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スルメイカが採れない 漁獲6割減 価格は2倍に

   スルメイカの不漁が深刻だ。それに伴い、価格も2015年と比べて2倍程度にハネ上がっている。

   水産業に関する研究・調査・分析を行う水産研究・教育機構は2016年12月1~2日に資源評価会議を開き、全国各地の水産研究所がスルメイカの資源状況などを報告した。

  • 価格高騰のスルメイカ、その原因は…
    価格高騰のスルメイカ、その原因は…
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八戸では12杯で4000円

   スルメイカは、国内で獲れるイカの中では最も漁獲量が多く、刺身や一夜干し、また塩辛や乾物などの加工品として、よく食べられている。

   多くのスルメイカの水揚げされる青森県の八戸みなと漁業協同組合によると、2016年12月1日の近海スルメイカの卸売価格は12杯入りで高値が4000円、安値でも3500円だった。通常は2000~2500円程度で取引されていて、1年前の同日の高値が2100円、安値が2000円だったから、ほぼ2倍に高騰したことになる。

   太平洋側の不漁を受けて、日本海で漁獲された加工用などの在庫として冷凍保存しているスルメイカの値段もまた上昇している。

   「とにかく、今年の太平洋のスルメイカはまったくダメです」と、八戸みなと漁協の担当者は嘆く。

   スルメイカは産まれた時期によって、秋期発生系群(9~11月、主に日本海が漁場)、冬期発生系群(12~3月、太平洋側~オホーツク海)、夏期発生系群(4~8月、九州~本州・太平洋沿岸)の3つのグループに分けられる。1~2月にかけて東シナ海で生まれるスルメイカは、春から夏にかけて太平洋側を北上、秋以降は産卵のために日本海を南下する。

   春から夏にかけてはやや小ぶりで、「バライカ」とも呼ばれる。「夏イカ」といわれるように、スルメイカは夏季に漁獲量が最も多く「旬」ともいわれるが、これらは夏季発生系群のイカにあたるというわけだ。

   水産研究・教育機構の日本海区水産研究所は、「現在、不漁といわれるスルメイカは、主に夏季発生系群のものになります」という。同研究所によると、「(秋季発生系群は)減ってはいますが、前年と比べてやや減っているといった程度にとどまっています」と話す。

   一方、北海道区水産研究所によると、夏季発生系群のスルメイカの漁獲量は2016年4~9月期に約1万5000トンで、前年同期と比べると、じつに6割減った。過去5年の平均と比べても、「半減しています」と深刻な状況だ。

産卵期の東シナ海、異常な低水温

   不漁の原因について、北海道区水産研究所は、「スルメイカが生まれる東シナ海の海水温が異常に低いことがあります」と話す。スルメイカは12~3月に産卵期を迎える。幼生は1ミリメートルほど。適正な海水温は18~23度ほどだが、この時期の東シナ海の海水温が「2015年はかなり低かった。そのため、ふ化したスルメイカが死んでしまった可能性が高い」とみている。

   また、秋季発生系群のスルメイカについては、「日本海側でも、夏の海水温の上昇は著しく、暑すぎて死んでしまったことが考えられます」と、日本海区水産研究所は話す。

   一般に、「海水温は陸より1か月遅れで暑くなります。9月の海水温が高かったことが影響しているのではないか」という。ただ、資源評価会議でも「精査してみないとわからない」とされ、断定できないとしている。

   じつは、スルメイカは2006年にも記録的な不漁に見舞われた。このときも夏季発生系群の落ち込みがひどかったが、今回と同様に「産卵期に東シナ海の海水温が低かったことが原因でした」と、北海道区水産研究所はいう。

   「半減」の事態が続くとなると、鮮魚も加工食品も消費者の口に入らなくなるばかりか、ますます価格が高騰する可能性がある。料理店やレストランなどでも、日本人がよく食べる食材だけに、打撃は小さくない。

   このまま不漁が続くのだろうか――。2016年12月5日のJ‐CASTニュースの取材に、北海道区水産研究所は「(2017年については、産卵期が)2~3か月先のことなので、そのときにならないと...」と、言葉を濁す。

   専門家ですら、予測が立てられない状況のようだ。