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稀勢の里フィーバーはモンゴル支配時代の反動ブーム!

   新横綱・稀勢の里が2017年1月27日、明治神宮で初の土俵入りを披露。会場には1万8000人のファンが詰めかけた。

   モンゴル勢が支配してきた大相撲に対する反動のブームである。

  • 稀勢の里フィーバーはシンプルで半端ではない
    稀勢の里フィーバーはシンプルで半端ではない
  • 稀勢の里フィーバーはシンプルで半端ではない

モンゴル横綱に優る点は?「体重かな」

「いよっ、ニッポン一!」

   大きな体の雲竜型。立派である。力強い土俵入りにファンからそんな声が飛んだ。そして拍手。

   待望の日本出身横綱。忘れかけていたシーンの復活に協会関係者も感慨深そうだった。太刀持ちは弟弟子の高安、露払いには二所ノ関一門の松鳳山が務めた。

   いうまでもなく長い間、モンゴル出身の力士が主役だった。象徴的なのが初場所までの3横綱(白鵬、日馬富士、鶴竜)である。3月の大阪場所から稀勢の里が横綱として挑む。

   横綱昇進が決まったとき、メディアからモンゴル横綱トリオに優るところは、と聞かれてこう答えた。

「体重かな」

   まじめ男の見事なユーモアだった。

   武器はその大きな重い体である。相手を捕まえてしまえば万全の寄りで仕留める安定感を持つ。

昇進口上のシンプルさは高校野球にも波及か

   稀勢の里は初優勝の後、生い立ちからの人生がメディアに取り上げられ、たちまち全国に知られるようになった。19年ぶりの日本出身横綱誕生とともにフィーバー状態だった。

   多くの相撲ファンが素朴な人柄と思ったのは昇進のときの口上だった。

「横綱の名に恥じぬよう精進いたします」

   シンプルである、と好評だった。子供でも分かる、との声が上がった。確かに、これまで四文字熟語が多く、ファンは辞書で意味を調べるほどだった。そのきっかけは1996年の貴乃花。「不撓不屈」(ふとうふくつ)「不惜身命」(ふしゃくしんみょう)を使った。

   以後、若乃花「堅忍不抜」(けんにんふばつ)白鵬「精神一到」、日馬富士「全身全霊」、鶴竜は「一生懸命」。

   高校野球の甲子園大会で開会式に行う選手宣誓は今、長い言葉を使う。かつてはこうだった。

「われわれ選手一同は正々堂々と戦うことを誓います」

   稀勢の里の口上が高校野球に波及するかもしれない。半端ではない騒ぎはあちこちにシンプルさを呼び戻すような気がする。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)