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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 
加計学園問題は「絶好の教材」 問われるメディア・リテラシー

   加計学園問題の報道を見ていると、一部マスコミ(朝日、毎日、東京)の報道はかなり偏っているといわざるを得ない(たとえば産経ネット版記事「朝日と毎日は『ゆがめられた行政が正された』の加戸守行前愛媛県知事発言取り上げず」2017年7月12日配信)。テレビのワイドショーは、それをさらに増幅している。

   そこで多様な見方をするために、ネット上で有益と思うものを紹介してみよう。筆者が書いたものも含まれるのはご容赦いただきたい。

  • 加計学園問題をめぐり国会では閉会中審査も行われた
    加計学園問題をめぐり国会では閉会中審査も行われた
  • 加計学園問題をめぐり国会では閉会中審査も行われた

一部マスコミが報じない証言

   問題の本質であるが、発端は、大学学部新設の認可を受けるために申請が必要であるが、その申請さえさせないという文科省告示である。これは、「『安倍降ろし』で石破総理が誕生すれば、日本経済は大失速間違いナシ」(7月10日、現代ビジネス)を参照。

   まず、当事者の特区関係者の意見を押さえておこう。6月13日に会見が行われた(官邸サイト「国家戦略特区に関する記者ブリーフィング」<要旨>)が、ほとんど報道されていない。

   一部マスコミでは、前川喜平・前文科事務次官の記者会見や国会発言ばかりが報道されるが、これへの有力な反論として、加戸守行・前愛媛県知事の国会発言がある。これは、7月10日の国会閉会中審査の青山繁晴議員の質問と、それへの答弁を見ればいい。そこでは前川氏も一緒に答弁しており、対比ができる(参議院インターネット審議中継<1>)。

   24日の国会質疑では、小野寺五典議員の質疑が参考になる(衆議院インターネット審議中継)。また、浅田均議員の質疑もいい(参議院インターネット審議中継<2>)。

   これらは、テレビのワイドショーより格段に議論の質が高いので、一見の価値がある。

前川発言だけの情報だけでは全体が見えにくい

   これらの国会証言があったにもかかわらず、一部メディアでは、加戸前愛媛県知事らの意見はまたもや無視されている(産経ネット版記事「『前川証言ありき』で報道する朝日新聞 加戸守行前愛媛県知事らの発言をまたもや無視」7月27日配信)。

   加計学園問題を理解するためには、一定の基礎知識も必要になる。しばしば出てくるのが、「石破4条件」という言葉だ(zakzak・夕刊フジ「『石破4条件』の真相はこれだ! 学部新設認めない『告示』の正当性示せなかった文科省」7月22日)。この経緯もわかると、メディア報道の裏側も見えてくる。

   それでも、今治市(加計学園)が選ばれたのは、えこひいきという声もある。しかし、それではライバルの京都(京産大)の意向もあればいい。もし選定プロセスに問題があれば、ライバルが文句をいうはずであるが、単に準備不足であったといっている(産経ネット版記事「京産大の獣医学部断念 『大学はすでに方向転換していたようだ』府知事が見解」7月15日)。

   また、加計学園問題では、獣医師会の考え方もポイントだ。これは、獣医師会会長の証言がいい(テレビ西日本ネット版「加計学園問題の真相は 福岡のキーマン 獣医師会・蔵内会長が新たな証言」7月20日)。いずれにしても、これらの当事者の報道が少ないので、前川発言だけの情報だけでは全体が見えにくい。

   最後に、前川氏の規制改革に対する考え方も確認しておくほうがいい。その絶好の資料は、内閣府サイトにある2005年の規制改革会議の議事録だ。賛否両論だろうが、これも面白い。

   いずれにしても、加計学園問題はメディア・リテラシーを考える上では、絶好の教材だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。