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振り込め詐欺、容疑者35人は福建省に 「日中協力」で大規模拘束

   振り込め詐欺の捜査をめぐり、意外な形で「日中協力」の成果が出た。中国・福建省で、中国当局が日本人35人の身柄をいっせいに拘束したのだ。日本側が振り込め詐欺の容疑者について中国側に捜査協力を要請し、中国側が容疑者の居場所を特定、拘束につながった。

   日中間に犯罪人引渡し条約は結ばれておらず、この35人の身柄が今後どうなるかは明らかではない。ただ、過去には中国で日本人が詐欺容疑で拘束され、国外退去処分後に警視庁が逮捕したケースもある。

  • 菅義偉官房長官が日本人35人拘束事案について言及した(2017年6月撮影)
    菅義偉官房長官が日本人35人拘束事案について言及した(2017年6月撮影)
  • 菅義偉官房長官が日本人35人拘束事案について言及した(2017年6月撮影)

警察庁が中国公安部に「被疑者の所在確認等の捜査協力」要請

   35人の拘束は、日中両政府が相次いで記者会見で明らかにした。35人は、「かけ子」と呼ばれる、日本に電話をかけて金銭をだまし取る役割を担っていたとみられる。7~8年ほど前から「かけ子」の拠点が中国に移っていることが指摘されてきたが、これほど大規模な拘束劇は珍しい。中国外務省の耿爽報道官が7月12日の記者会見で

「6月30日、日本人35人が電気通信詐欺に関与した容疑で、中国警察に拘束された。中国側は日中領事協定に基づいて領事機関に通報した」

と発言。翌7月13日夕方には、菅義偉官房長官が記者会見で

「警察庁から中国公安部に対して、インターネットバンキングの不正送金事案の被疑者の所在確認等の捜査協力を要請していた。中国側が独自に捜査によって振り込め詐欺を行っている可能性のある犯罪グループを特定し、中国の国内法に基づいて所在確認を要請していた被疑者を含む35人の日本人を拘束した」

などと経緯を明らかにした。

身柄要求するかは「中国側で捜査中なので、コメントは控えたい」

   今後、日本側が中国法に基づく代理処罰を中国側に求める可能性もあるが、過去には中国で振り込め詐欺を行っていた人物の身柄を中国側が拘束し、日本に引き渡された事例もある。例えば2010年には、福建省で別の詐欺事件を捜査していた中国の捜査当局が日本人5人を拘束。5人は後に国外退去処分になり、帰国したところを警視庁が振り込め詐欺の容疑で逮捕した。当時の報道によると、中国で振り込め詐欺を行った容疑で日本人の犯行グループが現地で拘束され、逮捕された初めてのケースだとされている。

   今後、日本政府として中国側に35人の身柄を要求するかどうかについては、

「現在中国側で捜査中なので、コメントは控えたい」

と述べるにとどめた。

7年間中国に逃亡していた男も逮捕

   菅氏は、

「警察庁と中国公安部の間では定期的に協議を開催して連携を図っており、引き続き日中間で捜査協力を行っていく」

とも述べている。実際、振り込め詐欺のケース以外に、中国側の協力で日本人容疑者が逮捕されている。

   逮捕されたのは、中国に約7年間にわたって逃亡していた元暴力団幹部の60代の男。男は、2010年9月、国際郵便で覚せい剤を台湾から国内に密輸したとされる事件への関与が取りざたされ、直後に中国に逃亡。日本側が中国側に捜査協力を要請していた。現地当局が17年6月に中国・青島で男を発見し、不法残留で身柄を拘束した。男は国外退去処分を受けて日本側に引き渡され、警視庁が日本に移送中の機内で覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの疑いで逮捕している。