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「がんが防げる」「アトピーが緩和される」 ヤフオクで薬機法違反の表示が溢れていた

   「肝臓がんを防ぐ」「脱毛が改善される」「アトピーが緩和される」――健康食品が医薬品のような効果効能をうたうことは薬機法で禁止されている。

   実店舗や健康食品メーカーの販売サイトではまず見かけない表示が、インターネットオークションサイト「ヤフオク」で大量に存在するという調査結果が、2017年3月24~27日に開催された日本薬学会で発表された。

   J-CASTヘルスケアは調査を行った慶應義塾大学薬学部の大谷壽一教授に取材を行った。

  • ネットオークションでサプリを買うという発想はなかった(画像はヤフオクトップ画面)
    ネットオークションでサプリを買うという発想はなかった(画像はヤフオクトップ画面)
  • ネットオークションでサプリを買うという発想はなかった(画像はヤフオクトップ画面)

1か月で600件近くの違法商品が出品

   大谷教授は2014年にインターネットオークションに医薬品が出品されている事実を調査・発表していたが、同様の事態が健康食品にもあるのではないかと考え、2016年の6月から調査を開始したという。

   調査方法は薬機法上違反と判断される効果効能のキーワードを「医薬品の範囲基準ガイドブック」を参考に設定し、「ヤフオク」で検索をおこなうというもの。「育毛」「発毛」「シミ」「老化」「若返り」「便秘」「がん」など、大きく「頭髪」「皮膚」「アンチエイジング」「消化管」「がん」5つの分野から19のキーワードが設定された。

   その結果、6月13~17日の5日間だけでも明らかな薬機法違反商品が574件、表現がきわどいグレー商品も48件確認されたのだ。1か月後に実施した2回目の調査でも4日間で違反商品が594件、グレー商品が40件と、1回目とほとんど同数で継続的に出品されていることも確認された。記者が2017年4月14日に確認した際も、「アトピーの改善」や「肝機能が改善」と記載している出品者が確認されている。

   「限られたキーワードで口に入れる商品(健康食品)だけ調査しても、数日間で600件近くが確認されました。2か月続けて確認されたということは、継続的な出品がなされていると思われます。(塗るなどの)外用タイプも含めると、定期的に出品されている違反商品は1000件以上ある可能性もあります」

   さらに驚くのは、こうした違法商品を落札している人もいるという点だ。大谷教授らは違法商品の出品が9月まで継続的に行われていることを確認し、中でも悪質性の高いがんの予防効果をうたっていた商品66件をヤフオクに「違反申告」し、その後の対応をさらに10月まで確認した。しかし、ヤフオク側が削除したのは1件、出品者が取り下げたのは4件だけで、25件は落札され23件は出品され続けていたのだ。

「調査した我々も正直なところこれらの『怪しい健康食品』を落札している人がいることに衝撃を受けました。どういった人が落札しているのかは現在調査を進めている段階です」

出品者、管理者、落札者は違法性の認識を

   ヤフオク側の削除数の少なさも気になる。ヤフオクは場所を提供しているだけであり、薬機法や景品表示法上ヤフオクに責任があるわけではない。とはいえ、落札者が違法商品の表示を信じて病院などに行かず治療を受けずに病気を悪化させるなど、間接的な健康被害が起きる可能性は十分にある。もちろん直接的な健康被害もあるかもしれない。商品を販売する健康食品メーカーが標榜していない効果効能を出品者が表示し、メーカーの信用に影響することもあるだろう。

「ヤフオクのガイドラインでは医薬品の出品は禁止されていますが、健康食品は禁止されていません。ヤフオク側も健康食品だから問題はないという認識なのかもしれませんが、企業の道義的責任はあるのではないでしょうか」

   出品者は商品概要などを読む限り個人が多いようだが、一部には企業の出品を疑わせるものもある。大谷教授も「末端の小売店などが出品している可能性もあるが、特定は難しい」と話す。通常のネット販売であれば即処分されてもおかしくないが、厚生労働省や消費者庁などもネットオークションまで手が回らない状態のようだ。

「医薬品調査の際も東京都の薬務課などから問い合わせがありましたが、違法ドラッグなどの摘発で手いっぱいで、オークションまでは確認できないようです」

   ヤフオク以外にもユーザー同士が商品をやり取りする、いわゆるCtoCのインターネットサービスはいくつかある。そういった場所でも同様の事態になっているのではないかと大谷教授は危惧している。

「インターネット上のオークションやフリーマーケットなどが薬機法無法地帯となっているのであれば大きな問題です。出品者や管理者側はもちろんですが、落札者も違法性の認識が必要かもしれません」