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日本版「ブラックフライデー」の賭け 「単なる在庫処分」越えられるのか

   米国でクリスマス商戦へ向けた大規模な安売りセールとして知られる「ブラックフライデー」が2016年11月25日、日本で始まった。

   流通大手のイオンは、初めて「ブラックフライデー」に参戦。カジュアル衣料のユニクロや米衣料小売りのGAPなども安売りを仕掛ける。

  • 消費喚起に「ブラックフライデー」 日本でも定着するか!(画像は、イオン「ブラックフライデー」のホームページ)
    消費喚起に「ブラックフライデー」 日本でも定着するか!(画像は、イオン「ブラックフライデー」のホームページ)
  • 消費喚起に「ブラックフライデー」 日本でも定着するか!(画像は、イオン「ブラックフライデー」のホームページ)

クリスマス前の安売り商戦

   米国の「ブラックフライデー」は、祝日であるサンクスギビングデー(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日を指す。小売業者が一斉に「安売り」をうたって宣伝。消費者の購買意欲を刺激する一大イベントであり、クリスマス商戦の本格的な幕開けを意味する。

   「店によっては寒い夜中から人々が列をなし、深夜のオープンとともに人々が目当ての商品を目指して殺到し、ショッピングカートを一杯にするという光景がニュースで流れます」と、大和総研・経済調査部のシニアエコノミスト、近藤智也氏はいう。

   「ブラックフライデー」は、2015年には韓国が政府主導で取り入れた。日本でも、政府が消費喚起策の一つとして期待を寄せていて、石原伸晃経済財政・再生相は2016年11月25日の閣議後の記者会見で、「ブラックフライデー」が国内で広がりつつあることに、「大型セールが経済の好循環を加速させる」と指摘。「産業界や地域を巻き込んだ(消費喚起を促す)施策で、もう一押しすることが必要だ」と話した。

   そうしたなか、流通大手のイオンが「ブラックフライデー」の安売りセールに初めて乗り出した。11月25日の金曜日から27日までの3日間、全国の総合スーパー(GMS)や140か店のイオンモール、ショッピングセンター内の店舗など2万500か店で、大規模な安売りセールを実施する。

   セールの対象商品は「地域ごと、店舗ごとで異なります。また、値引き率も店舗によります」と、イオンリテールは話すが、クリスマスのプレゼント需要を見込んだ家庭用ゲーム機や年末年始の準備に向けた掃除機などの家電製品、防寒衣料などが対象になっていて、なかにはプライベートブランドの羽毛布団が通常の1万9800円が半額の9900円になるなど、「目玉商品」も用意した。

   また、イオンモールには高級ブランドのCOACHのバッグが9600円、高級チョコレートのGODIVAの特別セットが3000円、讃岐うどんチェーン「はなまる」のかけうどん96円(いずれも税込み)などを用意。「たとえば、アボガドのつかみ取りなどのイベントを開催している店舗もあります。楽しく買い物してもらえることを重視しています」と話し、「お祭り」ムードで盛り上げている。

「土日が明ければブラックマンデー」

   「ブラックフライデー」に参戦している小売業者はイオンのほか、おもちゃの「トイザらス」やカジュアル衣料のユニクロ、米衣料大手のGAPなどがある。日本でも、ようやく広がってきたというところだろう。

   ユニクロは毎年恒例の「創業感謝祭」セールを、2016年は「ブラックフライデー」を意識して7日間に延長し、11月23~29日に開催。カシミヤのセーターやダウンジャケット、長袖Tシャツなどを安く売り出した。25日から3日間のセールを全国約500か店で実施するGAPでは、約1万円のセーターを100円とするなど、驚異的な値引き価格で販売した。

   こうした「ブラックフライデー」に、インターネットには、

「消費者にはうれしいけれど、これがデフレだよwww」
「何が楽しいのか。単なる在庫処分だろ」
「イオン行ったら靴下3足税込み300円だった。100均より安いじゃんw」
「で、土日が明ければブラックマンデーwww」
「カッコだけ米国マネてもなぁ。本当にお得なモノってあるの?」

などと、どことなく冷ややかだ。

   果たして、「ブラックフライデー」は日本で定着し、小売業者らの売り上げに貢献するのだろうか――。

   前出の大和総研の近藤智也氏は、「日本の小売り商戦をみると、正月の福袋を求めてデパートに長い行列ができたり、お中元にお歳暮、父の日・母の日、そしてクリスマスやバレンタイン、ハロウィン(最近では恵方巻きやイースターも)と、すでに多くの冠がついたイベントが存在します。それらに『ブラックフライデー』が加わるだけの話かもしれませんが、これに政府がさまざまな後押しや支援を行うほどのことなのか、疑問が残ります。また、イベントが大きくなればなるほど、買い控え、あるいはその反動減は無視できなくなります」と指摘。トータルの消費支出が増えるとは考えにくいとみている。

   米国でも近年は、インターネット通販での売り上げが伸びる一方で、「過剰な競争は小売店員の労働環境の悪化を招いている面もあり、『サンクスギビングは家族で集まって静かにすごすという本来の姿に戻るべき』と、あえて深夜オープンせずにちゃんと休む小売メーカーもみられます」ともいう。

   参戦した小売業者の「成果」が気になるところだ。