに消化されている気がする。ただ食後6時間経過した時点で、体調に大きな変化は現れなかった。即効性はなかったようだが、あとは風邪の治りを待つばかりである。

   家系ラーメンが風邪に効くという説は、ツイッター上ではかねてから言われており

「風邪ひいた時はおかゆなんかより家系ラーメンの方がよっぽど効くんだよなあ」

といった投稿が数多く見つかる。2010年2月1日の時点で「風邪気味なのでにんにくたっぷり入れた家系ラーメン食べて帰ってすぐねるです」というツイートがある。一方で

「家系ラーメンが風邪に効くっていう記事読んでから風邪の前兆あるたびに必ずラーメン食ってるんだけど、それで風邪が治ったこと一度もありません」

という声も少なからずある。