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日韓合意さらに揺らぐ 文在寅政権、「慰安婦『記念日』『研究所』『歴史館』」次々打ち出す

   慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決」することを確認するとしていた2015年12月末の日韓の合意が、さらに怪しくなってきた。選挙期間中に合意の「再交渉」を掲げて当選した文在寅(ムン・ジェイン)大統領政権が、事実上の施政方針を発表。その中で慰安婦の「記念日」制定や、「研究所」「歴史館」設置を掲げたからだ。

   合意では、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」し「今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」とされてきた。今回の方針はこれに背きかねない内容だ。

  • 「慰安婦像」に加えて「記念日」「研究所」「歴史館」の計画も浮上(2017年1月撮影)
    「慰安婦像」に加えて「記念日」「研究所」「歴史館」の計画も浮上(2017年1月撮影)
  • 「慰安婦像」に加えて「記念日」「研究所」「歴史館」の計画も浮上(2017年1月撮影)

慰安婦が初めて名乗り出た8月14日が「記念日」に?

   「記念日」制定の方針が盛り込まれたのは、施政方針にあたる「国政運営5か年計画」。文大統領の諮問機関で、朴槿恵(パク・クネ)前政権からの引継ぎ役を担う「国政企画諮問委員会」が2017年7月19日に発表した。この「5か年計画」には、合意の「再交渉」こそ盛り込まれていないものの、女性家族省の「『慰安婦』被害者記念事業」として、(1)2018年に、元慰安婦の「記念日」を指定(2)19年に元慰安婦の研究所(仮称)を設置・運営(2)2020年に元慰安婦「歴史館」の建設を通じて調査・研究事業を体系化する、ことを掲げている。

   ただ、「5か年計画」では、記念日や研究所、歴史館の詳しい内容は明らかではない。しかし、「国政企画諮問委員会」が7月10日に発表した男女平等社会の実現のための政策では、8月14日を記念日にするとされている。8月14日は、1991年に金学順(キム・ハクスン)さん(当時67、1997年死去)が初めて元慰安婦として名乗り出た日だ。聯合ニュースは、「2015年の韓日慰安婦合意以後縮小された慰安婦被害者関連の記念事業が再び拡大する見通し」だと報じている。7月10日に発表された内容が「5か年計画」に引き継がれたとみられる。

   慰安婦問題をめぐっては、韓国の民間団体がユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶(旧・記憶遺産)」に元慰安婦らの証言などが登録されるよう活動しており、鄭鉉栢(チョンヒョンベク)女性家族相が政府予算を拠出し支援する考えを表明。これに対して岸田文雄外相は7月11日の記者会見で、「加盟国間の友好と相互理解の促進というユネスコ設立の本来の趣旨と目的に反しかねない」として「改めて強く申入れた」ことを明らかにした。

「被害者と国民が同意することができる解決策を導き出す」

   「5か年計画」の外務省の政策では、慰安婦問題について

「被害者と国民が同意することができる解決策を導き出す」

としている。文政権は日本側に対して「合意内容に国民の理解が得られていない」などと繰り返し日本側に伝えており、再交渉に含みを持たせている。こういった立場が反映されたようだ。

   慰安婦問題以外の日韓関係では、竹島(韓国名・独島)問題や歴史問題については「断固対応する」としながら、「未来志向の大人の協力パートナー関係の発展」も目指す。「過去の歴史と、北朝鮮の核及びミサイル対応、両国間の実質協力とは分離して対応」するとしている。

   菅義偉官房長官は7月19日午後の記者会見で、「5か年計画」の内容について「承知をしていない」としながら、

「いずれにしろ、この慰安婦問題は日韓両国で合意について同意しているわけですから、それに基づいてお互いが実施していくことがきわめて大事」

などと述べ、従来の政府見解を繰り返した。