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「学費はアルバイトで賄え」 67歳「奨学金批判」に大ブーイング

   「苦学した私から見るといい時代になった」――。67歳の男性が新聞投書で「給付型奨学金」を批判し、話題を呼んでいる。

   高校時代のアルバイトで、大学の入学費を捻出したという男性。奨学金で学費を賄おうとする現代の大学生に、「健康であればアルバイトで賄える」とキツい一言を投げかけた。

   しかし、ネットでは「経緯をわかっていない」「若い方のことを考えなさすぎ」と大ブーイングが巻き起こっている。

  • もう50年前とは違う?(写真は日本学生支援機構の市ヶ谷事務所。Wikimedia Commonsより)
    もう50年前とは違う?(写真は日本学生支援機構の市ヶ谷事務所。Wikimedia Commonsより)
  • もう50年前とは違う?(写真は日本学生支援機構の市ヶ谷事務所。Wikimedia Commonsより)

「苦学した私から見るといい時代になった」

   投書は、17年2月5日付けの毎日新聞朝刊「オピニオン欄」に掲載された。タイトルは「自力で学費勝ち取る気概も」。

   導入部のテーマは、1月31日に閣議決定された日本学生支援機構法改正案だ。原則「貸与型」しかなかった同機構の奨学金に「給付型」を加えるもので、2017年度予算案に基金の創設も盛り込まれた。18年度の本格実施へ向け、4月1日から一部の下宿生らを対象に先行実施される。支給基準は現行の貸与型より厳しいが、返済は不要だ。

   男性はこの法改正について、「苦学した私から見るといい時代になった」と評価する一方、「健康であれば(学費は)アルバイトで賄える」と苦言を呈した。

   高校時代、大学へ進学するため、「近所の子どもを集め学習塾を始め、休日には土木工事のアルバイトを続け」貯蓄に励んだ。その甲斐あって、「入学費用等」はすべて用意できたという。

   男性は入学後もアルバイトを続け、「アルバイトを通じて実にたくさんのことを学んだ」と振り返る。そして、「古き良き時代だったのかもしれぬが、私の周囲にも親を当てにせず学んだ人は多い。自身の力で学んでいるそんな学生の力強い声を聞きたい」と自立の必要性を説いた。人生の先輩が大学生へ送る、厳しいエールだ。

   しかし、この投書がツイッターに紹介されると「炎上」状態に。

「若い方のことを考えなさすぎ」
「経緯をわかっていない」
「年代考慮いれろ」

と反発の声が相次いだ。

一般物価よりも速いペースで授業料が上昇

   「経緯を分かっていない」という批判には、投書の主と現在の大学生が置かれている環境の違いがあるようだ。投書した男性の大学入学時とほぼ重なる50年前と現在を比較してみる。

   総務省の小売物価統計調査によると、1967年の私立大授業料はおよそ7万4100円/年(6175円/月)、国立大授業料はおよそ1万2000円/年(1000円/月)だ。

   また、2016年の物価は1967年のおよそ3.7倍。あくまで参考値だが、この授業料を16年の物価に換算すると、私立大授業料でおよそ27万3800円/年(2万2800円/月)、国立大授業料はおよそ4万4400円/年(3700円/月)となる。

   しかし、小売物価統計調査によると、2017年1月時点の大学授業料(東京都区部)は、私立大文系で75万122円/年、理系は110万963円/年、国立大授業料は53万5800円/年、理系は53万5800円/年と、大きく上振れしている。

   17年1月時点の入学費(東京都区部)は、私立大と国立大で22万円から28万円かかり、授業料と合わせて入学時に支払う初年度納付金は、100万円を超えるケースも珍しくない。大学の授業料が一般の物価よりも非常に速いペースで上昇し、50年前に比べれば、他に比べて極めて高い負担になっている。

   一方、学部卒の大卒初任給は1967年の2万6200円が2016年には20万3000円と、10倍近くに上がっているのも事実だ。

   とはいえ、今の学生からすれば、「アルバイトすれば学費は賄える」という先輩の言葉は、「古き良き時代」を生きた人たちの言葉に聞こえてくるようで、こうした世代間の認識のギャップがツイッター上のブーイングにつながったようだ。