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「猫カフェ」、経営者失踪で廃業の悲惨 店内には「汚物とゴミと猫の死骸」

   営業を停止していた鹿児島市内の猫カフェ「にゃんCafe猫之坊」の経営者が、店内に計17匹の猫を放置したまま行方をくらました問題が波紋を広げている。市では動物愛護法違反に該当する可能性があるとして、経営者の行方を探すとともに、警察への相談を進めている。

   現場を訪れて猫を保護した動物愛護団体などによれば、店内は「ゴミ屋敷」のような状況で、室内には大量の汚物が放置されていた。発見時、大部分の猫は衰弱しており、うち4匹はすでに死んでいたという。

  • 荒れた店内に猫が放置されていた(写真は清掃後、「犬猫と共生できる社会をめざす会」提供)
    荒れた店内に猫が放置されていた(写真は清掃後、「犬猫と共生できる社会をめざす会」提供)
  • 荒れた店内に猫が放置されていた(写真は清掃後、「犬猫と共生できる社会をめざす会」提供)
  • 店内は汚物だらけで、エアコンも破損している(同)
  • ガラスにも汚物のようなものが(同)

「汚物とゴミにあふれ異臭が・・・」

   放置された猫を保護しているのは、鹿児島市の動物愛護団体「犬猫と共生できる社会をめざす会」(以下、めざす会)だ。今回の問題は、同会が2017年6月28日にフェイスブックを通じて「猫之坊」に関する情報を発信したことで明らかになった。

   同団体のフェイスブック投稿では、猫を保護した際の店内の状況について、

「店舗内は汚物とゴミにあふれ異臭が漂い、ノミが大量発生していました。その中で、子猫3匹と成猫1匹がすでに亡くなっていました」

と説明。また、団体事務局の中村順子さんは6月30日のJ-CASTニュースの取材に対し、生き残った13匹も衰弱しており、一部はノミのアレルギーで毛が抜け落ち皮膚が露わになっていたと説明。続けて、

「見つかった猫は、とにかく怯えている様子で、そのケアにも時間がかかると思います」

と話していた。

   鹿児島市保健所獣疫係の担当者も取材に、「猫之坊」にテナントを貸していた大家から聞いた話だとして、「店内はまさにゴミ屋敷のような状況。汚物の量もかなり多かったことから、猫はそれなりの期間、放置され続けていたのではないか」と説明した。

   ただ、残っていたゴミの内訳や猫の大部分が生き残っていた点などから、市の担当者は、

「経営者はゴミ屋敷のようになった店内に寝泊まりし、そこで最近まで猫の世話を続けていた可能性がある」

とも推測していた。ただ、テナントの大家をはじめ鹿児島市側は経営者と連絡が取れない状況が続いており、いつ経営者が店を空けたのかは分からないという。

「あってはならないことが起きてしまった」

   「猫之坊」は2013年3月に鹿児島市側へ営業申請し、営利目的で動物を展示する際に必要な「第一種動物取扱業」に登録。13年4月から営業を開始し、店の公式SNSを通じて飼育している猫の情報などを積極的に発信していたが、その更新は15年7月でパタっと止まっていた。

   いったい、「猫之坊」の営業はいつから停止していたのか。市の担当者に聞くと、

「室内の状況を見ると、かなり前から営業は止めていたようだ」

としつつも、正確にいつから廃業していたのかは「不明」としていた。市では現在、経営者の行方を探すとともに、動物愛護法違反に該当する可能性があるとして警察に相談している段階だという。

   なお、猫を保護した「めざす会」では、17年6月28日からフェイスブックを通じて寄付や物資の支援を募るとともに、猫の「里親」探しを始めている。ただ、猫のアレルギー検査や体調回復に時間がかかる見通しで、さらに13匹の中には不妊手術を受けていない猫もいるため、その対応なども含めると1~2か月近くは引き渡しができない状況だという。

   今回の騒動について、先述した「めざす会」事務局の中村さんは取材に対し、

「あってはならないことが起きてしまった、という感想です。経営者に非があるのは確かですが、行政側の猫カフェに関する管理が行き届いていれば、防ぐことができた問題ではないかと考えています」

と訴える。

「営業停止」の段階で気付けなかったのか

   そもそも鹿児島市では、猫カフェやペットショップなど「第一種動物取扱業」の店舗については、定期的な営業状況の検査を一切行っていない。登録申請時の審査と年に一度の参加が義務付けられている講習会を除けば、運営は「基本的に事業者にお任せしている形」(保健所担当者)だという。

中村さんはこうした管理体制について、

「営業の許可を出すからには、自治体側にも定期的にチェックを行ってほしいと思います。仮にそうした仕組みがあれば、今回の件も『猫之坊』が営業を停止した時点で何かしらの対応ができていたはずです」

と問題提起。ただ一方で、軽い気持ちで猫カフェを新たに開業する経営者も増えて生きているとして、

「生き物の命を預かる業種だけに、経営状況が悪くなったらすぐ廃業するという選択はとれません。しかも、猫は繁殖しやすい動物ということもあり、開業当初よりも多くの猫を抱えるケースがほとんどです。そうした『責任』を取る覚悟がないのに、気軽に動物を扱うことは辞めて欲しいです」

とも指摘していた。